第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O8] エンドオブライフケア

[O8-5] 急性重症患者看護CNSがエンド・オブ・ライフにあると認識する慢性重症疾患患者の思いを引き出す看護実践

○谷山 寶1、北村 愛子2、大江 理英2 (1. 大阪市立大学医学部附属病院、2. 大阪府立大学大学院看護学研究科)

Keywords:慢性重症疾患、エンド・オブ・ライフ、急性・重症患者看護専門看護師、看護実践

【目的】重症疾患に対する治療進歩により、救命後も集中治療への依存が長期化する慢性重症疾患(以下CCIと記す)をもつ患者が増加している。CCI患者の多くは集中治療室退室後1年未満の死亡リスクが高く、エンド・オブ・ライフケアの必要性は高いが、治療が継続されることからCCI患者が現状を認識し死の在り方も含めたエンド・オブ・ライフケアへの思いを引き出すことは容易ではない。増え続けるCCI患者が質の高いエンド・オブ・ライフケアを受けるために必要な支援や教育への示唆を得ることが求められる。したがって、本研究の目的は急性・重症患者看護CNS(以下CCNSと記す)の経験の語りからエンド・オブ・ライフにあると認識するCCI患者の思いを引き出す看護実践を明らかにすることである。
【方法】研究参加者はCCNS10名で、エンド・オブ・ライフにあると認識するCCI患者の思いを引き出す看護実践を調査内容とし、2019年10月〜12月に半構造的面接を実施した。質的記述的研究として、エンド・オブ・ライフにあると認識するCCI患者の思いを引き出す看護実践を表している内容を抽出、コード化し、さらにサブカテゴリー化、カテゴリー化した。本研究は、大阪府立大学大学院看護学研究科研究倫理委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】研究参加者はCCNS10名であった。CCNSがエンド・オブ・ライフにあると認識する思いを引き出す看護実践の内容は《病状が悪化した時に支援のあり方を模索するために患者の望みを聞き始める》、《患者の個別性を把握する》、《他者からこれまでの患者の思いを聞く》、《患者が話せる時期を見極める》、《患者が話せるように身体状態を整える》、《話しやすい状況をつくる》、《患者の反応に応じて踏み込むかどうかを見極める》、《共にある存在であることを伝える》、《患者のありのままを受けとめる》、《患者がこの先をどう生きたいか考えられるよう促す》、《患者の価値を明確にする》の11カテゴリーが抽出された。
【考察】CCNSはCCI患者の病状が悪化した時に支援のあり方を模索するために患者の望みを聞き始めることから思いを引き出す看護実践を始めていた。病状が悪化する時、患者の生死に関わる思いが表されないまま死を迎えてしまうかもしれないことで患者が人間的な終末期ケアを受ける権利(伊藤ら,2014)を阻害される可能性を危惧したCCNSの予防的な倫理介入であると考えられた。CCNSはCCI患者の個別性を把握したり、他者から患者の思いを聞くという多様な方法で対象理解を深めており、これは、CCNSが慢性病態と共に生きるCCI患者の人生に着目し、これまでの経験から形づくられる価値を知り、エンド・オブ・ライフをその人らしく生きることへの支援につなげようとしていると考える。また、CCI患者の思いを引き出す適切な時期を判断し、対話中にも反応に応じて踏み込むかどうかを見極めることで感情や苦悩にさらに接近するかをアセスメントしていたと考えられた。CCI患者の思いを引き出す看護実践は、予測性をもって患者を全人的に捉え、思いを引き出す適切な時期を判断し、いかに患者の思いに迫ることができるかを評価しながら、アセスメントを繰り返していたものと考える。また、CCNSは思いを引き出す看護実践においてCCI患者の身体状態や状況を整え、共在や共感の技術を用いて患者が安心して話せる関係性を構築することでCCI患者の表現を助け、価値が明確になるようにすることでCCI患者の個別性に沿ったエンド・オブ・ライフケアにつなげようとしていたものと考えられた。