第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O14] 安楽と疼痛

Sun. Jun 12, 2022 2:20 PM - 3:30 PM 第6会場 (総合展示場 311-313会議室)

座長:田下 博(長崎大学病院)

2:56 PM - 3:08 PM

[O14-04] HCUの看護ケアの質とcomfortとの関連について
−comfortに影響する医療者の介入から−:その2

○上杉 如子1、永田 知英美1、塚本 里佳1、中出 卑那1、石本 佳美1、新田 建也1、茗荷谷 美保1、佐藤 大介2 (1. 国民健康保険 小松市民病院、2. 公立小松大学保健医療学部看護学科)

Keywords:クリティカルケア、comfort、PICS

【目的】集中治療後症候群(以下PICS)と言われる合併症が問題となる中、クリティカル領域の患者がもつ多様なcomfortニーズに対し、質の高い看護ケアを提供することは、PICS予防につながると考えた。そこで、医療者に対する患者の主観的・客観的評価から患者のcomfort状態を把握し看護ケアの方向性を検討する。
【方法】対象はHCUに入床した意識レベルがJCS20以上、RASS-3以上の患者とし、個人属性(診療科等)、PICS発症の有無を入床時と退床後に調査した。PICS発症の有無は、運動機能障害を徒手筋力テストの合計(以下MRC)、認知機能障害をミニメンタルステート検査(以下MMSE)、メンタルヘルス機能障害を簡易抑うつ症状尺度(以下QIDSJ)で評価した。 医療者の介入についてインタビューガイドを基に半構成的面接法にてデータを収集した。分析方法は、MRC、MMSE、QIDSJの入床時、退床時の点数に対し、科別毎に対応のあるt検定を実施した。また、入床時のMMSE、QIDSJの点数をカットオフ値に従って分類、退床時との点数と比較し、その変化値を検定した。統計処理はSPSSver25.0を用いて分析した(有意水準を5%)。院内看護研究倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】対象は41名、内訳は脳外科14名、内科6名、循環器内科8名、外科13名であった。集団におけるMRC、MMSE、QIDSJの悪化はなく、科別での有意差は認めなかった(p=0.698、p=0.457、p=0.541)。 入床時MMSE21点以下の患者は6名で平均点数は10.5±6.1、退床時平均点数は18.8±9.5 (p=0.013)、入床時QIDSJ11~15点の患者は9名で平均点数は12.22±1.39、退床時平均点数は6.25±4.80 (p=0.031)と改善を認めた。 面接結果は、2個の『カテゴリ』、8個の「サブカテゴリ」、37個の[コード]に分けられた。『医療者の行動』は5つのサブカテゴリに分けられ、「患者への態度」で[親近感があった]、「患者への声かけ」で[そばにいるから大丈夫と言われて安心感があった]、「患者との関わり」で[手を握ってくれた]、「コミュニケーションの重要性」で[話しやすかった][できたことを褒めてくれた]、「チームワークの確立」で[あうんの呼吸で動いていた][多職種で情報共有していた]などのコードが抽出された。『医療者の資質』は3つのサブカテゴリに分けられ、「医療者の性格」で[みんな明るい][気さく]、「医療者の表情」で[笑顔]、「医療者の人間性」で[自分のペースに合わせてくれた]などのコードが抽出された。
【考察】A病院HCU看護師と患者とのつながりは、本人の認識に深くかかわっていたことが明らかとなった。先行の研究結果から、患者は身体的、精神的、スピリチュアル的にdiscomfort状態にあったが、集団でのMRC、MMSE、QIDSJの悪化は認めていない。A病院HCU看護師はケア提供者としての能力を発揮し、そのつながりにより患者がcomfortを得られ、合併症を予防することができたのではないかと考えられる。患者に寄り添い、患者のdiscomfort状態に対しケア提供者としてその能力を発揮した介入を続けることでPICSの予防にも繋がるのではないかと示唆された。
【結論】医療者がケア提供者の能力を発揮し、discomfort状態に対し適切な介入を行うことでPICSの予防につながる可能性がある。