第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY2] 質の高い家族看護実践へのチャレンジ

企画:林 みよ子(静岡県立大学)

[SY2-3] 「質の高い家族看護実践へのチャレンジ」 ~代理意思決定支援における必要な家族支援のスキルとは~

○松本 修一1 (1. 滋賀県立総合病院)

Keywords:家族看護、代理意思決定支援

 クリティカルケア領域の現場では、様々な治療が施され以前には救命することができなかった重症な患者の命を救うことが可能となった。その一方で回復の見込みが乏しく、意思疎通を図ることが不可能になった後も、医療機器や技術の力を借りて患者の生命が長期に存続する状況を作り出した。
 こうした状況は目の前で行われている医療行為が、救命治療なのか、延命治療なのかの医療者の認識を曖昧なものにしており、様々なガイドラインを頼りに治療方針を検討していくが、延命治療の中断等最終的な判断は家族に委ねているのが現状である。このような状況下での家族は、患者の意向が推測しにくく、時間が限られた中で現状の把握も不十分なまま、患者に代わって意思決定をしなければならない。筆者は以前に代理意思決定のプロセスを経験した家族にインタビューを行い、家族の体験をまとめたことがある。家族からは、①医療機器によって生かされているだけのような患者を不憫に思いながらも、患者の意向がわからないがゆえに治療を止めることができなかったもどかしさや②「他の家族員の思いを察すると、治療の中止は決して口が裂けても言えなかった」という家族間でのコミュニケーションの難しさが語られた。同時に筆者が問いかけたことをきっかけに、③「何年もずっと抱えていたものがやっと軽くなりました」、「やっと肩の荷が下りた気がします」と涙ながらに話され、良くも悪くも意思決定したことを何年も背負い生きている家族の姿があった。このインタビューは、①の延命治療をとりまく倫理的葛藤、②の危機的状況下での家族の混乱と調整の必要性、また③の代理意思決定が十字架となって、家族の悲嘆を複雑なものにしていることを物語っていた。
 一方看護者は普段から、家族が行う代理意思決定の場面が家族にとって様々な思いが語れる場となり、納得した意思決定ができるように支援を行いたいと考えている。しかし現実は、医療者と家族間の関係性が築けていない中で、精神的に混乱している家族にどのように関わればいいのか方略が見いだせないまま、同時に医療者間でも治療方針に一致点が見いだせず、こうした葛藤の中で疲弊し、時間だけが過ぎるといった経験をした方も少なからずいることであろう。
 上記で述べたのは、(1)家族システム:家族間でお互いを思い憚るがゆえに意思決定ができない状況と、(2)医療者と家族との関係性:緊急性ゆえに関係が築けずに何もできないまま見守るしかない状況、(3)医療システム:医療者として目の前の治療に倫理的葛藤を抱きつつも継続している状況、であった。
 本シンポジウムでは、システムをどのようにアセスメントし、解決に向けて動きだすためにはどのような視点や調整スキルが必要なのか参加者のみなさんと考えたいと思う。