第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O10] 看護技術

[O10-04] アイスマッサージによる口腔機能の維持とセルフケアの援助
-食事摂取を見据えた人工呼吸器装着患者への取り組み-

○佐藤 朱華1、中村 香代1 (1. 災害医療センター 看護部)

Keywords:人工呼吸器、口腔ケア、アイスマッサージ

【背景(目的)】ICUでは活動が制限されている患者に対して様々なセルフケアの援助を行っている。特に、口腔ケアを行えない患者に対して看護師が代行して行うことが多い。A氏は、手術後人工呼吸器装着をしていたためセルフケアを行うことが困難な状態であった。介入時は禁食中だったが、今後経口摂取を目指すA氏に対して口腔機能を維持することは必要であると考えた。アイスマッサージは嚥下反射の誘発や唾液分泌促進による自浄作用の向上などが得られることが明らかになっており1)、今後経口摂取を行うために必要なケアであると考え、取り入れることとした。口腔機能の維持を目的に行ったアイスマッサージが、A氏の経口摂取に向けたセルフケアの援助としてどのような効果を与えたかについて振り返る。
【方法および分析の概要】A氏へ1日3回アイスマッサージを実施した。同様の手技で行えるようアイスマッサージの概要をパウチ化し、ICU看護チームへ周知を実施した上で、OAG(Oral Assessment Guide、以下OAGとする)にて口腔機能の変化を評価した。倫理的配慮として、症例報告をまとめるにあたって使用したデータの管理に努め、データは匿名性を厳守しプライバシーの保護に努めた。e-Aprinの研究者コースを取得している。(AP0000414225)
【結果/経過】A氏80歳代男性。食道癌術後。術直後より経口挿管にて人工呼吸管理を実施。術後2日目に抜管したがCPAとなり、再挿管になった。術後15日目に再度抜管し、NPPV管理となる。しかし、呼吸状態悪化に伴い3回目の挿管を実施した。術後31日目に逝去した。介入期間:術後10日-31日目。OAGスコアの維持を目標に介入した。A氏にとって栄養摂取とは命を繋ぐために重要な役割を示しており、退院後は経口摂取での栄養補給が必須であった。非経口摂取が長期間に及ぶ患者は口腔機能が低下していき、経口摂取が困難になってしまう。早期より口腔機能の維持、向上を目指し口腔内を刺激するアイスマッサージは、新たな障害を防ぎ経口摂取へと向けるケアとして期待できる1)。経口摂取を行えない場合でも、アイスマッサージの導入により早期から摂食セルフケアの補完が可能であると考えた。そこで、人工呼吸管理中のA氏のケアに、経口摂取への準備としてアイスマッサージを取り入れた。介入は20日間実施し、嚥下反射の誘発やOAG評価が介入前の16点から14点に改善された。
【考察】ヘンダーソンは看護の方法として、セルフケアの補完は個別性のあるケアが重要であることを唱えていることから2)、個人に応じたケアの選択が必要であると考えられた。口腔機能の維持や食に対する意欲への介入ができるアイスマッサージは、食事を趣味としていたA氏に適していると考えた。アイスマッサージを実施することで、挿管中のA氏より積極的にスポンジブラシを吸う様子がみられた。A氏にとって、アイスマッサージは口渇感の減少や嚥下反射の誘発のため、必要なケアであったと考える。その後、A氏は挿管のまま逝去したため、食への介入には至らず、食への反応をみることはできなかった。しかし、A氏への介入から患者の今後の生活を見据え、その人らしく生きられるセルフケア補完の方法を検討していく必要性を学ぶことができた。
【結論】今回口腔機能の維持を目指し、人工呼吸器装着患者へアイスマッサージを行った。口腔ケアはVAP予防や口腔内を清潔に保つのみではなく、口腔の機能低下を防ぎ、将来セルフケアを充足させていく準備としても重要と言える。ICUには様々な病態を抱え、ADLも個々により違う患者が入室する。そこで、患者個々を多面的に捉え、その人らしさを活かすセルフケア補完の方法の選択をしていくことが重要である。