第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O7] COVID-19家族ケア

[O7-01] COVID-19病棟における患者-医療者間のiPad動画通話の有用性

○吉留 瑞紀1、水野 雅子1、今瀧 絵里香1、関口 玲奈1 (1. 日本医科大学千葉北総病院 看護部)

Keywords:COVID-19、ICT、コミュニケーション

【背景】2019年12月以降我が国でもCOVID-19の発生が報告され、入院し隔離状態となった患者の一部には、医療者との直接的なコミュニケーションが制限された状況での診療に対し、不安を強く訴え、しばしばメンタルヘルス科の介入を要している。COVID-19診療では、患者、医療者共にマスクなどの感染防具装備が必要で、双方の顔が見えない状況下で限られた時間でのコミュニケーションを求められていた。隔離状態の患者と医療者のコミュニケーション困難に対して、ICTの使用が有用であると考えCOVID-19病棟でiPadを導入し調査したため報告する。
【目的】COVID-19病棟に入院した患者と医療者とのコミュニケーションにiPadを使用し、有用性について検証を行う事を目的とする。
【方法】A病院のCOVID-19病棟(重症5床)へ入院した患者へ、2020年11月18日-2021年2月10日(2か月23日)の期間、患者-医療者のコミュニケーションでiPad(メーカー:Apple、ver:iOS10)のFacetime(メーカー:Apple)を使用した動画通話、ナースコール、ベビーモニターを使用した医療者へアンケートを施行した。iPadの動画通話の有用性は、「非常に有用」「まあ有用」「あまり有用でない」「全く有用でない」の4段階評価とし、iPad動画通話の有用性判定の理由は自由記載で回答を求めた。アンケートはGoogleフォームを使用した。【倫理的配慮】本研究はA病院倫理委員会の承認を得た上で実施した。(承認番号859)
【結果】64人を対象にアンケートを実施し、COVID-19病棟看護師20名、医師13名、リハビリ3名、ME17名の回答を得た。iPadによる動画通話は、「非常に有用」29人、「まあ有用」17人で、回答者の87%が有用と回答した。17人(34%)が有用な理由として、「顔を見ながらのコミュニケーションができること」と回答した。「感染を心配することなく時間をかけてコミュニケーションが取れる」「患者の表情が見えることで、自分の看護にフィードバックを受けることが出来たと感じた」などの回答もみられた。一方で、特に重症度の高い患者や電子端末の使用に不慣れな患者では活用しにくいなどの問題点も指摘された。
【考察】iPad動画通話は、COVID-19により隔離状態となった患者-医療者のコミュニケーションに、大多数の医療者が有用と感じていた。双方向で顔を見ながら会話できる事が、有用と判定された主な理由であった。マスク等の感染防護服のために、双方の表情など非言語的コミュニケーションが困難な環境であることを iPad動画通話が補完出来ていると考えられた。アンケートの回答の一部によれば、iPad活用は患者の利益のみならず医療者の診療や看護行為の効果判定が可能になったり、医療者の達成感やメンタルヘルス維持に寄与している可能性も認められた。今後は患者-患者家族のコミュニケーション、リハビリテーションへの活用、患者および医療スタッフのメンタルヘルスへの有用性などを追加研究する予定である。プライバシー保護の問題など留意すべき項目はあるが、ICTの活用はCOVID-19環境下では積極的に推進すべきと考えられる。
【結論】COVID-19病棟において入院患者-医療者間のiPad動画通話は有用で、非言語的コミュニケーションの補完が有用性の主な理由と考えられた。なお今回の研究では、患者・家族へ調査を行っておらず双方向のコミュニケーションでのiPadの有用性は明らかでなく、今後の課題である。
【参考文献】重村淳,高橋晶,大江美佐里,黒澤美枝:COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が及ぼす心理社会的影響の理解に向けて,トラウマティックストレス,第18巻,73-74,2020.