第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

Presentation information

一般演題

[O6] チーム医療

[O6-02] Critical Care Outreach Team(CCOT)活動における汎用性の高い重症者把握システムの開発

○岡 啓太1、前田 倫厚1、橋本 礼子1 (1. 京都岡本記念病院 看護部)

Keywords:CCOT、重症者把握システム、NEWS、RRS、院内心停止 IHCA

【背景(目的)】近年では、電子カルテの経過表にバイタルサインを入力すると早期警告スコアが自動計算されるシステムが開発されている。しかし大多数の施設では導入できず、施設全体での重症者の把握は困難な現状にある。当院では2018年7月より集中ケア認定看護師によるCCOT活動を開始し、Rapid response system (以下RRS)立ち上げに向けての現状調査・分析を経て、2019年4月にRRSを始動した。CCOT活動においては、重症患者の抽出が重要であり、従来の手作業では情報収集に膨大な時間を要した。そこで情報収集および初動時間の短縮化を図るため、当院独自の重症患者把握システムを開発し、運用に至った。また、他施設でも運用可能な汎用性の高いシステムであることが確認されたので報告する。
【倫理的配慮】発表にあたり、本研究は所属病院倫理委員会の承認を得た上で実施した。
【方法および分析の概要】CCOT始動当初は、院内酸素投与・人工呼吸器使用患者リストをベースにし、早期警告スコア(National Early Warning Score: NEWS)を活用して、電子カルテの経過表から手作業でスコア化した中等~高度リスク患者をリストアップしていた。その後、病棟管理者とそれらの情報を共有し、急変が懸念される重症患者へのケア介入につなげていた。しかし、重症者抽出に約3時間を要していたため、情報システム課と独自のシステム開発を検討した。電子カルテのデータウエアハウス機能を活用。特定の条件の基で経過表のデータなどを抽出しExcel上で再集計した。それらのデータを用いてNEWSを自動計算し、危険度のリスト化が可能となったため新システム運用を開始した。
【結果/経過】新システム導入後は、重症患者リストの作成を約2分にまで短縮することができた。スムーズな初動開始につながり、CCOT活動の効率化を図るに至った。また、誰でも同水準の集計が可能となり、作業時間の短縮、集計ミスの減少、酸素投与、人工呼吸器使用以外の重症患者も把握できるようになった。さらには、本システムを電子カルテシステムが異なる施設へも紹介したところ、当院と同様の運用が可能であることが確認できた。問題点として、抽出データが定点値であること、意識レベルの入力が様々でデータ抽出ができないこと、全スタッフとのローデータ共有、重症者の把握が困難なことなどがあり、今後の課題である。
【結論】当院のシステムは、重症患者を効率的・効果的に把握することができ、低コストで他施設でも運用可能な汎用性の高いシステムであることが確認された。本システムを多施設で共有・運用することでアウトカム検証や研究を重ね、統一されたシステムとしてさらなる発展を遂げることが期待される。リスクスコアやスコアリングシステムの発展により、積極的にTrack(追跡)and Trigger(起動)できる可能性が広がる。しかし、スコアの精度を高めるにはデータの測定や記録の遵守が不可欠であり、そのためのスタッフ教育がRRS活動推進の重要な鍵となる。