[O9-03] クリティカルケア領域における看護師の触れる行為がもつ意味-看護師の行動と認識から-
Keywords:触れる行為、touch
【目的】クリティカルケア領域における、看護師が患者に「触れる行為」を分析し、「触れる行為」の意味を明らかにする。
【方法】研究デザインは、質的記述的研究である。ICUに従事する3年目以上の看護師10名(およびその受け持ち患者13名)を対象に、看護師が患者に触れる場面の参加観察と看護師に対する半構造的面接を行い、看護師の行動と認識についてデータを収集した。データ収集期間は2018年5月から2019年3月。データ分析は、Uwe Flickのテーマ的コード化を参考にした。まず事例毎にテーマとなる「触れる行為」が行われていた場面を明らかにしたうえで抽出し、抽出した「触れる行為」をさらに詳細に〔触れた状況〕、〔触れ方・触れる方法〕、〔触れた帰結〕に着目して分析することで、共通点を明確化した。倫理的配慮は、所属機関の倫理審査委員会の承認と協力施設の了承を得て実施した。
【結果】分析の結果、33の触れる場面が抽出され、《患者の身体に侵襲を与えないようなケアをするために触れる》《触れてみて、起こりうる急激な状態変化の可能性を確かめる》《安寧の提供と危険回避のために触れる》《距離感を図りながら触れて関係性を作る》《言葉だけでは伝わりにくいことを触れて伝える》という「触れる行為」の特徴が浮かびあがった。これらの特徴において、看護師らの1つの触れる行為は、多重的な〔触れ方・触れる方法〕で行われていた。例えば、《患者の身体に侵襲を与えないようなケアをするために触れる》では、医療機器や薬剤による補助が必要な循環・呼吸が不安定な状態の患者に〔触れた状況〕において、患者の身体に負担をかけずに状態を把握することと、患者の身体に負担をかけずに動かすという〔触れ方・触れる方法〕が重なり合って行われており、それが患者の状態を把握する、身体や動きを支えるという2つの〔触れた帰結〕に繋がっていた。《安寧の提供と危険回避のために触れる》というテーマでは、せん妄状態で興奮や失見当識のある状態の患者に〔触れた状況〕において、危険回避のために触れた手が、そのまま精神的安定と安寧を与える〔触れ方・触れる方法〕となり、危険な動きを防止することと安楽にするという〔触れた帰結〕に繋がったり、さらにそれが身体症状の訴えの原因を探るための〔触れ方・触れる方法〕となり、患者の状態を把握するという〔触れた帰結〕に繋がっていた。
【考察】看護師らの「触れる行為」は、1つの行為でありながら、〔触れ方・触れる方法〕が1つ以上となり、複数の〔触れた帰結〕に繋がっていた。〔触れ方・触れる方法〕は自覚的・無自覚的に関わらず、それを実施する者の行動と認識が反映されており、それが「触れる行為」の意味として現れていると考える。このことから「触れる行為」は、実践の場で多重な意味を持ちながら患者のケアに役立っていると考えられる。「触れる行為」が持つ意味の多重性は、行為とその行為の意味が1対1の対応をしないため、従来の構造化された研究方法を用いて測定したりすることの困難性に繋がると考える。しかし看護師自身が「触れる行為」の意味の多重性を理解し、より深く考えていくことで、侵襲的を与えないようなケアや状態変化の予測性、安寧提供や危険回避、関係性構築などに繋がり、患者ケアの質の向上に繋がっていくと考える。
【結論】実践の場において「触れる行為」は多重の意味を持っていた。意味の多重性を看護師自身が理解し考えていくことが、患者ケアの質の向上に寄与する。
【方法】研究デザインは、質的記述的研究である。ICUに従事する3年目以上の看護師10名(およびその受け持ち患者13名)を対象に、看護師が患者に触れる場面の参加観察と看護師に対する半構造的面接を行い、看護師の行動と認識についてデータを収集した。データ収集期間は2018年5月から2019年3月。データ分析は、Uwe Flickのテーマ的コード化を参考にした。まず事例毎にテーマとなる「触れる行為」が行われていた場面を明らかにしたうえで抽出し、抽出した「触れる行為」をさらに詳細に〔触れた状況〕、〔触れ方・触れる方法〕、〔触れた帰結〕に着目して分析することで、共通点を明確化した。倫理的配慮は、所属機関の倫理審査委員会の承認と協力施設の了承を得て実施した。
【結果】分析の結果、33の触れる場面が抽出され、《患者の身体に侵襲を与えないようなケアをするために触れる》《触れてみて、起こりうる急激な状態変化の可能性を確かめる》《安寧の提供と危険回避のために触れる》《距離感を図りながら触れて関係性を作る》《言葉だけでは伝わりにくいことを触れて伝える》という「触れる行為」の特徴が浮かびあがった。これらの特徴において、看護師らの1つの触れる行為は、多重的な〔触れ方・触れる方法〕で行われていた。例えば、《患者の身体に侵襲を与えないようなケアをするために触れる》では、医療機器や薬剤による補助が必要な循環・呼吸が不安定な状態の患者に〔触れた状況〕において、患者の身体に負担をかけずに状態を把握することと、患者の身体に負担をかけずに動かすという〔触れ方・触れる方法〕が重なり合って行われており、それが患者の状態を把握する、身体や動きを支えるという2つの〔触れた帰結〕に繋がっていた。《安寧の提供と危険回避のために触れる》というテーマでは、せん妄状態で興奮や失見当識のある状態の患者に〔触れた状況〕において、危険回避のために触れた手が、そのまま精神的安定と安寧を与える〔触れ方・触れる方法〕となり、危険な動きを防止することと安楽にするという〔触れた帰結〕に繋がったり、さらにそれが身体症状の訴えの原因を探るための〔触れ方・触れる方法〕となり、患者の状態を把握するという〔触れた帰結〕に繋がっていた。
【考察】看護師らの「触れる行為」は、1つの行為でありながら、〔触れ方・触れる方法〕が1つ以上となり、複数の〔触れた帰結〕に繋がっていた。〔触れ方・触れる方法〕は自覚的・無自覚的に関わらず、それを実施する者の行動と認識が反映されており、それが「触れる行為」の意味として現れていると考える。このことから「触れる行為」は、実践の場で多重な意味を持ちながら患者のケアに役立っていると考えられる。「触れる行為」が持つ意味の多重性は、行為とその行為の意味が1対1の対応をしないため、従来の構造化された研究方法を用いて測定したりすることの困難性に繋がると考える。しかし看護師自身が「触れる行為」の意味の多重性を理解し、より深く考えていくことで、侵襲的を与えないようなケアや状態変化の予測性、安寧提供や危険回避、関係性構築などに繋がり、患者ケアの質の向上に繋がっていくと考える。
【結論】実践の場において「触れる行為」は多重の意味を持っていた。意味の多重性を看護師自身が理解し考えていくことが、患者ケアの質の向上に寄与する。