第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O6] チーム医療

[O6-04] ICUから一般病棟まで継続したケア介入により社会復帰に至った一例

○山田 かの子1 (1. 近江八幡市立総合医療センター 看護部)

Keywords:人工呼吸器管理、継続ケア、ICU、チーム医療

【背景(目的)】人工呼吸器管理は、ICU(集中治療室)のような呼吸器管理に慣れた部署で行うことが理想であるが、経過が長期化した場合に一般病棟での管理を余儀なくされることも多い。しかし、慣れない部署での管理は安全面だけでなく患者個々に合わせたケア介入が難しいことがある。今回、ICUから一般病棟転棟後も看護師が主軸となり継続ケア介入が可能となった症例を経験したので報告する。
【方法および分析の概要】長期間の呼吸器管理を余儀なくされた症例に対して、看護師間およびRST協働により継続看護を目指した症例。
 本研究は所属病院倫理委員会の承認を得た上で実施した。
【結果/経過】51歳女性。徐行してきた自動車のバンパーに挟まれる形で受傷。右側広範囲肺挫傷、左血気胸、肝損傷、両鎖骨骨折、両恥座骨骨折などを認め挿管管理されICU入室となる。第4病日MRI・CTにて脳梗塞および外傷性血管損傷等が無いことを確認し鎮静中断し覚醒状況確認するがGCS3点(E1VTM2)であった。その後も意識遷延が続き第9病日に気管切開術実施し、第10病日一般病棟へ退室となる。家族からは、どのようなかたちであれ生きていてほしいとの発言が多く聞かれていた。第16病日よりRST(人工呼吸サポートチーム)介入となる、GCS10点(E4VTM6)と意識状態は改善しており呼吸器離脱困難および離床困難、水溶性下痢の持続が問題点として挙げられた。SAT(自発覚醒トライアル)実施するが、不適合となる。しかし、離脱可能症例であると判断、毎日のSBT(自発呼吸トライアル)を実施する方針とし、一般病棟看護師のサポートは集中ケア認定看護師(以下CN)が行った。CN介入時には一般病棟看護師の思いを傾聴し、業務内で実践可能な方法を取り入れるなど協議を繰り返した。また、家族のサポートもあったため、医療者だけでなく家族も踏まえた話し合いを開催した。第23病日、SATは成功したがSBTは呼吸回数増加および痰量増加にて中断となる。肺実質損傷により陽圧換気が必要である可能性が疑われた。離床は安静度ベッド横端坐位までの許可が出ていたが、両尾恥骨骨折による疼痛や呼吸器装着による抵抗感から臥床状態が続いていた。そこで、CN中心に離床を目指したケアプランを一般病棟看護師とともに作成した。一般病棟ではプライマリーが他の看護師に対し、統一した看護提供ができるよう定期的にカンファレンスを開くなど前向きな取り組みが見られた。RSST(反復唾液嚥下テスト)5回、MWST(改訂水飲みテスト)5点と嚥下機能改善を認めたため直接訓練を開始。第26病日には経腸栄養から経口摂取へ完全移行となった。経口摂取へ変更により下痢も改善し、便器での排泄が可能となった。第27病日SBTが成功し日中のみ人工呼吸器を離脱、人工呼吸器が外れた事により一般病棟看護師だけでの離床が可能となった。第40病日人工呼吸器離脱に成功しRST介入終了、第61病日気管孔閉鎖術施行、第70病日自宅退院となった。
【結論】人工呼吸器患者のサポート体制としてRSTが活動しているが、タイムリーな対応が困難な状況も多く見られた。そのため、人工呼吸器に不慣れな病棟では知識の習得や安全体制の確立、アセスメントが不十分な現状があった。本症例において、多職種が協働することにより超急性期から社会復帰まで個別性に合わせた継続ケアが可能となり、QOL向上へ導くことが出来る可能性を再認識した。そのためには、関連部署の看護師が組織横断的な関わりの重要性を理解することが重要となる。今後も、患者の目標を明確にし、継続したケア提供ができるようにしていきたい。