第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL3] クリティカルケア領域の看護に携わる人々のキャリアを考える 演者:道又元裕先生 (Critical Care Research Institute(CCRI) 代表)

[EL3-01] [教育講演] クリティカルケア領域の看護に携わる人々のキャリアを考える

○道又 元裕1 (1. Critical Care Research Institute(CCRI)代表))

キーワード:クリティカルケア、キャリアデザイン、エンプロイアビリティ


 キャリア(Career)とは、一般に仕事・経歴・就職・出世などのイメージで使われることが多い言葉ですが、厚生労働省が提唱しているキャリアの概念の中には、時間的持続性ないしは、継続性を持った概念』として定義されています。つまり、キャリアとは、将来のなりたい姿やありたい自分を持続的、継続的に実現(自己実現)するために自分の職業人生(勿論、プライベート含む)を主体的に設計し、実現していく行動を含んだ概念であると解釈できますかね。そのキャリアを形成(formation,development,promotion)する行動プロセスは、一般的に①Career image、②Career plan、③design、④path(帰属施設が有するCareer program)を経ながら進んでいくことが多いのではないでしょうか。
 何れにせよ、自ら主体的に設計、実現するキャリアの形成は、私的生活と仕事を調和させながら(ワークライフ・バランス)今の社会を生き抜いていくために、良くても悪くても、不可欠?(それなりに必要)であり、非常に重要?(それなりに大事)とされています。
 昨今では、中学、高校においても当たり前にキャリアに関する教育が行われているようであります。一般のそれなりの企業においては、社員のキャリアデザインを支援する企業も増えてきており、社員自身が今のポジションでやるべきことや企業内でのキャリアパスを明確にすることで、離職防止やワーク・エンゲージメント向上に役立てている企業が増えていると言います。
 いわゆるキャリアデザインということばが社会で注目される背景には、バブル崩壊後とともに、終身雇用、年功序列などの日本的雇用慣行が終焉をむかえつつあることや政府から発信された働き方改革の推進、ワークライフ・バランスを促進する就業形態の多様化、自身の人生のプロセスに対する価値観の多様化、学歴偏重社会からの脱却、開放主義の支持、成果主義、中途期における優秀な人財の雇用、登用などが大きく影響しているかも知れません。
 政府は働き方改革のひとつに①キャリア形成ができる、②自己実現を追求できる、③所得が増加するなどの理由から副業・兼業の推進もするようなご時世になってきています。また、副業・兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備として有効とされているとのことです。
 キャリアを形成していくに当たっては、キャリア形成のプロセスや自身のライフスタイルを帰属組織ばかりに依存・委ねるのではなく、自身で実現する「自律型(Autonomous)人材」が求められ、言わば雇用される能力(エンプロイアビリティ:employability)、就業能力を高めていくことが今の社会においては必要であり、望まれているようです。
 ようするに、キャリアデザインは、自らの手でプランを構築し、種類はどうであれ、社会の誰かにとって、必要な欲しがるエンプロイアビリティを磨きながらキャリアをプロモーションしていくことが重要なのかも知れません。
 しかし、そうは言っても人生100年時代と呼ばれているこの時代ですが、2018年にアデコグループが行った「人生100年時代」のキャリアビジョンに関する意識調査によると、およそ8割が今後の自分のキャリア構築に不安を感じているという結果が出ているようです。
 では、常に将来なりたい職業の上位に君臨する看護師(保健師、助産師含)のキャリアビジョンはどうでしょうか。例えば、一般の企業人が転職によってキャリアアップしていくのに比べると、看護師のキャリアアップにつながらないケースが多くあります。
 本講では、クリティカルケア領域の看護に携わる人々のキャリアについて、現状と課題、未来への展望について、時には暗く、最後は明るい話を提供したいと思います。