2:10 PM - 3:40 PM
[EMW-01] 人工呼吸ケア委員会交流集会 次世代の人工呼吸ケアを探求しよう
Keywords:人工呼吸ケア、教育
本学会のテーマである「看護を紡ぎ、次代を拓く」から、未来に求められる人工呼吸ケアを探求する機会としてパネルディスカッションを企画した。3名のパネリストがそれぞれ以下の3つのテーマで講演し、その後、人工呼吸ケア委員とパネリストが次代を切り拓く人工呼吸ケアや、次世代へ人工呼吸ケアを紡ぐ方策についてディスカッションする。 1.ABCDEF-R bundleのR;Respiratory-drive-controlを紐解こう 丸谷 幸子(名古屋市立大学病院) 近年、ARDS患者の過剰な自発呼吸は肺障害(P-SILI)や横隔膜損傷を引き起こす可能性があり、呼吸ドライブを抑制する重要性が指摘されている。これをうけて、PICS対策のためのABCDEFGHバンドルに呼吸ドライブに対するケアを含めたABCDEF-R bundleとして介入する、という概念が2020年に提案された。このバンドルケアは、呼吸ドライブの問題に対し、鎮静ではなく病態や不安への対応や呼吸器設定の適正化により人工呼吸器非同調の解決をまず図ることを推奨している。人工呼吸器非同調は人工呼吸器治療を受けている患者のおよそ25%に生じているとされ、人工呼吸ケア委員会として取り組むべき課題である。今回のセッションではこのバンドルの共有と実践に活かす方法を検討したいと考えている。 2.人工呼吸ケアを受ける重症患者家族へのFamily centered careの探求 大友 千夏子(東京慈恵会医科大学附属病院) ICUに入室した重症患者が様々な治療をしても改善せず、終末期を迎えることがある。そのため、患者本人の意思を確認するタイミングが難しく、治療方針の決定に苦慮する場面が多い。特に症状の進行が急激な場合は、患者や家族はその事態を受け入れる余裕もないまま短時間で重大な決断を迫られる。 欧州の研究では、ICUでの終末期医療を説明したパンフレットを家族に事前に配布することで、患者の死後、家族のPTSDの発症が抑制された。さらに、別の研究では、Webサイトとパンフレットを作成することで、終末期医療に対する家族の理解が深まり、意思決定のサポートに有用だったと報告されている。これを受け、当院では、患者家族に向け、集中治療そのものや重症患者が終末期に受ける医療についての予備知識を提供することで、医療者と家族のコミュニケーションのギャップを軽減し、患者家族の意思決定を支援する目的でWebサイトとパンフレットを新たに作成した。今回は、その取り組みについて共有していきたいと考えている。 3.Technologyを駆使した最先端の人工呼吸ケア教育 菅 広信(秋田大学医学部附属病院) 成人学習の特徴として、経験に基づき実践的であることが挙げられる。人工呼吸器の学習が難しいと思われる背景には、経験したことのない、どんなことが起きるのか分からない機械と思われていることが推測される。そこで、教育的なTechnologyと科学的なTechnologyを組み合わせて、人工呼吸器ケアを効果・効率的に学習するプログラムを開発した。教育Technologyは、インストラクショナルデザインに基づいた、研修設計を行い、科学的なTechnologyでは肺シミュレーターと高機能シミュレーター、人工呼吸器の実機を組み合わせて、リアルな患者とシナリオを再現した人工呼吸ケア教育プログラムを紹介する。