11:52 AM - 12:04 PM
[O10-02] 外科系集中治療室における早期経腸栄養開始を目指した取り組み
−早期経腸栄養開始の判断基準の検討−
Keywords:外科系集中治療室、早期経腸栄養
【目的】A病院外科系集中治療室(以下、SICUとする)は各科の医師が主治医となり治療方針を決め管理をするオープンICUであり、経腸栄養開始に関する統一した基準はない。そのため、患者の状態にあった経腸栄養の開始時期を見逃しているのではないかと疑問に感じることがあり、プロトコールなどの具体的な栄養開始基準があれば、適切な時期に経腸栄養が開始できるのではないかと考えた。そこで、SICUにおける早期経腸栄養開始基準の作成に向け、経腸栄養開始時期と、A病院の内科系集中治療室で使用している早期経腸栄養プロトコール(以下、プロトコールとする)に準じて開始可能と判断された時期について調査し、プロトコール使用の妥当性を明らかにする。
【方法】2018年4月~2021年3月の調査期間に緊急手術となり、術後1日目に抜管できず、かつ経腸栄養が必要となった心・大血管外科患者を対象とした。18歳未満の小児患者は除外した。プロトコールの開始基準である乳酸値3mEq/L未満、平均血圧65mmHg以上に該当する日を「プロトコール該当日」、実際の開始日を「開始日」として単純集計し、経腸栄養開始時期について検討した。また、本研究は久留米大学倫理委員会の承認(研究番号21266)を得て実施した。
【結果】調査対象者は、心・大血管外科患者120名で、そのうち適応基準に該当した患者は28名、平均年齢は73.4±11歳であった。該当者の内訳は、人工心肺を用いた開胸術が21名、開腹術4名、開胸開腹を伴わないステントグラフト内挿術(以下、ステントグラフト内挿術とする)3名で、その内、補助循環装置使用患者は7名であった。プロトコール該当日平均は、全体で術後3.43±5.46日目であり、開胸術患者は3.76±6.23日目、開腹術患者は術後2.75±1.48日目、ステントグラフト内挿術患者は2±0.82日目、補助循環装置使用患者は6.43±10日目であった。実際の開始日平均は、全体で術後5.21±4.03日目、開胸術患者は4.19±2.92日目、開腹術患者は11.75±4.32日目、ステントグラフト内挿術患者は3.67±0.94日目、補助循環装置使用患者は4.14±2.23日目であった。プロトコール該当日と開始日の差の平均は、開胸術患者0.43±6.27日、開腹術患者9±4.12日、ステントグラフト内挿術患者1.67±0.47日、補助循環装置使用患者−2.29±9.13日であった。対象患者のうち24名がGFOを初回投与とし、その後17名はほかの栄養剤へ切り替えていた。選択された栄養剤はほとんどが増粘剤を用いて投与する半消化態栄養剤であり、残りは高濃度・粘度可変型製剤、成分栄養剤であった。
【考察】プロトコールを使用することで、心・大血管外科患者は、術後3日目には経腸栄養を現在よりも早期に開始できると考える。さらに重症患者では、重要臓器への血流が優先され、カテコラミン投与時はより腎や腸管、末梢側の血管は収縮することから、患者の病歴や病態を考慮し開始時期、投与方法の検討が必要であるが、補助循環装置使用中は、心臓仕事量の軽減とともに血流補助を行うため、プロトコールの開始基準を満たせば、重症症例であっても早期経腸栄養開始ができるといえる。しかし腹部人工血管手術で開腹操作を行った場合、腸管麻痺を起こしやすいため、経腸栄養開始が遅れたと考えられる。また挿管日数が長くなることで逆流による流れ込み、誤嚥が懸念されるが、粘度可変型製剤を選択すれば安全性が確立しやすいと考える。
【結論】SICUにおいて、プロトコールを活用することで、経験値だけでなく客観的な指標となり、心・大血管外科患者に対してより早期に経腸栄養が開始される可能性がある。
【方法】2018年4月~2021年3月の調査期間に緊急手術となり、術後1日目に抜管できず、かつ経腸栄養が必要となった心・大血管外科患者を対象とした。18歳未満の小児患者は除外した。プロトコールの開始基準である乳酸値3mEq/L未満、平均血圧65mmHg以上に該当する日を「プロトコール該当日」、実際の開始日を「開始日」として単純集計し、経腸栄養開始時期について検討した。また、本研究は久留米大学倫理委員会の承認(研究番号21266)を得て実施した。
【結果】調査対象者は、心・大血管外科患者120名で、そのうち適応基準に該当した患者は28名、平均年齢は73.4±11歳であった。該当者の内訳は、人工心肺を用いた開胸術が21名、開腹術4名、開胸開腹を伴わないステントグラフト内挿術(以下、ステントグラフト内挿術とする)3名で、その内、補助循環装置使用患者は7名であった。プロトコール該当日平均は、全体で術後3.43±5.46日目であり、開胸術患者は3.76±6.23日目、開腹術患者は術後2.75±1.48日目、ステントグラフト内挿術患者は2±0.82日目、補助循環装置使用患者は6.43±10日目であった。実際の開始日平均は、全体で術後5.21±4.03日目、開胸術患者は4.19±2.92日目、開腹術患者は11.75±4.32日目、ステントグラフト内挿術患者は3.67±0.94日目、補助循環装置使用患者は4.14±2.23日目であった。プロトコール該当日と開始日の差の平均は、開胸術患者0.43±6.27日、開腹術患者9±4.12日、ステントグラフト内挿術患者1.67±0.47日、補助循環装置使用患者−2.29±9.13日であった。対象患者のうち24名がGFOを初回投与とし、その後17名はほかの栄養剤へ切り替えていた。選択された栄養剤はほとんどが増粘剤を用いて投与する半消化態栄養剤であり、残りは高濃度・粘度可変型製剤、成分栄養剤であった。
【考察】プロトコールを使用することで、心・大血管外科患者は、術後3日目には経腸栄養を現在よりも早期に開始できると考える。さらに重症患者では、重要臓器への血流が優先され、カテコラミン投与時はより腎や腸管、末梢側の血管は収縮することから、患者の病歴や病態を考慮し開始時期、投与方法の検討が必要であるが、補助循環装置使用中は、心臓仕事量の軽減とともに血流補助を行うため、プロトコールの開始基準を満たせば、重症症例であっても早期経腸栄養開始ができるといえる。しかし腹部人工血管手術で開腹操作を行った場合、腸管麻痺を起こしやすいため、経腸栄養開始が遅れたと考えられる。また挿管日数が長くなることで逆流による流れ込み、誤嚥が懸念されるが、粘度可変型製剤を選択すれば安全性が確立しやすいと考える。
【結論】SICUにおいて、プロトコールを活用することで、経験値だけでなく客観的な指標となり、心・大血管外科患者に対してより早期に経腸栄養が開始される可能性がある。