第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD1] 訪日・在留外国人へのクリティカルケア

企画:吉村 弥須子(森ノ宮医療大学)

[PD1-2] 急性期病院における訪日・在留外国人に対する多職種調整と看護実践

○新垣 智子1 (1. りんくう総合医療センター 看護局)

Keywords:国際診療、外国人患者の健康問題、文化ギャップ

当院は関西国際空港の対岸に位置する急性期病院であり、救命救急センター、周産期センターなど地域の基幹病院としての役割を担っている。地域における役割と立地条件から多くの日本語運用が十分でない人(Limited Japanese Proficiency:以下、LJPとする)の診療を行ってきた。

2006年(平成18年)当院の国際診療科を前身である国際外来が7名のボランティア通訳とともにスタートし、日本におけるLJPの受療権利を守る体制の構築をスローガンに掲げ、国際診療科は活動を行ってきた。特に、LJP患者が治療方針を理解し、意思決定できる診療体制を支援する医療通訳システムや翻訳書類整備など体制整備を主軸として行ってきた。いわば、LJP患者の診療の潤滑油的な存在として活動展開してきており、院内の医療提供者にとってスムーズな診療体制を目指してきたのである。体制整備を行っていくうちに、2013年には厚生労働省の外国人患者受け入れ医療機関認証制度に日本で初めて認定された3つの医療施設の中の一つとなった。

開設当初は国際診療科の介入するLJP患者は日本の地域住民としての在留外国人がほとんどを占めており、言語ツールに重点を置いて医療提供者が日本語運用に問題のない患者と変わらない公平性のある診療ができる体制整備に尽力してきた。しかし、安倍内閣の経済成長戦略によりLJP患者の背景が年々変わってきている。海外からの観光客をターゲットに内需拡大を目指し、海外からの収益を主眼に置いた政策がスタートし、2008年(平成20年)観光庁が設立された。観光庁の政策は2020年には年間4000万人の訪日外客の受け入れを目指していたが、この戦略目標に合わせるように増大する訪日外客数に比例し、当院でも年々LJP患者の層が変遷してきたのである。LJP患者のなかでも訪日外国人の比率は年々増大しており、過去最高を更新している。東京オリンピック・パラリンピック、2025年大阪万博を目前に、日本に訪れる外客数はさらに増加することが見込まれる。

このように、日本いるLJPの増加に伴い、健康問題を抱えるLJP患者数も比例し、増加していくことは必至である。今回のシンポジウムではクリティカルな場面に焦点をあて、LJP診療の潤滑油として国際診療科が介入したケースから、体制整備についての学びの共有と、今後予測される課題を提起し、議論展開したいと考えている。