[O3-01] A病院集中治療室における開心術後患者に対する非薬理学的せん妄ケアの成果と課題
Keywords:非薬理学的せん妄ケア、集中治療室、開心術後患者
【目的】集中治療領域では、生体侵襲や環境の変化などからせん妄を発症することが多い。これまで、A病院の集中治療室のせん妄ケアは、各スタッフに一任されケアに対する意識に違いがあった。そのため、統一したケアを実践することで、せん妄の発症を低下させることを目的として、6か月に渡り取り組みを実施した。本研究は、その成果と課題を明らかにし、今後の示唆を得ることを目的とする。
【方法】診療記録を用いる後ろ向きの観察研究。日本クリティカルケア看護学会のせん妄ケアリストを参考に、①環境を整える関わり、②認知機能を維持する関わり、③療養環境を日常生活に近づけて見当識を刺激する関わり、④身体的苦痛を緩和し快適さを促す関わり、⑤早期離床を促す関わりの5つのカテゴリーからなる、独自の非薬理学的せん妄ケアリストを作成した。対象者は、開心術後の緊急入室となった70歳以上の患者のうち、Intensive Care Delirium Screening Checklist(以下、ICDSC)の1.意識レベルの評価がC.D.E.となった患者とし、ケアリストに沿ってせん妄ケアを実施した。取り組みの導入前(2018年4月~2019年3月)と導入後(2019年10月~2020年3月)の2群に分けて、せん妄発症の有無および発症日数、患者背景について比較検討した。ICDSC4点以上をせん妄ありとした。また、ケアの実施状況や記録の記載状況についても確認した。統計学的検定には、t検定やχ2検定を用い有意水準は5%未満とした。本研究は旭川医科大学病院倫理委員会の承認を得た上で実施し、個人を特定できないよう各対象患者に番号を設定しデータを管理した。
【結果】導入前群28例、導入後群15例を対象とした。せん妄発症率(71.4%vs73.3%)およびせん妄日数(2.2日vs2.1日)は、ともに有意差はなかった。患者背景について、早期離床に関して端座位までの実施率(57.1%vs80.0%,p<0.05)に有意差を認めた。年齢(79.3歳vs77歳)や気管挿管日数(3.2日vs3.1日)、抑制の装着の有無(92.8%vs93.3%)に差はなかった。実施状況は、対象者すべてで実施されていたが、記録忘れが3件ありスタッフ間で取り組む様子や記録に偏りが見られた。
【考察】今回、せん妄ケアを導入しても、せん妄発症率の低下や発症日数の短縮には至らなかった。この要因としては、疼痛や不眠などのせん妄発症の因子が対象者に存在していた影響が想定されるため、それらについても評価方法を検討していく必要があると考える。加えて、家族の面会に関するデータも十分に収集できていなかった。面会制限のある現状においては、オンライン面会などの方法についても積極的に取り入れていく必要があると考える。そして、記録忘れなどスタッフ間で偏りが見られた結果から、依然としてせん妄ケアへの意識には差が存在すると考える。病棟全体にせん妄ケアを定着させるためには、各スタッフがせん妄ケアについての知識を深め、その価値と効果を正しく認識する必要がある。そのため、実際の事例を共有するなどして取り組みの周知を継続することが重要であると考える。また、スタッフからの意見も取り入れ運用を見直し、より実施しやすい形を模索することも必要である。
【結論】本研究において、非薬理学的せん妄ケア導入によりせん妄発症率の低下やせん妄日数の短縮には至らなかった。今後も取り組みの周知と見直しを継続し、せん妄ケアを定着させるよう活動していく必要がある。
【方法】診療記録を用いる後ろ向きの観察研究。日本クリティカルケア看護学会のせん妄ケアリストを参考に、①環境を整える関わり、②認知機能を維持する関わり、③療養環境を日常生活に近づけて見当識を刺激する関わり、④身体的苦痛を緩和し快適さを促す関わり、⑤早期離床を促す関わりの5つのカテゴリーからなる、独自の非薬理学的せん妄ケアリストを作成した。対象者は、開心術後の緊急入室となった70歳以上の患者のうち、Intensive Care Delirium Screening Checklist(以下、ICDSC)の1.意識レベルの評価がC.D.E.となった患者とし、ケアリストに沿ってせん妄ケアを実施した。取り組みの導入前(2018年4月~2019年3月)と導入後(2019年10月~2020年3月)の2群に分けて、せん妄発症の有無および発症日数、患者背景について比較検討した。ICDSC4点以上をせん妄ありとした。また、ケアの実施状況や記録の記載状況についても確認した。統計学的検定には、t検定やχ2検定を用い有意水準は5%未満とした。本研究は旭川医科大学病院倫理委員会の承認を得た上で実施し、個人を特定できないよう各対象患者に番号を設定しデータを管理した。
【結果】導入前群28例、導入後群15例を対象とした。せん妄発症率(71.4%vs73.3%)およびせん妄日数(2.2日vs2.1日)は、ともに有意差はなかった。患者背景について、早期離床に関して端座位までの実施率(57.1%vs80.0%,p<0.05)に有意差を認めた。年齢(79.3歳vs77歳)や気管挿管日数(3.2日vs3.1日)、抑制の装着の有無(92.8%vs93.3%)に差はなかった。実施状況は、対象者すべてで実施されていたが、記録忘れが3件ありスタッフ間で取り組む様子や記録に偏りが見られた。
【考察】今回、せん妄ケアを導入しても、せん妄発症率の低下や発症日数の短縮には至らなかった。この要因としては、疼痛や不眠などのせん妄発症の因子が対象者に存在していた影響が想定されるため、それらについても評価方法を検討していく必要があると考える。加えて、家族の面会に関するデータも十分に収集できていなかった。面会制限のある現状においては、オンライン面会などの方法についても積極的に取り入れていく必要があると考える。そして、記録忘れなどスタッフ間で偏りが見られた結果から、依然としてせん妄ケアへの意識には差が存在すると考える。病棟全体にせん妄ケアを定着させるためには、各スタッフがせん妄ケアについての知識を深め、その価値と効果を正しく認識する必要がある。そのため、実際の事例を共有するなどして取り組みの周知を継続することが重要であると考える。また、スタッフからの意見も取り入れ運用を見直し、より実施しやすい形を模索することも必要である。
【結論】本研究において、非薬理学的せん妄ケア導入によりせん妄発症率の低下やせん妄日数の短縮には至らなかった。今後も取り組みの周知と見直しを継続し、せん妄ケアを定着させるよう活動していく必要がある。