第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O11] 家族看護1

Sun. Jun 12, 2022 1:00 PM - 2:10 PM 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:中橋 厚子(健和会大手町病院)

1:59 PM - 2:10 PM

[O11-06] 日本語版Parental Stressor Scale : Pediatric Intensive Care Unit の作成

○池田 光輝1,2、星野 晴彦3、松石 雄二朗4、小谷 美咲1,2 (1. 筑波大学大学院 人間総合科学学術院 人間総合科学研究群 フロンティア医科学学位プログラム(修士課程)、2. 筑波大学附属病院 看護部 小児ICU病棟、3. 国際医療福祉大学 成田キャンパス 急性期看護学、4. 聖路加国際大学 ニューロサイエンス看護学)

Keywords:家族看護、集中治療後症候群 (PICS)、PICS-Family (PICS-F)

【目的】近年、集中治療室(Intensive Care Unit : ICU )退室後に患者に⽣じる⾝体・認知・精神障害は集中治療後症候群(Post Intensive Care Syndrome : PICS)と称され、家族で発⽣する⻑期的な心理・社会的障害をPICS-Family : PICS-Fとされ、改善すべき目標とされている。PICS-Fの症状として急性ストレス障害や心的外傷後ストレス障害などの心理的症状が見られ、ストレスは症状を引き起こす要因として知られている。Parental Stressor Scale : Pediatric Intensive Care Unit(PSS : PICU)は小児集中治療室(Pediatric ICU : PICU)に入室した患者家族のストレス度と要因を測定するために開発され、様々な国と地域で翻訳され妥当性・信頼性が示されている。一方でPSS : PICUの日本語版は作成されておらず、本邦においてPICUに入室した患者家族が感じているストレスは客観的に評価されていない。本研究の目的は、PSS : PICUの日本語版を作成することである。
【方法】2021年11月から12月の間に筑波大学附属病院のPICUに48時間以上滞在し、ICU以外に転出した患者家族を前向きに観察した。PICU滞在中に面会せず、日本語を流暢に読み書きできない、患者が死亡した、NICUに退室した、精神疾患を有した家族は除外した。PSS : PICUはガイドラインに沿ってBack Translation法を用いて日本語版を作成した。入室48時間以降の面会時に患者家族へ研究説明を行い、同意を得られた場合のみ暗号化、秘匿化されたWebアンケートのQRコードを提供した。また作成した日本語版PSS : PICUの翻訳手順において、尺度項目の領域と対照群に関して知識のある専門職との協議を通して内容的妥当性を検証し、また尺度全体に関して10人の専門職が構造的な問題がないかを評価した。各項目の関連性について評価・分類し、関連性が認められないとされた項目に関しては改討を検討した。信頼性に関してはCronbach-α信頼係数を用いて内的整合性を検証した。本研究は筑波大学附属病院の倫理審査の承認を得て実施された。
【結果】原著者より使用許可を承諾後日本語版を作成した。作成された最終英語版は原著者を含んだ協議の中で臨床的に内容の齟齬がないことを確認した。内容的妥当性に関しては翻訳過程での協議、専門職による尺度の印象の定量化によって評価し妥当であると判断した。信頼性評価のため、対象期間中の入室患者49名のうち基準を満たした17名の患者家族の内、同意を得て回答のあった20名(回答率71.4%)に対して解析を行った。年齢35(24-46)歳、母親が70%(14/20)、専業主婦とパート・アルバイトが各25%(5/20)と最も多かった。α信頼係数は尺度全体で0.9298、下位尺度で0.6838から0.9709であり内的整合性に優れていた。
【考察】ガイドラインに基づいて言語的、文化的差異に配慮し、臨床使用においても齟齬のない日本語版PSS : PICUを作成した。α信頼係数においても先行文献同様高い値を示し、内的整合性については検証できた。一方で、内容的妥当性と内的整合性のみしか評価しなかったため、更なる妥当性・信頼性の評価が求められる。今後は本尺度を実際に臨床使用し、PICUに入室した患者家族のストレス度とストレス影響要因の調査を行っていく必要がある。
【結論】Back Translation法を用いて日本語版PSS : PICUを作成した。