第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O9] 鎮痛・麻酔

[O9-1] クリティカルな状況にある人工呼吸器装着中の急性・重症患者が感じたComfortの特徴

○井上 貴晃1、中村 美鈴2 (1. 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科看護学専攻クリティカルケア看護学分野、2. 東京慈恵会医科大学大学院クリティカルケア看護学)

キーワード:Comfort、人工呼吸器装着患者、急性・重症患者

[目的]
クリティカルな状況にある人工呼吸器装着中の急性・重症患者がどのようなことからComfortを感じたか, その特徴を明らかにし, 今後の看護実践の示唆を得ることである.

[方法]
研究対象:
大学附属病院において, 予定術後にICUに入室し人工呼吸管理を要する患者8名を対象とし, 対象患者を人工呼吸器装着中に看護する熟練看護師6名を研究協力者とした.
データ収集方法:
対象患者へ人工呼吸管理が行われている間, 非参与観察を実施し, 対象患者と熟練看護師との相互作用場面を観察した. その後, 対象患者がICUを退室した後に, 対象患者へ半構造化面接を実施した.
分析方法:
得られたデータを質的帰納的に分析した. 個別分析では, 人工呼吸器装着中に患者へ苦痛の軽減をもたらしたもの, 安心をもたらしたもの, 勇気づけられた・励まされた感覚をもたらしたもの, Comfortを阻害した苦痛や問題という観点から, 意味内容のまとまり毎に文章・文節単位で抽出し, 二次コードまで抽象度を上げた. 非参与観察で得られたデータは, 語られた内容を忠実に解釈し説明するための補助データとして使用した. 全体分析では, 個別分析の結果を比較し, 意味・内容を十分に解釈して, 類似性に基づき, カテゴリを生成した. また, 患者が感じたComfortの特徴を見出すために, 生成されたカテゴリの性質を, Kolcaba(2003/2008)の分類的構造を参考に吟味した.
倫理的配慮:
所属施設の倫理委員会と研究対象施設の臨床実施委員会の承認を得て実施した. 研究参加への自由意思, 個人情報の保護を対象者に文書と口頭で説明し同意を得た.

[結果]
見出されたカテゴリは, 人工呼吸器装着中に患者が感じた苦痛, 人工呼吸器装着中に患者がComfortを感じたもの, の2つに分類された. 人工呼吸器装着中に患者が感じた苦痛として, ≪不快な騒音への苛立ち≫, ≪辛さや思いを声に出して伝えられないもどかしさ≫を含む19のカテゴリが見出された. 人工呼吸器装着中に患者がComfortを感じたものとして, ≪声に出せない辛さや思いを看護師が察して迅速に対応してくれた≫, ≪心が和らぐような看護師の気遣い≫, ≪何かあってもすぐに対応してもらえると感じられる状況≫, ≪傍で見守られている感覚≫, ≪朦朧とした意識の中でも感じていた医療者への信頼≫, ≪手術が成功したという実感≫, ≪生きているという実感≫, ≪自分が置かれている状況の明確さ≫, ≪自分になされる治療や行為への見通し≫を含む14のカテゴリが見出された. 患者は人工呼吸器装着中, 多様な苦痛を感じる状況にあったが, 上記のものからComfortを感じていた. 特に, ≪声に出せない辛さや思いを看護師が察して迅速に対応してくれた≫, ≪心が和らぐような看護師の気遣い≫, ≪何かあってもすぐに対応してもらえると感じられる状況≫, ≪傍で見守られている感覚≫の4つから, 患者は緩和, 安心, 超越の3つのComfortを複数の側面で感じており, 患者が人工呼吸器装着中にComfortを感じるための中核的な要素であった.

[考察]
患者は人工呼吸器装着中に, 4つの中核的な要素を含む14のカテゴリによって, 緩和, 安心, 超越とComfortが高まると考えられた. 人工呼吸器装着中に患者へComfortをもたらすためには, 休息や睡眠を確保できるような環境調整を含む, 患者が抱える苦痛や思いを汲み取る看護実践が求められると考える. また, 患者の表情や動きなどの微細な変化を察知して迅速に近づくなど, 患者が人工呼吸器装着中に安全と安心を感じられる状況を創り出す看護実践の必要性が示唆された.