[O5-04] 初療室に搬送された心肺蘇生を望まない臨死期の患者をケアする救急看護師のジレンマ
キーワード:救急看護師、ジレンマ、救急搬送、DNAR
【目的】救急外来初療室(以下、初療室とする)には、軽症患者から急性で重篤な患者が来院するが、超高齢やがん終末期といった理由で、アドバンス・ケア・プランニングにより心肺蘇生処置を行わないという事前意思を有している患者もいる。そのような患者をケアする救急看護師は、ジレンマを感じていると考えた。そして、救急看護師のジレンマを明らかにすることで、初療室で心肺蘇生を望まない臨死期の患者をケアする救急看護師への支援の手がかりを得ることができると考え、そのような患者をケアする看護師のジレンマを明らかにすることを目的とした。
【方法】質的記述的研究デザインとし、三次救急領域の経験3年以上で、初療室での勤務経験がある看護師を対象とした。1人1回30-45分の半構造化面接を行った。面接データから逐語録を作成・熟読し、救急搬送された心肺蘇生を望まない臨死期の患者をケアする救急看護師のジレンマについて語られている部分を抽出し、カテゴリー化した。
本研究は、研究者の所属施設及び研究協力施設の倫理委員会の承認を得て実施した。研究参加者には、本研究の趣旨と方法、自由意思による研究参加・拒否・辞退の保障、参加・不参加に関わらず不利益は生じないこと、プライバシーの保護に努めることを口頭および文書にて説明し、同意を得た。
【結果】8名の救急看護師の参加協力が得られた。分析の結果、<患者の尊厳より優先される救命><救命と安楽を踏まえた患者の最善への迷い><多忙による不十分な家族ケア>が初療室に搬送された心肺蘇生を望まない臨死期の患者をケアする救急看護師のジレンマとして生成された。また、分析の過程で、救急看護師のジレンマには背景が存在し、ジレンマを感じた際の感情や行動も語られていることがわかり、ジレンマの背景とジレンマを感じた際の感情・行動も分析の視点とした。ジレンマの背景として<不明確な患者の事前意思><患者家族と地域医療福祉の看取りに関する認識不足><救命が使命の救急隊と初療室>が、ジレンマを感じた際の感情・行動として<救急隊への負の感情><地域医療福祉への疑問><患者や家族の苦痛を軽減するケアの提供>が生成された。
【考察】初療室に搬送された心肺蘇生を望まない臨死期の患者をケアする救急看護師のジレンマは、患者の尊厳を守りたいが救命が最優先となる自律尊重と善行との板挟み、救急看護を行うがその結果として患者や家族に苦痛を与えてしまう善行と無危害との板挟み、家族ケアをしたいがマンパワーが必要だという善行と正義との板挟みといった倫理原則が対立している状況で生じていたと考えられる。そのジレンマの背景は、救急搬送された患者の事前意思が確認できないこと、患者が在宅看取りを希望していても家族や施設が救急要請すること、救急隊や初療室ではどのような患者にも救命処置が優先されることがあると考えられた。そして、救急看護師は救急隊への負の感情といったモラルディストレスや、在宅看取りを希望する患者に対する地域医療福祉の体制に疑問を持ちながらも、救急搬送された臨死期の患者とその家族が安楽になるケアを提供していると考えられた。
【結論】救急看護師のジレンマは、倫理原則である自律尊重と善行との対立、善行と無危害の対立、善行と正義の対立によって生じていた。その背景には、事前意思が不明確な患者が心肺蘇生処置を行われながら初療室に搬送されてくるという状況があった。また、救急看護師はジレンマを感じた際に負の感情や疑問を持ちながらも、患者と家族にとって最善を考えたケアを行なっていた。
【方法】質的記述的研究デザインとし、三次救急領域の経験3年以上で、初療室での勤務経験がある看護師を対象とした。1人1回30-45分の半構造化面接を行った。面接データから逐語録を作成・熟読し、救急搬送された心肺蘇生を望まない臨死期の患者をケアする救急看護師のジレンマについて語られている部分を抽出し、カテゴリー化した。
本研究は、研究者の所属施設及び研究協力施設の倫理委員会の承認を得て実施した。研究参加者には、本研究の趣旨と方法、自由意思による研究参加・拒否・辞退の保障、参加・不参加に関わらず不利益は生じないこと、プライバシーの保護に努めることを口頭および文書にて説明し、同意を得た。
【結果】8名の救急看護師の参加協力が得られた。分析の結果、<患者の尊厳より優先される救命><救命と安楽を踏まえた患者の最善への迷い><多忙による不十分な家族ケア>が初療室に搬送された心肺蘇生を望まない臨死期の患者をケアする救急看護師のジレンマとして生成された。また、分析の過程で、救急看護師のジレンマには背景が存在し、ジレンマを感じた際の感情や行動も語られていることがわかり、ジレンマの背景とジレンマを感じた際の感情・行動も分析の視点とした。ジレンマの背景として<不明確な患者の事前意思><患者家族と地域医療福祉の看取りに関する認識不足><救命が使命の救急隊と初療室>が、ジレンマを感じた際の感情・行動として<救急隊への負の感情><地域医療福祉への疑問><患者や家族の苦痛を軽減するケアの提供>が生成された。
【考察】初療室に搬送された心肺蘇生を望まない臨死期の患者をケアする救急看護師のジレンマは、患者の尊厳を守りたいが救命が最優先となる自律尊重と善行との板挟み、救急看護を行うがその結果として患者や家族に苦痛を与えてしまう善行と無危害との板挟み、家族ケアをしたいがマンパワーが必要だという善行と正義との板挟みといった倫理原則が対立している状況で生じていたと考えられる。そのジレンマの背景は、救急搬送された患者の事前意思が確認できないこと、患者が在宅看取りを希望していても家族や施設が救急要請すること、救急隊や初療室ではどのような患者にも救命処置が優先されることがあると考えられた。そして、救急看護師は救急隊への負の感情といったモラルディストレスや、在宅看取りを希望する患者に対する地域医療福祉の体制に疑問を持ちながらも、救急搬送された臨死期の患者とその家族が安楽になるケアを提供していると考えられた。
【結論】救急看護師のジレンマは、倫理原則である自律尊重と善行との対立、善行と無危害の対立、善行と正義の対立によって生じていた。その背景には、事前意思が不明確な患者が心肺蘇生処置を行われながら初療室に搬送されてくるという状況があった。また、救急看護師はジレンマを感じた際に負の感情や疑問を持ちながらも、患者と家族にとって最善を考えたケアを行なっていた。