[P2-3] ICUにおける心不全患者の鎮痛薬・鎮静薬投与の実態調査
キーワード:ICU、心不全患者、鎮痛・鎮静
【目的】
超高齢化が進む現在、心不全患者は増加傾向にあり、今後も増加することが予測されている。さらに、心不全患者の病状は憎悪と寛解を繰り返し、難治性心不全と移行することが明らかになっている。当院においても入院してくる患者の多くは高齢者であり、複数の併存症を合併している。また、心不全憎悪で救急搬送される患者や、入院中に心不全の急性憎悪によりICUに緊急入室する患者が増えている。その中には、慢性心不全により入退院を繰り返し、急性憎悪により回復の見通しがたたず、難治性心不全へ移行する患者が増えてきている。先行研究において、心不全の治療に用いる強心剤や抗不整脈薬などによる症状マネジメントに焦点をあてたものはあるが、ICUに入室した心不全患者の鎮痛薬・鎮静薬を用いた症状マネジメントに焦点をあてた研究は少ない。そこで、ICUに入室した心不全患者に対し、鎮痛薬・鎮静薬を使用した結果、症状マネジメントとなっていかのかどうかの実態を調査することを目的とした。
【方法】
診療記録を用いた後方視的研究である。対象は2016年4月1日から2019年3月31日の間に、ICUに入室した心不全患者とした。手術した患者は手術による鎮痛・鎮静管理、手術手技に左右される場合があるため除外した。項目は、カテコラミン、人工呼吸器、NPPV、NHF、IABP、V-AECMO、維持透析、死亡とし、鎮痛・鎮静に対する影響因子の抽出を行った。統計方法はStudent-t検定・フィッシャーの正確率検定とロジスティック回帰分析を用い、p<0.05を有意とした。統計処理にはEZRを用いた。
本研究は対象施設の倫理委員会の承認を得た上で実施した。施設内において公開文書を提示し、診療記録から得た患者データは匿名化を行い扱った。
【結果】
対象期間中ICUに入室した心不全患者の総患者は1131名であり、対象患者は309名(27%)であった。年齢75.5±1.9歳、男性258名、女性51名、APACHE Score21.197±7.60 、鎮痛薬投与は50名(16.1%)、鎮静薬投与は65名(21%)であった。フィッシャーの正確率検定で有意差があったのは、鎮痛薬投与群ではカテコラミンを投与した患者32名(13.5%)、人工呼吸器装着患者のうち22名(48.8%)、NHF装着患者のうち18名(64.2%)であった。鎮静薬投与群ではNPPV装着患者のうち25名(11.9%)であった。鎮痛薬と鎮静薬の双方において有意差があったのは、IABP装着患者と死亡患者であった。IABP装着患者は鎮痛薬投与8名(53.3%)、鎮静薬投与12名(80%)であった。死亡患者では鎮痛薬投与4名(44.4%)、鎮静薬投与5名(55.5%)であった。項目のうち有意差がなかったのは、V-AECMO、維持透析であった。加えてロジスティック回帰を行った結果、鎮静薬投与は人工呼吸器、NPPV、IABPと有意差があった。また、鎮痛薬投与はカテコラミン、NHF、IABPに有意差があった。
【考察】
心不全患者において、実態調査の項目を使用した際には鎮痛・鎮静のどちらかの薬剤、または双方が投与されていた。これは、J-PADガイドラインに沿った鎮痛評価を行い、薬剤投与の介入ができていたと考える。また、鎮痛薬を投与している患者は、カテコラミン、IABPとの有意差があるため何らかの循環補助が必要となることが考えられる。さらに、酸素化が不安定な心不全は侵襲的・非侵襲的を問わず呼吸器管理が必要であったため、呼吸苦の軽減を目的とした鎮静を行う必要があったと考える。
超高齢化が進む現在、心不全患者は増加傾向にあり、今後も増加することが予測されている。さらに、心不全患者の病状は憎悪と寛解を繰り返し、難治性心不全と移行することが明らかになっている。当院においても入院してくる患者の多くは高齢者であり、複数の併存症を合併している。また、心不全憎悪で救急搬送される患者や、入院中に心不全の急性憎悪によりICUに緊急入室する患者が増えている。その中には、慢性心不全により入退院を繰り返し、急性憎悪により回復の見通しがたたず、難治性心不全へ移行する患者が増えてきている。先行研究において、心不全の治療に用いる強心剤や抗不整脈薬などによる症状マネジメントに焦点をあてたものはあるが、ICUに入室した心不全患者の鎮痛薬・鎮静薬を用いた症状マネジメントに焦点をあてた研究は少ない。そこで、ICUに入室した心不全患者に対し、鎮痛薬・鎮静薬を使用した結果、症状マネジメントとなっていかのかどうかの実態を調査することを目的とした。
【方法】
診療記録を用いた後方視的研究である。対象は2016年4月1日から2019年3月31日の間に、ICUに入室した心不全患者とした。手術した患者は手術による鎮痛・鎮静管理、手術手技に左右される場合があるため除外した。項目は、カテコラミン、人工呼吸器、NPPV、NHF、IABP、V-AECMO、維持透析、死亡とし、鎮痛・鎮静に対する影響因子の抽出を行った。統計方法はStudent-t検定・フィッシャーの正確率検定とロジスティック回帰分析を用い、p<0.05を有意とした。統計処理にはEZRを用いた。
本研究は対象施設の倫理委員会の承認を得た上で実施した。施設内において公開文書を提示し、診療記録から得た患者データは匿名化を行い扱った。
【結果】
対象期間中ICUに入室した心不全患者の総患者は1131名であり、対象患者は309名(27%)であった。年齢75.5±1.9歳、男性258名、女性51名、APACHE Score21.197±7.60 、鎮痛薬投与は50名(16.1%)、鎮静薬投与は65名(21%)であった。フィッシャーの正確率検定で有意差があったのは、鎮痛薬投与群ではカテコラミンを投与した患者32名(13.5%)、人工呼吸器装着患者のうち22名(48.8%)、NHF装着患者のうち18名(64.2%)であった。鎮静薬投与群ではNPPV装着患者のうち25名(11.9%)であった。鎮痛薬と鎮静薬の双方において有意差があったのは、IABP装着患者と死亡患者であった。IABP装着患者は鎮痛薬投与8名(53.3%)、鎮静薬投与12名(80%)であった。死亡患者では鎮痛薬投与4名(44.4%)、鎮静薬投与5名(55.5%)であった。項目のうち有意差がなかったのは、V-AECMO、維持透析であった。加えてロジスティック回帰を行った結果、鎮静薬投与は人工呼吸器、NPPV、IABPと有意差があった。また、鎮痛薬投与はカテコラミン、NHF、IABPに有意差があった。
【考察】
心不全患者において、実態調査の項目を使用した際には鎮痛・鎮静のどちらかの薬剤、または双方が投与されていた。これは、J-PADガイドラインに沿った鎮痛評価を行い、薬剤投与の介入ができていたと考える。また、鎮痛薬を投与している患者は、カテコラミン、IABPとの有意差があるため何らかの循環補助が必要となることが考えられる。さらに、酸素化が不安定な心不全は侵襲的・非侵襲的を問わず呼吸器管理が必要であったため、呼吸苦の軽減を目的とした鎮静を行う必要があったと考える。