第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O9] ケアリング

[O9-02] 救命治療過程にある患者へのICU看護師のケアリング

○齋坂 美賀子1、大川 宣容2 (1. 近森病院 看護部、2. 高知県立大学 看護学部)

キーワード:ICU看護師、ケアリング

【目的】本研究は、救命治療過程にある患者と、ICU看護師の相互作用を基盤とした看護の実践の示唆を得るために、救命治療過程にある患者へのICU看護師のケアリングについて明らかにすることを目的とした。本研究においてはケアリングを、「患者の人間性を守るために、患者の反応とICU看護師のケアの実践との間で相互作用を繰り返し、互いに活力を高めあうもの」と定義した。
【方法】A県内のICU看護師を対象に半構成的面接法にてデータ収集を行った。面接で得られたデータを内容分析の手法を用いて質的に分析し、類似する内容をテーマとしてまとめた。
 本研究は、所属大学研究倫理委員会の承認を得た上で実施した。研究協力者に研究目的、方法、倫理的配慮等を文書を用いて説明し、自由意思による同意を得た。
【結果】研究協力者は3つの急性期病院の看護師4名で、ICU経験年数は5~23年であった。分析の結果、救命治療過程にある患者へのICU看護師のケアリングとして、4つのテーマと10のサブテーマが抽出された。[表出されにくい患者の思いを想像してでも分かろうとする]は、病態によって表出されにくい患者の思いにICU看護師が関心を寄せ、想像しながら患者を分かろうとしていくことであり、〈微細な反応に注目し見えないニーズを見出していく〉などの3つのサブテーマが含まれた。[身体の安定化と共に患者の心に目を向け続ける]は、ICU看護師が治療経過の中で身体の状態と一致しない患者の心に気づき、患者と共にあることを心がけていくことであり、〈予想と異なる患者の姿に気づき立ち止まる〉などの3つのサブテーマが含まれた。[関わり合いを手がかりに、患者に接近していく]は、ICU看護師が患者と関わりコミュニケーションをとる中で、関係の変化を自覚し、心の距離が接近していくことであり、〈患者との関係の変化を自覚し関心が高まっていく〉などの2つのサブテーマが含まれた。[成果を意味付けていく]は、ICU看護師が患者の反応を成果として意味付け、さらに患者への関心を高めケアが広がっていくことであり、〈ケアの成果から患者への関心が伝わりケアが広がっていく〉などの2つのサブテーマが含まれた。
【考察】ICU看護師は、救命治療過程にある患者から明確な反応を得られなくても、思いを想像してでも分かろうしていた。患者が置かれている状況的文脈から看護師自身の感情を沸かせ、患者への関心を高め微細な反応を捉え続けると考えられた。そして、想像した患者の思いを確かめていく中で、身体の状態と一致しない患者の心に目を向け続け、反応を捉え、患者の関心に添うケアを細やかに行うことを可能とする。これらを繰り返すことにより、患者の心身を整え、患者理解をより確かなものにしていくと考えられた。ICU看護師は、意図的に患者とかかわり変化を捉えることで、患者の心を読み解く感受性を高めていた。そしてケアの成果を意味づけることによりさらに患者への関心を高めていくと考えられた。
【結論】救命治療過程にある患者へのICU看護師のケアリングとは、表出されにくい患者の思いを想像し、身体の安定化と共に常に患者の心に目を向けて反応を確かめ、その過程で患者の変化を感じ取り、ケアの成果として意味付けていくことであると考えられた。