第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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特別講演

[SL1] これからの看護職の働き方 -就業継続が可能な働き方の提案- 演者:熊谷雅美先生(済生会横浜市東部病院)

[SL1-01] [特別講演] これからの看護職の働き方 -就業継続が可能な働き方の提案-

○熊谷 雅美1 (1. 済生会横浜市東部病院)

Keywords:看護職 就業継続 働き方 


 2006年入院基本料看護配置基準7対1が新設され、看護職の確保困難が顕著になり、看護職の確保と定着が課題となった。そこで日本看護協会では、「働き続けられる職場づくり」事業に着手し、2013年2月、看護職が安全に健康で働き続けられる職場環境の整備を目指し、「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」(以下ガイドライン)を公表した。このガイドラインでは、夜勤・交代制勤務のマネジメントについて、勤務編成の基準などの具体的な対策を提案している。また2016年には、「看護職の賃金モデル」、2018年「看護職の健康と安全に配慮した労働安全衛生ガイドライン ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)を目指して」を公表し、看護労働政策の取り組みを強化してきた。
 そして国は、少子化による生産年齢人口減少に対し、長時間労働の是正、同一労働同一賃金を柱として、働き方を変えて生産性を向上させる、一億総活躍社会を目指した働き方改革を加速的に進めている。
 このような動きがあるなかで、看護職がいくつになっても安心して、やりがいを感じてその人らしく働き続けられる働き方を示すことが必要だ。そこで2019年度日本看護協会は、医療機関で夜勤・交代制勤務を行っている病院と有床診療所の看護職を対象に、持続可能な働き方の実現に重要な要因を明らかにするために、「病院および有床診療所における看護実態調査」を実施した。
 今回の調査から看護職の労働実態をみると、約8割非管理職の看護職が時間外労働を行っていた。さらに勤務終了後だけではなく、業務開始時刻前より業務を始める前残業や持ち帰り残業など、カウントされない時間外労働が常態化していた。
 厚労省「衛生行政報告例」による就業看護職の平均構成は、2008年の40.3歳から2018年には、43.4歳へと高年齢化が進んでいる。2014年度以降は2年毎におよそ0.5歳上昇しており、仮にこのペースを維持した場合は2025年には45歳に到達すると推測される。また60歳以上の就業看護職も増加傾向にあり、2004年の3.6%から2018年には10.6%(9人に1人)となり、2025年度には60歳以上の8人に1人以上のプラチナナースが現場で活躍することになる。逆に20代は2018年度では18.0%と最も少なく、今後18歳人口が減少することで、看護職を目指す若者の確保が課題となる。年代別の就業場所をみると、40歳から診療所や介護施設等が増え、65歳以上では医療機関(病院や診療所)よりも介護施設等が増える。これらのことは、年代による夜勤・交代制勤務の限界を示していることが推察される。
 このように、看護の現場では、夜勤・交代制勤務や長時間労働の問題に加え、「カウントされない時間外労働」「看護職の高年齢化」「医療機関における夜勤可能者の確保困難」「若い世代の看護職の減少」などの新たな課題が生じている。
 今回の調査では、病院・有床診療所に就業している看護職員のデータをもとに、共分散構造分析を行い、看護職の持続可能な働き方の実現に関連する5要因を抽出した。それらをもとに、時間外労働が常態化した働き方から、働く人の健康・生活の満足度をより優先的に考える働き方に価値をおき、多様な働き方を可能にする社会を実現することを目指したい。