[O7-03] 新型コロナウイルス感染症患者と家族の入院から退院までの体験-ダイアリーを活用した1事例を通して-
キーワード:COVID-19、患者の体験、家族の体験
【背景(目的)】新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」とする)重症患者は、「家族や友人と直接面会できない・唯一直接関わるスタッフは物々しい防護服を着用している」という通常では遭遇しない特殊な環境へ突然入院する。この特殊な入院環境は、退院後に患者へ不安や抑うつ等の精神障害を引き起こす可能性が高いと考えた。そのため、COVID-19重症患者をケアする看護スタッフで対策を検討し、挿管管理となり鎮静剤が投与され記憶が欠落する可能性の高いCOVID-19重症患者を対象に、看護スタッフでダイアリーを活用することとした。
そこで、本研究ではダイアリーを実施し関わったCOVID-19重症患者の入院中から退院後までの1事例の体験を詳細に提示することを目的とした。
【方法および分析の概要】対象は、2020年2月以降に入院したCOVID-19罹患患者のうち、挿管管理が必要となり入院中にダイアリーを活用した患者と家族を対象に、退院から4か月後に半構造化面接法によってデータ収集を行った。また、収集したデータ分析は、質的帰納的に行った。分析では、入院中にダイアリーを活用したCOVID-19重症患者に特異的な体験に関する箇所に着目し<カテゴリー>を生成した。
本研究は、所属施設の倫理審査委員会の承認と対象の同意を得た上で実施している(承認番号02-036)。
【結果/経過】対象は、患者A氏70歳代 男性、家族40歳代 男性(続柄:長男)。
A氏は入院直後より挿管管理となり鎮痛剤・鎮静剤が投与された。入院8日目に抜管、入院52日目に退院となった。A氏の体験として、<医療者や他患者への申し訳ない思い><入院中に起きた非現実的な体験><ダイアリーを読み返すことで状況を再認識><新型コロナウイルスの流行と再感染への不安>などのカテゴリーが抽出された。特に、スタッフが防護服を着用していることが、医療スタッフや自分よりも重症な他患者への申し訳なさを感じる要因になっていた。
ダイアリーはA氏が入院してから抜管後2日目までは看護師が記載。抜管後は、挿管中の出来事をダイアリーを用いて看護師がフィードバックした。抜管後3日目からはA氏に記載するよう促した。A氏は入院時から抜管後数日の記憶が欠如していたが退院後に<ダイアリーを読み返すことで状況を再認識>できていた。
また、家族の体験としては<未知の病気への不安><ICTを活用した医療者の支援で得られた安心感><隔離中でも必要物品が手配できた環境><退院への不安に関する医療者の精神的ケアによる安心感>などのカテゴリーが抽出された。家族は濃厚接触者という状況であり、院内感染予防のためにも面会できないという立場で、危機的な状況の患者に対する治療や意思決定の判断を下さなければならない。その中でも適時適切な情報提供を、できる限りリモートで行っていたことが家族の安心感につながっていた。
【結論】A氏は入院時から抜管後数日までの記憶の欠如を体験していた。その中でCOVID-19に特徴的な体験のカテゴリーとして、<入院中に起きた非現実的な体験><医療者や他患者への申し訳ない思い><ダイアリーを読み返すことで状況を再認識>であった。家族からは<未知の病気への不安>を感じながらも、自身も濃厚接触者という背景があり<ICTを活用した医療者の支援による安心感>や<退院への不安に対する医療者の精神的ケアによる安心感>などの体験が特徴的であり、医療者による支援の重要性が示唆された。
そこで、本研究ではダイアリーを実施し関わったCOVID-19重症患者の入院中から退院後までの1事例の体験を詳細に提示することを目的とした。
【方法および分析の概要】対象は、2020年2月以降に入院したCOVID-19罹患患者のうち、挿管管理が必要となり入院中にダイアリーを活用した患者と家族を対象に、退院から4か月後に半構造化面接法によってデータ収集を行った。また、収集したデータ分析は、質的帰納的に行った。分析では、入院中にダイアリーを活用したCOVID-19重症患者に特異的な体験に関する箇所に着目し<カテゴリー>を生成した。
本研究は、所属施設の倫理審査委員会の承認と対象の同意を得た上で実施している(承認番号02-036)。
【結果/経過】対象は、患者A氏70歳代 男性、家族40歳代 男性(続柄:長男)。
A氏は入院直後より挿管管理となり鎮痛剤・鎮静剤が投与された。入院8日目に抜管、入院52日目に退院となった。A氏の体験として、<医療者や他患者への申し訳ない思い><入院中に起きた非現実的な体験><ダイアリーを読み返すことで状況を再認識><新型コロナウイルスの流行と再感染への不安>などのカテゴリーが抽出された。特に、スタッフが防護服を着用していることが、医療スタッフや自分よりも重症な他患者への申し訳なさを感じる要因になっていた。
ダイアリーはA氏が入院してから抜管後2日目までは看護師が記載。抜管後は、挿管中の出来事をダイアリーを用いて看護師がフィードバックした。抜管後3日目からはA氏に記載するよう促した。A氏は入院時から抜管後数日の記憶が欠如していたが退院後に<ダイアリーを読み返すことで状況を再認識>できていた。
また、家族の体験としては<未知の病気への不安><ICTを活用した医療者の支援で得られた安心感><隔離中でも必要物品が手配できた環境><退院への不安に関する医療者の精神的ケアによる安心感>などのカテゴリーが抽出された。家族は濃厚接触者という状況であり、院内感染予防のためにも面会できないという立場で、危機的な状況の患者に対する治療や意思決定の判断を下さなければならない。その中でも適時適切な情報提供を、できる限りリモートで行っていたことが家族の安心感につながっていた。
【結論】A氏は入院時から抜管後数日までの記憶の欠如を体験していた。その中でCOVID-19に特徴的な体験のカテゴリーとして、<入院中に起きた非現実的な体験><医療者や他患者への申し訳ない思い><ダイアリーを読み返すことで状況を再認識>であった。家族からは<未知の病気への不安>を感じながらも、自身も濃厚接触者という背景があり<ICTを活用した医療者の支援による安心感>や<退院への不安に対する医療者の精神的ケアによる安心感>などの体験が特徴的であり、医療者による支援の重要性が示唆された。