第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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特別講演

[SL3] シェアード・ディシジョンメイキングとは何か?: エビデンスと価値観の視点から

演者:中山 健夫(京都大学大学院医学研究科)

[SL3] シェアード・ディシジョンメイキングとは何か?: エビデンスと価値観の視点から

○中山 健夫1 (1. 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)

Keywords:エビデンス、価値観、意思決定、ナラティブ

医療において患者さんの価値観を尊重する社会的要請の高まりと共に、新たな臨床的な意思決定の方法としてシェアード・ディシジョンメイキング(shared decision making:SDM)が注目されています。

伝統的なインフォームドコンセント(IC)とSDMは重なる部分があり、混同される場合もあります。ICでは医療者が最良と考える方法を提示し、患者さんの納得が尊重されるにせよ、最終的にはそれに対する患者さんの「同意の有無」が到達点とされます。一方、SDMでは患者さんと医療者が新たな解決策を協力して見つけ出そうとするもので、その意味で医療者の主導するICとは異なります。つまり「患者自身、そして医療者も、どうしたら良いか本当には分っていない時(確実なエビデンスが無い場合)に、協力して解決策を探す」取り組みがSDMと言えるでしょう。

SDMにおいて患者・家族と医療者に共有される内容は、大きく、「(双方の)情報」、「目標」、「責任」であり、双方向性・交互作用、そして時間と共に変化する過程を持つコミュニケーションが大切になります。SDMの過程で、医療者は患者さんの価値観の尊重, 葛藤への共感, 必要な時間を待ち, 患者さんとご家族がいくつかの選択肢のメリット、デメリット、リスクをどう感じているか、それぞれの価値観と折り合いを付けて行く過程をどう支えていくか、など考えを深めていくべき多くの課題があります。

医師が診断結果と選択肢を一方的に患者や家族に預けて意思決定を求めることは, SDMと似て非なる行為であり、SDMは患者さん・ご家族と医療者のそれぞれの意思決定と共に、関係する人間が責任を共有する合意形成の役割を担うものです。適切なSDMが実現できれば、それは患者と医療者の対立・緊張を解き、協力・協働の関係づくりに役立つ新たな可能性を生むコミュニケーションとなるでしょう。

今後、国内でもSDMの重要性は、医療の提供者・利用者双方の立場から次第に広く知られていくに違いありません。本講演ではエビデンスに基づくプラクティスや臨床現場に影響の大きい診療ガイドラインの本来の意義から始め、患者さんの価値観やそれを知る手掛かりとなるナラティブと関連づけて、SDMとは何か、その意義と可能性をお話しできればと思います。