第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY4] クリティカルケア領域で働く看護師の育成-エキスパートの役割機能を活かした全人的な育成のワザと実践-

企画:川島 孝太(りんくう総合医療センター)

[SY4-2] 副看護師長+CN+IDerの立場から全人的に育成するワザと実践

○政岡 祐輝1 (1. 国立循環器病研究センター)

キーワード:人材育成、インストラクショナルデザイン、看護教育

患者ケアをする上で,その患者にとって現時点で得られる最善のエビデンスを,看護の専門知を用いて判断し,思慮深く使っていく.これは,EBMやEBNのことを意とするが,これを否定する看護師はほとんどいないであろう.その他,「安全」「効果的・効率的」,「患者中心」といった視点を持ち,看護実践をおこなうことは,当然とも言えることである.しかしながら,教育実践となると,どうであろうか?教育・指導も人を対象とした実践であり,学習者にとって,現時点で得られる最善のエビデンスを教え方に関する専門知を用いて判断し,思慮深く使っていくことが求められる.そして,学習者にとって「安全」な学習環境作り,「効果的・効率的」な教育指導の提供,「学習者中心」とした教育・指導の展開も、当然求められることである.「教える」役割は,ほとんどの看護師が担う役割であるが,看護師で「教え方」に関する専門的・体系的な教育を受けている者はほとんどいない.「教える」立場となった看護師の多くが,自分が受けてきた教育の経験や慣習や感を頼りに,見よう見真似でおこなっているのが実情である.

看護のエキスパートであっても,うまく教えることができるとは限らない.昨今,看護師になる人の質の変化や多様性の広がり,労務管理の厳格化など,人材育成を取り巻く環境は急速に変化している.その中で,古いパラダイムに浸っていると,効果的・効率的な人事育成ができないだけでなく,将来有望な学習者がドロップアウトする,教育側が疲弊してしまうといった,良くないケースをも引き起こしかねない.そのため,エキスパートの役割機能を活かした人材育成にあたっては,まず「教え方」に関する知識,スキル,態度を学ぶことが前提となる.このようなことを述べる中,「教育は難しい」との苦手意識や抵抗感を示す看護師もいる.確かに,学習者の成長には時間がかかるかもしれない.しかし,「教え方」は一部の人しかできない特別なものではなく,誰しもが身に着けられる「スキル」である.教え方に関するスキルに関しては,実地指導や教育担当に関するコンピテンシー(北別府2019,政岡2020)が明らかされているので,それを学習指針とすると良い.

「教え方」に関して学習科学の知見,それに基づくスキルの存在とそれを学習する意義を述べてきた.しかしながら,経験や慣習,社会的役割などに裏打ちされた頑固な価値観や枠組みが邪魔し,「教え方」に必要な知識やスキル・態度の習得・発揮を妨げることもある.効果的・効率的な「教え方」が臨床現場で展開されるには,経験に裏打ちされた価値観や枠組みを,学びほぐし,再学習させ,変容を促す学習方略も必要となる.併せて,エキスパートの暗黙知を形式知化し,人材育成に活用できる形とするナレッジマネジメント,組織内外の実践共同体を往還するナレッジ・ブローカー(知の媒介者)の存在も欠かせない.さらには,看護師個人の変容を促すだけでなく,そこに看護師個人の省察から紡ぎだされたセオリーを,部署としてまとめ標準化させる.そして,それを評価し,改善し続ける学習する組織への変容も求められる.ここには,関係性の質を高めることから始める,意図的失敗のためのアンカー作り,行為思考から意味思考の深い省察の支援,越境学習の場の提供,サーベイフィードバックなど,さまざまなワザと実践がある.

シンポジウムでは,教え方の専門家(IDer)であり,集中ケア認定看護師の資格を持つ副看護師長として,「感性に働きかけ,学びあう絆を組み,学習者や組織としての一皮むける学習体験」をコンセプトに,実践してきた具体的なワザを紹介する.