第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

Presentation information

一般演題(示説)

[P2] 鎮痛・鎮静、せん妄ケア

[P2-1] The Critical-Care Pain Observation Tool(CPOT)導入後の活用の現状と課題

○多田 真太郎1 (1. 鹿児島市立病院)

Keywords:CPOT、疼痛評価

【目的】
A病院ICUでCPOTを導入し、総合的アセスメントによる疼痛評価に取り組んできた。導入後は、ほぼ全患者に対してCPOTを使用して疼痛評価を実施している状況であるが、どのタイミングでどのようにCPOTを活用し疼痛評価を実施しているかについては不明であった。本研究は、CPOTの活用状況やCPOTに対する看護師の認識を明らかにすることを目的とする。

【方法】
A病院ICU看護師を対象にアンケート調査を実施した。参加は自由とし、アンケートの提出をもって同意とすること、協力の諾否によって対象者が不利益を被らないことを説明した。アンケートは無記名で行い、個人が特定されないように配慮した。得られたデータを要略化し共通性にてまとめ、さらに相互関係を検討しながらカテゴリーにて分類し、“CPOTの活用に対する認識”という視点で分析した。本研究の発表について、A病院看護部倫理審査委員会の承認を得た。

【結果】
31名にアンケートを配布し30名より回答を得られた。(回収率97%)
得られた結果を、カテゴリー『 』生データ「 」にて示す。
CPOTを『状態が変化した/状態の変化が予測される時』に実施している者や、「勤務時間内」や「痛みの訴えがない時は勤務中に最低1回」など『個々が定めた自身のタイミング』で実施している者がいた。また、CPOTを『疼痛評価のアセスメントツール』や『他職種への情報共有手段』として活用している者もいれば、「0〜2点ばかりで活用できていない」など『活用できていない』と感じる者もいた。CPOT使用で困っていることについて、「CPOTでは0点でも、痛みの訴えがある時にどちらに視点を置いて考えるべきか悩む」「1点でもつけば介入の必要はあるのかで悩む」などの回答があり、『点数の意味付けが難しい』ととらえている者もいた。

【考察】
CPOTの活用状況として、患者の状態を見極め疼痛の変化を予測し経時的に疼痛を評価するツールとして活用したり、鎮痛ケアによる疼痛コントロールを図るために医師などの他職種へ疼痛に関する情報を共有する手段として活用していることが明らかとなった。CPOT導入は、それまで感覚的に行っていた疼痛評価における看護ケアに予測性をもたらし、根拠のある看護実践を可能にする一助となったと考えられる。その一方で、「勤務中に最低1回」など、単に点数をつける作業ととらえ実施していることをうかがわせる回答もあり、その活用に対する認識に個々でばらつきがある可能性が考えられた。CPOTを用いた疼痛評価を、業務としてこなさなければならない作業としてではなく、疼痛のスクリーニングツールや観察ツールとして、また疼痛に関する情報を共有する手段として意図的にCPOTを活用することが重要となる。そのことを部署で共通認識し、有効的な疼痛評価を統一して実践する必要がある。
またCPOTの点数の意味付けという点において、悩みや難しさを感じている者がいることも明らかとなった。ICUという部署特性から、鎮静下などの患者状態によりCPOTが0〜2点を示すことが多く、疼痛の存在を示す3点以上になることが少ない状況がある。そのことが、CPOTの点数を疼痛評価に活用する際に不全感や困難感が生じている一因として推察された。CPOTのその時々の点数だけではなく経時的変化にも着目することでスクリーニングツールとしての役割を果たすことにも繋がり、0〜2点が続いていることにも意味付けができる。また、一つの疼痛評価ツールにて明らかには疼痛の存在を示さなくても、患者の主観的疼痛評価やCPOT、バイタルサインなどの疼痛を示す情報から総合的にアセスメントすることが重要であり、個々の看護師がその視点を深め正確な疼痛評価に繋げていく必要がある。