第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O9] ケアリング

[O9-04] 急性・重症患者の回復を促す看護実践モデルの開発
-クリティカル領域に勤務する看護師の実践への認識-

○丸谷 幸子1、中村 美鈴2、明石 惠子3、宇都宮 明美4、茂呂 悦子5、吉田 紀子6、松沼 早苗5、阿久津 美代5、町田 真弓7 (1. 名古屋市立大学病院 看護部、2. 東京慈恵医科大学 医学部看護学科、3. 名古屋市立大学大学院 看護学研究科、4. 京都大学大学院 医学研究科、5. 自治医科大学附属病院 看護部、6. 獨協医科大学病院 看護部、7. 日本赤十字前橋病院 看護部)

キーワード:急性・重症患者看護、回復促進支援、看護実践モデル開発

【目的】我々は急性・重症患者の回復を促す看護実践モデルの開発とその臨床応用を目指している。これまでに急性・重症患者看護専門看護師を対象とするフォーカス・グループ・インタビューの結果から、その構成要素として①思考②実践③評価④促進要因⑤阻害要因⑥看護提供システム⑦課題を抽出した。現在は各構成要素に対する認識を明らかにし、看護実践モデルを開発する段階にある。今回はその途中経過として、クリティカルケア領域の看護師の②実践の構成要素20項目に対する認識を明らかにする。
【方法】クリティカルケア領域に勤務する全国の看護師を対象とし、2018年6月〜2020年12月にWeb調査を実施した。回答者の属性13項目と上述の7つの構成要素79項目で構成された質問票を作成した。このうち②実践に対する認識は「いつも実践している:4」から「全く実践していない:1」の4段階で回答を求めた。研究参加者は、質問票にアクセスするためのQRコード付きのチラシを関連学会の学術集会会場などで配布して募集した。また、日本集中治療医学会Clinical Trial Group委員会の承認を得て、学会員向けに研究参加を促すメールが配信された。研究参加者はQRコードまたはURLによって質問票にアクセスし回答した。分析には統計ソフトSPSS Ver.27を使用した。個人属性は基本統計量を算出した。回復を促す看護実践に対する認識の基本統計量を算出し、因子分析を行った。
 本研究はA大学倫理審査の承認を得た。Web調査の冒頭で研究参加への同意を求めて実施した。得られた回答は入力時に匿名化されている。
【結果】262名から有効回答を得た。施設の病床数は100〜399床17%、400〜799床54%、800〜999床14%、1000床以上15%であった。所属部署はICU67%、救急病棟15%、HCU6%、一般病棟15%であった。平均年齢は、37.6±7.2歳であった。クリティカルケア領域の経験年数は6年以上が80%を占めていた。実践への認識が高い項目は「苦痛を緩和する(3.7)」「生命の維持を最優先し全力を尽くす(3.7)」「不安定な時期からリスクコントロールしながらケアの工夫を行う(3.6)」、低い項目は「患者とともに目標や計画を設定する(2.8)」「理論やツールを活用して実践する(2.9)」「家族と患者の目標を調整する(3.0)」であった。また、因子分析の結果、患者の回復を促す実践として『主体性をとらえて日常を取り戻す力を引き出す』『リスクや苦痛を最小限にして“いのち”を護る』『サインを察知してその人らしい療養生活を支える』の3因子が抽出された。
【考察】クリティカルケア領域の看護師は生命の維持を重視し、リスクや苦痛などの侵襲を低減しながらケアを行っていると認識していた。これは、患者の生命を脅かす変化を見逃してはならないという思いと、ケアそのものが侵襲となりうることを認識したうえでの実践であると考える。また、生命の危機状態から脱して日常へ戻る力を引き出し、その人らしい生活を支える、という患者の回復過程に沿った実践をしており、病態に応じてケアを変化させていると認識していた。しかし、患者と目標を共有するという視点はやや低く、患者の意識レベルの低下や見通しの立ちにくさなどが原因と考えられた。
【結論】クリティカルケア領域の看護師は急性・重症患者の状況を見極め、回復過程に沿って実践していると認識していた。