[O5-06] ICU退室から1年後の患者の就労状況の実態、及び離職要因に関する検討-SMAP-HoPe Studyサブグループ解析-
キーワード:ICU退室後、PICS、雇用
【目的】本研究の目的は、ICU入室前に就労していた患者がICUを退室した1年後の就労状況の実態及び離職に関連する要因を明らかにすることである。
【方法】本研究は、既発表の全国12施設のICUにおける多施設共同研究のサブグループ解析である。主管施設および各施設の倫理委員会の承認を得て実施した。研究デザインは前後両方向コホート研究である。対象は、ICUに3泊以上在室し、2019年10月から2020年7月の時点でICU退室から1年経過し自宅で生活している18歳以上の患者とした。ICU退室から1年経過した患者を後方視的にスクリーニングし、画像上明らかな中枢神経疾患、重度の認知症、1年以内の再入室、院内死亡が記録されている患者は除外した。また、対象候補に電話し、連絡が取れない患者や自記式の質問紙に回答できない患者を最終的に除外した後、対象者に調査票を郵送した。調査票の返送率は91.1%(754名)であった。本研究では、就労状況に焦点を当てたため、全てのデータのうち、65歳以下で入院前に就労していた患者に限定したサブグループ解析を行った。データは、基本属性(年齢、性別、APACHEⅡスコア、ICU在室日数、入院形態)、入院前の就労状況および復職状況とそれぞれの就労形態、入院前と現時点での自覚的な認知機能として記憶力や集中力の変化、EQ-5D-5L日本語版を通じて普段の活動を行う問題の程度(以下、活動)を用いた。基本属性と就労状況は記述統計を行った。さらに、目的変数を離職、説明変数を年齢、入院前就労形態、認知機能、活動としてSTATA IC ver16を用いて、MICEで欠損値を補完した後、マルチレベルロジスティック回帰分析を行った(P<0.05)。
【結果】分析対象は178名であった。基本属性(中央値【IQR】)は、年齢53歳【44-60】、APACHEⅡスコア12【8-18】、ICU在室日数5日【4-7】、性別は男性153名(86%)で、形態は緊急入室が87名(49%)であった。ICU退室1年後に離職していた者は32名(18.0%)を占めた。就労維持の有無と基本属性の単変量解析では、それぞれ、年齢52歳【43-59】vs 59歳【51-63】, P=0.004、APACHEⅡスコア12【7-18】vs 15【12-19】, P=0.01で有意差を認めた。離職に影響する因子に関する多変量解析では、入院前の就労形態 [OR:0.439、95%CI:0.193-1.000、P=0.05]、認知機能 [OR:0.452、95%CI:0.196-1.044、P=0.063]、年齢 [OR:0.971、95%CI:0.930-1.015、P=0.190]、活動[OR:0.744、95%CI:0.306-1.805、P=0.513]であった。
【考察】本研究は日本におけるICU退室患者の就労実態を調査した初めての多施設共同研究である。日本以外の研究を対象としたシステマティクレビューでは、ICU生存患者の1年後における離職率は63%という報告があり、これに比較すると、本研究では離職率18%と低い結果であった。これは日本の特徴的な制度である終身雇用が影響している可能性がある。また、過去の研究では離職に関連する要因として認知機能が影響しているとされている。本研究はサブグループ解析であるため、サンプルサイズが不十分であり、ICU退室後の就労復帰をアウトカムとした大規模な研究が必要であると考える。
【結論】65歳以下で入院前に就労があった者のうち、ICUを退室してから1年後の時点において、18%の者は離職していた。離職に関連する要因として、年齢、入院前就労形態、認知機能、活動を分析したが、統計学的に有意な因子はなかった。
【方法】本研究は、既発表の全国12施設のICUにおける多施設共同研究のサブグループ解析である。主管施設および各施設の倫理委員会の承認を得て実施した。研究デザインは前後両方向コホート研究である。対象は、ICUに3泊以上在室し、2019年10月から2020年7月の時点でICU退室から1年経過し自宅で生活している18歳以上の患者とした。ICU退室から1年経過した患者を後方視的にスクリーニングし、画像上明らかな中枢神経疾患、重度の認知症、1年以内の再入室、院内死亡が記録されている患者は除外した。また、対象候補に電話し、連絡が取れない患者や自記式の質問紙に回答できない患者を最終的に除外した後、対象者に調査票を郵送した。調査票の返送率は91.1%(754名)であった。本研究では、就労状況に焦点を当てたため、全てのデータのうち、65歳以下で入院前に就労していた患者に限定したサブグループ解析を行った。データは、基本属性(年齢、性別、APACHEⅡスコア、ICU在室日数、入院形態)、入院前の就労状況および復職状況とそれぞれの就労形態、入院前と現時点での自覚的な認知機能として記憶力や集中力の変化、EQ-5D-5L日本語版を通じて普段の活動を行う問題の程度(以下、活動)を用いた。基本属性と就労状況は記述統計を行った。さらに、目的変数を離職、説明変数を年齢、入院前就労形態、認知機能、活動としてSTATA IC ver16を用いて、MICEで欠損値を補完した後、マルチレベルロジスティック回帰分析を行った(P<0.05)。
【結果】分析対象は178名であった。基本属性(中央値【IQR】)は、年齢53歳【44-60】、APACHEⅡスコア12【8-18】、ICU在室日数5日【4-7】、性別は男性153名(86%)で、形態は緊急入室が87名(49%)であった。ICU退室1年後に離職していた者は32名(18.0%)を占めた。就労維持の有無と基本属性の単変量解析では、それぞれ、年齢52歳【43-59】vs 59歳【51-63】, P=0.004、APACHEⅡスコア12【7-18】vs 15【12-19】, P=0.01で有意差を認めた。離職に影響する因子に関する多変量解析では、入院前の就労形態 [OR:0.439、95%CI:0.193-1.000、P=0.05]、認知機能 [OR:0.452、95%CI:0.196-1.044、P=0.063]、年齢 [OR:0.971、95%CI:0.930-1.015、P=0.190]、活動[OR:0.744、95%CI:0.306-1.805、P=0.513]であった。
【考察】本研究は日本におけるICU退室患者の就労実態を調査した初めての多施設共同研究である。日本以外の研究を対象としたシステマティクレビューでは、ICU生存患者の1年後における離職率は63%という報告があり、これに比較すると、本研究では離職率18%と低い結果であった。これは日本の特徴的な制度である終身雇用が影響している可能性がある。また、過去の研究では離職に関連する要因として認知機能が影響しているとされている。本研究はサブグループ解析であるため、サンプルサイズが不十分であり、ICU退室後の就労復帰をアウトカムとした大規模な研究が必要であると考える。
【結論】65歳以下で入院前に就労があった者のうち、ICUを退室してから1年後の時点において、18%の者は離職していた。離職に関連する要因として、年齢、入院前就労形態、認知機能、活動を分析したが、統計学的に有意な因子はなかった。