第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O8] COVID-19呼吸ケア

[O8-02] 一般病棟における人工呼吸器装着患者への腹臥位療法の実践-COVID-19患者への対応を通じて-

○山﨑 恵理子1、今井 晋平1、音田 三奈子1、野中 夏子1、斎藤 克1、村田 洋章2 (1. 自衛隊中央病院 看護部、2. 防衛医科大学校 医学教育学部看護学科)

キーワード:一般病棟、腹臥位療法、COVID-19

【背景(目的)】重症COVID-19患者への腹臥位療法は、低酸素症の改善に関する有効性が示唆されているが、腹臥位療法の実施にはマンパワーと経験が不可欠であり、病院の現状に応じた体制作りが重要である。当院では、COVID-19患者に対して、院内感染の防止を重視し、陰圧管理が可能な一般病棟で人工呼吸器管理を行った。そのため、人工呼吸器装着患者に対する腹臥位療法の実施にあたり、医師・病棟看護師・ICU看護師で協議しながら対応し、即席的なチームであるにもかかわらず、概ね大きな合併症や医療者への二次感染の発生なく腹臥位療法を行うことが出来た。
 そこで本実践報告では、腹臥位療法の経験が少ないスタッフが多い一般病棟における即席的なチームで、腹臥位療法の中断を必要とする合併症の発生なく実施できた要因を明らかにすることを目的とした。
【方法および分析の概要】調査対象は、当院において2020年4月1日から5月31日までの期間に、COVID-19の罹患が原因で人工呼吸器を装着し腹臥位療法を行った患者4名と、その腹臥位療法に携わった看護師、医師、理学療法士(以下、スタッフ)50名とした。患者のデータは後方視的に電子情報システムから収集し、項目は腹臥位療法実施前後のSpO2や、トラブルの有無等の患者状態とした。また、スタッフに対しては自記式質問紙により「継続的な腹臥位療法が実施できた要因」や「継続して腹臥位療法を行うために必要なこと」等についてデータを収集し、質的帰納的に分析した。本実践報告は、当院の倫理審査委員会の承認を得た上で実施したものである(承認番号02-035号)
【結果/経過】当院では、看護師は重症COVID-19患者対応のために重症患者1名に対し1-2名の看護師が対応し、ICU看護師がサポートできる体制をとった。医師側は呼吸器内科医を中心に麻酔科医・救急医等からなる6-7人程度の重症患者チームを編成した。即席的なチームであり、看護師と医師の連携を緊密にするためリーダー看護師は医師カンファレンスに参加し、治療方針の積極的な共有を行った。必要物品についてはICUで使用している資器材の一部をユニット化し、一般病棟内に配置した。ICU看護師から病棟看護師に対し、実技経験の少ない挿管患者の腹臥位療法の実施方法や挿管患者・人工呼吸器の管理や動脈血ライン採血等の教育を行いながら看護ケアを実施した。腹臥位療法実施の時間は看護師のマンパワー、処置や経管栄養の時間等を考慮しながら日々医師と調整した。データ収集では、対象患者4名全員に、腹臥位療法実施によるSpO2の改善がみられた。事故抜去やチューブトラブル、褥瘡の発生はなかったが、腹臥位中のポジショニングクッションによる皮下出血が1件発生した。
 質問紙による分析では、PPE装着による身体的負担、腹臥位療法導入や感染に対する不安はあったものの、マンパワーの確保、ICU看護師による教育、多職種連携により腹臥位療法を実施できたと考えるスタッフが多かった。さらに、酸素化の改善を目の当たりにすることにより、腹臥位療法の治療としての効果や教育の効果を実感できたことによって、過酷な状況であったにも関わらず、腹臥位療法を継続して実施することができた。
【結論】腹臥位療法を安全に継続できた要因として、診療・看護体制の拡充、資器材の集約、実施時間の調整、ICU経験者の配置と病棟看護師への継続的な教育が寄与したと考えられる。また、腹臥位療法の効果や教育の効果を実感することで、精神的負担軽減や、知識・技術不足への対処ができた。安全で継続的な実施には、マンパワーを確保した上で、医師、病棟看護師、ICU看護師、理学療法士等の多職種が連携して協働することが重要である。
O8-02
O8-02