[PD4-2] 早期リハビリテーションはPICSを予防するか?
Keywords:早期リハビリテーション、PICS、包括的介入
PICSと早期リハビリテーション
集中治療室 (intensive care unit: ICU) を退室した重症患者では、運動機能や認知機能、メンタルヘルスの障害が発生し、退院から数年にわたり残存することが知られている。加えて、抑うつや不安などメンタルヘルスの障害は、患者本人だけでなく家族においても発生する。米国集中治療医学会のステークホルダー・カンファレンスでは、このようなICU退室後も遷延する心身の障害を集中治療後症候群 (post intensive care syndrome: PICS) と定義している。PICSに規定される3つのドメイン(運動機能、認知機能、メンタルヘルス)は、長期的予後やQOLにも影響することから、ICUにおける早期リハビリテーションの果たす役割は大きいと考えられる。
早期リハビリテーションの効果
PICSに対して早期リハビリテーションはどの程度の効果が示されているのだろうか?早期リハビリテーション・エキスパートコンセンサスでは、早期リハビリテーションの科学的根拠は少ないものの、ADL獲得、ICU-AWの予防・改善、健康関連QOLを改善する可能性を示している。また、ICUにおける早期リハビリテーションは、身体機能やADLを改善し、ICU滞在日数や在院日数を短縮し、認知機能を改善すると報告されている。
PICSに対する早期リハビリテーションのメタ解析では、早期リハビリテーションは標準ケアまたは早期リハビリテーションなしと比較して、筋力増加(MRC)、ICU-AW発生率減少など短期身体関連アウトカムの有意な改善を示した。一方、認知機能関連項目であるせん妄なしの期間、抑うつや不安の指標であるHADsスコアは、両群間で有意な差を認めなかった。健康関連QOLにおいても、早期リハビリテーションによるEQ5DとSF-36 PFの改善は示されていない。さらに認知・精神機能に関して、早期リハビリテーションがせん妄の罹患回避や期間短縮の有効な手段としつつも、その機序について明らかではない。これらより早期リハビリテーションは、ICU患者における身体機能の短期アウトカムについては改善させる可能性があるが、認知機能や精神機能に関するエビデンスレベルの効果は今のところ不明である。
PICS対策としての早期リハビリテーション
日本版敗血症診療ガイドライン2016では、敗血症あるいは集中治療患者においてPICSの予防に早期リハビリテーションを行うことを弱く推奨する、としている。エビデンスの要約としては、メタ解析の結果、エビデンスの強さは弱いものの、早期リハビリテーション介入は運動機能、6MWD、人工呼吸期間を有意に改善するという結果であった。早期リハビリテーションの実行可能性は現段階でほぼ実証されているが、PICS自体が長期アウトカムであり、ICU退室後の継続的なリハビリテーションの在り方如何によって結果は変容するものと考えられる。また重症患者の身体機能低下には様々な要因が複合的に関与することから、薬物療法や栄養療法なども含めた多面的な介入が必須である。PICS予防の方策としてABCDEFGHバンドルがあり、さらにICU 日記を加え、患者・家族に主体を置いた包括的な関わり方が提唱されている。患者・家族を主体とした多面的あるいは相乗的な介入として、早期リハビリテーションもその一端を担っていると考えられる。
集中治療室 (intensive care unit: ICU) を退室した重症患者では、運動機能や認知機能、メンタルヘルスの障害が発生し、退院から数年にわたり残存することが知られている。加えて、抑うつや不安などメンタルヘルスの障害は、患者本人だけでなく家族においても発生する。米国集中治療医学会のステークホルダー・カンファレンスでは、このようなICU退室後も遷延する心身の障害を集中治療後症候群 (post intensive care syndrome: PICS) と定義している。PICSに規定される3つのドメイン(運動機能、認知機能、メンタルヘルス)は、長期的予後やQOLにも影響することから、ICUにおける早期リハビリテーションの果たす役割は大きいと考えられる。
早期リハビリテーションの効果
PICSに対して早期リハビリテーションはどの程度の効果が示されているのだろうか?早期リハビリテーション・エキスパートコンセンサスでは、早期リハビリテーションの科学的根拠は少ないものの、ADL獲得、ICU-AWの予防・改善、健康関連QOLを改善する可能性を示している。また、ICUにおける早期リハビリテーションは、身体機能やADLを改善し、ICU滞在日数や在院日数を短縮し、認知機能を改善すると報告されている。
PICSに対する早期リハビリテーションのメタ解析では、早期リハビリテーションは標準ケアまたは早期リハビリテーションなしと比較して、筋力増加(MRC)、ICU-AW発生率減少など短期身体関連アウトカムの有意な改善を示した。一方、認知機能関連項目であるせん妄なしの期間、抑うつや不安の指標であるHADsスコアは、両群間で有意な差を認めなかった。健康関連QOLにおいても、早期リハビリテーションによるEQ5DとSF-36 PFの改善は示されていない。さらに認知・精神機能に関して、早期リハビリテーションがせん妄の罹患回避や期間短縮の有効な手段としつつも、その機序について明らかではない。これらより早期リハビリテーションは、ICU患者における身体機能の短期アウトカムについては改善させる可能性があるが、認知機能や精神機能に関するエビデンスレベルの効果は今のところ不明である。
PICS対策としての早期リハビリテーション
日本版敗血症診療ガイドライン2016では、敗血症あるいは集中治療患者においてPICSの予防に早期リハビリテーションを行うことを弱く推奨する、としている。エビデンスの要約としては、メタ解析の結果、エビデンスの強さは弱いものの、早期リハビリテーション介入は運動機能、6MWD、人工呼吸期間を有意に改善するという結果であった。早期リハビリテーションの実行可能性は現段階でほぼ実証されているが、PICS自体が長期アウトカムであり、ICU退室後の継続的なリハビリテーションの在り方如何によって結果は変容するものと考えられる。また重症患者の身体機能低下には様々な要因が複合的に関与することから、薬物療法や栄養療法なども含めた多面的な介入が必須である。PICS予防の方策としてABCDEFGHバンドルがあり、さらにICU 日記を加え、患者・家族に主体を置いた包括的な関わり方が提唱されている。患者・家族を主体とした多面的あるいは相乗的な介入として、早期リハビリテーションもその一端を担っていると考えられる。