第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O8] COVID-19呼吸ケア

[O8-04] 重症新型コロナ感染症病棟での腹臥位療法導入の実際と今後の課題

○真道 綾乃1、狩野 清美1、奥野 剛1、佐藤 真由美1、中村 敦美1 (1. 東京都立墨東病院 看護部)

キーワード:重症新型コロナ感染症、腹臥位療法、新規ケア導入、重症集中ケア

【目的】重症新型コロナ感染症による急性呼吸窮迫症候群(以下ARDS)に対し腹臥位療法が推奨されている。A病院では2020年1月より新型コロナ感染症患者の受け入れを開始、同年5月からA病棟が重症患者の担当となった。8月の腹臥位療法導入時は動画視聴にて実践方法を確認し、初回実施後に簡易マニュアルを作成した。翌年1月まで15名に実施し、有害事象は皮膚トラブル2件であった。今回、腹臥位療法の実践経験者が少ない中、導入が円滑に実施できた要因を分析し、その結果を明らかにすることで、今後の新規ケア導入時の課題を見出すことができると考え、本研究を実施した。
【方法】A病棟看護師23名へ無記名の自記式質問用紙を配布した。A病院倫理委員会の承認を受け対象者へ研究主旨と目的を書面および口頭で説明した。研究参加は個人の自由意志であること、可否により不利益が生じないことを保証し提出をもって同意とした。結果は看護師の属性を単純集計、導入に際し役立ったこと、不安なこと、不安改善に必要と思うこと、導入全体に対する意見についての自由回答は、テキストマイニングを用いラベル付けをしたのちカテゴリー化し、因子探求型の研究とした。
【結果】回収率95.6%、看護師歴5~30年(平均・中央値ともに15年)、重症ARDSの集中管理経験者12名(54%)、腹臥位療法実践経験者5名(22%)、導入時参考にしたのは、実践経験者からの伝達(94.6%)、動画視聴18名(81.8%)、簡易マニュアル19名(86.3%)であった。自由回答の設問では回答「」から16個のラベル《》4つのカテゴリー【】が抽出された。「動画でイメージがつき、マニュアルが役に立った」より《視聴覚資料の効果》となり【効果的な伝達方法】が抽出された。「褥瘡発生への不安」や「ポジショニングへの不安」より《褥瘡管理》《ポジショニング関連》となり【長時間の同一体位に対する看護】が抽出された。「主導してくれる人が必ず必要」や「繰り返しスキルアップしていく」より《リーダーシップへの期待》《経験の蓄積》となり【実践能力の獲得】が抽出された。「酸素化がよくなる患者を何人もみてやりがいを感じた」や「物品の充実が必要」より《治療効果への実感》《実践環境の整備》となり【取り組み意識の向上】が抽出された。今後の腹臥位療法の実施に向けての設問では「不安はあるができる」86.3%、「不安なくできる」13.7%であった。
【考察】【効果的な伝達方法】では、新規ケア導入時の知識の付与には経験者からの伝達に加え、視聴覚資料はイメージが容易で実際の動きに繋がりやすく効果的であったと考える。【長時間の同一体位に対する看護】では、腹臥位療法中は日常的な目視による観察が限られることで看護への不安が生じており、実践と管理両面のマニュアルが必要であったと考える。【実践能力の獲得】では、知識の習得や経験の蓄積のために、実施中の注意点などの助言ができるリーダーの存在は新規ケア実践時の不安解消に繋がる。【取り組み意識の向上】では、ケアの効果が実感できたことが看護師のやりがい感の獲得に影響し、今後の改善点などの前向きな意見が多かったことから意識の向上が示唆された。結果、今後の継続に関しても「不安はあるができる」という結果が得られたと考える。
【結論】新規ケア導入を円滑にする要因は1)伝達方法は視聴覚資料も併用すること。2)ケア実施の環境整備と成功体験を獲得すること。明らかになった課題は3)実施と管理の両方の視点でマニュアルを作成する。4)実践で助言ができるリーダーの育成が必要である。
O8-04