第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O8] エンドオブライフケア

[O8-4] 当院集中治療室における終末期医療の現状

○平川 しのぶ1、太田 典子1、松尾 和1、立石 奈己1 (1. 佐世保市総合医療センター)

Keywords:集中治療室、終末期医療、多職種カンファレンス、終末期医療ガイドライン、SOFAスコア

Ⅰ 目的
 SOFAスコアによる患者の経過と「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン(以下ガイドライン)」の項目に沿って医療チームの関わりを分析し、ICUにおける終末期ひ医療の現状を明らかにする。
Ⅱ 方法
 1.対象:ICU入室5日以上かつ死亡となった患者28名
 2.データ収集方法:平成29年4月~平成30年10月の対象患者について、電子カルテから情 報を収集した
 3.データ分析方法:属性は年齢、診療科、生命維持装置を集計した。対象患者のICU入室期間中のSOFAスコアを48時間毎に算出した。ICU入室から死亡退院までの経過と医療チームでの関わりをガイドラインの項目に沿って分析を行なった。
 4.倫理的配慮:調査は当院の倫理委員会の承認後に開始した。症例は患者が特定出来ないように配慮した。
Ⅲ 結果
1.対象患者の48時間毎のSOFAスコアの推移について武山らの「多臓器不全患者でSOFAスコア最高値13点以上最低値10以上、5日間以上継続するSOFAスコアの悪化を認めた場合は死亡率100%と予測される」またFerreiraによる「SOFA最高値11点以上、SOFA平均値5点以上の死亡率は80%」という研究結果を基準とし、SOFAスコアを分析した。SOFAスコア13点以上が5日間以上継続した症例は64%、SOFAスコア最高値11点以上、平均値5点以上の症例は96%であった。また、SOFAスコア最高値11点以上、平均値5点以上の症例で、何らかの特殊治療が行なわれていた症例は71%であった。
 2.医療チームの対象患者への関わりについてガイドラインの項目に沿った分析
 対象患者のうち、多職種カンファレンスを行なった症例は14%であった。
「救急・集中治療における終末期の判断」の項目では、終末期の判断がなされていたのは57%であった。「延命措置への対応の患者・家族の意思やその有無についての判断」の項目では、患者に意思決定能力がある、あるいは事前意思がある症例は7.1%、患者の意思は確認できないが推定意思がある症例は0%であった。患者の意思や推定意思が確認できない症例で、家族らが積極的な対応を希望している症例は3.6%、家族らが延命措置を中止を希望する症例は32.1%、家族らが医療チームに判断を委ねる症例は28.5%、延命措置への対応の記載がない症例は28.5%であった。
 「救急・集中治療における終末期医療に関する診療記載について」の項目においては、医学的な検討とその説明において終末期であることを記載している症例は57%、終末期であることについて家族らに説明した内容を記載していた症例は75%、家族らによる理解や受容の状況を記載している症例は46%であった。
  家族ケアについては、「集中治療における終末期患者家族へのこころのケア指針」に沿って分析した。家族の権利擁護は60.7%、家族の苦痛を緩和するは67.8%、家族との信頼関係を維持するは64.2%、家族に十分な情報を提供するは71.4%、家族のケア参画の場面を促すは53.5%であった。
Ⅴ 考察
  SOFAスコアの推移と特殊治療の割合から、SOFAスコアが11点以上の多臓器不全で特殊治療を行っている症例は、死亡率が高いことが明らかになった。
  また、SOFAスコアが高い症例でも多職種カンファレンスが行われていない現状から、終末期への移行や患者家族の意思を尊重した医療チームでの終末期医療は、十分に行われていなかった。
  患者と家族の意向をもとに、SOFAスコアや終末期ガイドラインも判断材料にしながら終末期への移行の時期を多職種カンファレンスで検討する必要がある。それにより、医学的適応、QOL、患者の意向、周囲の状況といった倫理的側面の情報が多職種で共有され、患者・家族にとって最善と思われる終末期医療に繋がると考える。