第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

プラクティスセミナー(共催)

[PS24] 科学的視点で考える睡眠薬の適正使用 ーVUCAな世の中だからこそ睡眠薬の適正使用を始めてみようー 共催:エーザイ株式会社

[PS24-01] [プラクティスセミナー] 科学的視点で考える睡眠薬の適正使用
ーVUCAな世の中だからこそ睡眠薬の適正使用を始めてみようー

○加藤 豊範1 (1. 小林記念病院 診療技術部薬剤科)

キーワード:睡眠薬の適正使用、睡眠薬と転倒、薬剤経済、睡眠薬と薬剤性嚥下障害、フォーミュラリ


 2019年12月に新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)が世界に出現し、世界は劇的に変化した。仕事、買い物、健康管理など人々の行動様式も劇的に変化した。このような時代において、「VUCA」という言葉が注目を集めている。「VUCA」とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなぎ合わせた造語である。要約すると、環境が目まぐるしく変化し、予測が困難な現在の社会となる。VUCAな時代に必要な能力は、組織で顕在化していない本質的な課題を見つけて、問題の解決策をいち早く提案、実行できることである。

 一方で、向精神薬の多剤併用の抑止を目的に、2012年から数回にわたり診療報酬改定が行われ、一定の成果を上げた。今後は診療報酬改定による誘導に加え、各医療機関が睡眠薬の適正使用に取り組んでいく必要がある。

 小林記念病院(以下、当院)は、回復期機能を主体とした地域密着型の在宅療養支援病院である。2016年の当院入院患者の約35%は睡眠薬等の向精神薬を内服し、睡眠薬による転倒も多く睡眠薬の適正使用がなされていなかった。そこで、薬剤師が中心となり睡眠薬の適正使用を目的に、1)睡眠薬と転倒の関連性、2)睡眠薬と転倒の薬剤経済、3)睡眠薬と薬剤性嚥下障害の関連性を科学的視点で解析を行った。その解析結果を睡眠薬のフォーミュラリという形で院内啓発を行い、睡眠薬の適正使用に努めている。

 本シンポジウムでは、不確実なVUCA時代において、問題の解決策を提案し、実行してきた睡眠薬の適正使用の中で、「睡眠薬と転倒の関係」、「薬剤経済の視点から見た睡眠薬のコストパフォーマンス」、さらには「睡眠薬による薬剤性嚥下障害」について紹介したい。さらに、睡眠薬をはじめとしたフォーミュラリの作成の有用性も併せて紹介したい。
PS24-01