第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O2] 鎮痛・鎮静管理

Sat. Jun 11, 2022 11:20 AM - 12:20 PM 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:渡海 菜央(日本大学医学部附属板橋病院)

12:08 PM - 12:20 PM

[O2-05] クリティカルケア看護における苦痛症状のアセスメント実施状況とマネジメントの困難さ:全国質問紙調査

○田中 雄太1、加藤 茜2,1、立野 淳子3、田戸 朝美4、山勢 博彰4 (1. 東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻、2. 信州大学 医学部保健学科看護学専攻、3. 一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院、4. 山口大学大学院 医学系研究科保健学専攻)

Keywords:症状アセスメント、身体的苦痛、精神的苦痛、質問紙調査

【目的】クリティカルケアを受ける患者が経験する身体的・精神的苦痛を緩和し、Quality of Lifeの維持・向上を図るために、経時的な症状アセスメントとマネジメントは重要である。本研究は、経時的にアセスメントされている苦痛症状と、看護師がマネジメントの困難さを感じる苦痛症状を明らかにすることを目的とした。
【方法】集中ケア認定看護師、救急看護認定看護師、急性・重症患者看護専門看護師741名を対象に、郵送による無記名自記式質問紙調査を行った。主な調査内容は以下の3項目とした。1)NRS、BPS、RASS等のスケールを用いて、経時的に(決められた時間ごと、または毎日)記録されている苦痛症状9項目(疼痛、呼吸困難、口渇、嘔気、便秘・下痢、せん妄、不安・抑うつ、不眠、倦怠感)について、複数回答可の選択式で回答を求めた。2)看護実践においてマネジメントの困難さを感じている症状について、“とても困難である”~“まったく困難ではない”の6件法で回答を求めた。3)マネジメントが困難な場合の対応について、複数回答可の選択式で回答を求めた。
調査期間は2020年10月~12月であった。本研究は、所属施設の倫理委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】有効回答は356部(48%)であった。回答者の背景は、看護師経験年数21年(標準偏差±6.3)、副師長以上の管理者52%(n=185)であった。緩和ケアに関連するトレーニングを受けた経験があると回答したのは66%(n=235)であった。
NRS、BPS、RASS等のスケールを用いて、経時的に(決められた時間ごと、または毎日)記録されている症状は、疼痛94%(n=336)、せん妄79%(n=280)、呼吸困難21%(n=74)の順に多かった。一方、口渇3%(n=11)、倦怠感4%(n=15)、不安・抑うつ5%(n=17)は少なかった。看護師がマネジメントの困難さを感じている症状は、倦怠感82%(n=291)、不安・抑うつ81%(n=289)、不眠74%(n=262)、せん妄72%(n=258)の順に多く、疼痛44%(n=155)が最も少なかった。マネジメントが困難な場合の対応は、“主治医へ相談する”88%(n=314)、“看護チームでカンファレンスを行う” 80%(n=285)、“多職種チームカンファレンスを行う” 60%(n=212)の順に多かった。
【考察】看護師は、倦怠感や不安・抑うつ等の苦痛症状に対しマネジメントの困難さを感じているものの、経時的にアセスメントがされていないことが明らかになった。この結果は、倦怠感や不安・抑うつは、患者が自己申告できない場合に客観的評価することが困難な症状であることが1つの要因であるかもしれない。疼痛・せん妄に関しては、Society of Critical Care Medicineと日本集中治療医学会が公表しているPADISガイドラインの普及によって、概ね実践されていると考えられる。クリティカルケアを受ける患者が経験する身体的・精神的苦痛を早期に捉え、緩和するために、経時的に評価可能なツールを活用し、網羅的な苦痛のアセスメントが必要かもしれない。
【結論】クリティカルケア看護において、疼痛、せん妄については経時的にアセスメントされていた。一方で、倦怠感や不安・抑うつについては経時的にアセスメントがされていることが少なく、看護師はマネジメントの困難さを感じていることが明らかになった。