第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O5] COVID-19

Sat. Jun 11, 2022 2:20 PM - 3:20 PM 第7会場 (総合展示場 314-315会議室)

座長:佐藤 みえ(東邦大学医療センター大森病院)

3:08 PM - 3:20 PM

[O5-05] 一般病棟での重症新型コロナウイルス感染症患者の看護を経験して
−看護師へのアンケート調査から振り返る−

○中下 備生1、竹内 若菜1、櫻谷 眞佐子1 (1. 大阪府立中河内救命救急センター)

Keywords:重症新型コロナウイルス感染症、COVID-19、臨床教育、パンデミック

【はじめに】A救命救急センターは3次救急を担っているが、重症新型コロナウイルス感染症(以下重症コロナ感染症)パンデミックに伴い、ICUは重症コロナ病床となり通常の重症救急患者は一般病棟の入院となった。加えて感染者は急増し、一般病棟に2床ある陰圧室でも重症コロナ感染症患者が入院することになった。当病棟では重症コロナ患者、重症救急患者の入院は初めての試みである。そこで3年目以上の看護師をICUへ派遣し、コロナ感染症患者の看護やゾーニングについて習得できる機会を設けた。そしてICUで感染管理を学んだ看護師が、病棟で感染防護具着脱方法の伝達、病棟重症コロナ対応マニュアルの作成、マニュアルに基づく勉強会を開催した。今回病棟で重症コロナ感染症患者に関わった看護師へのアンケート調査から取り組みを振り返る。
【方法】2021年5月1日から5月31日まで病棟重症コロナ病床開設を行った。この時病棟で重症コロナ感染症患者にケアを行った看護師38名、うちICUへ派遣した3年目以上の看護師15名(以下対象①)、ICU派遣を経験していない看護師23名(以下対象②)に、病棟での取り組みに対する看護師の意識についての振り返り調査を自記式アンケートにより実施した。
【倫理的配慮】アンケート調査は研究以外の目的で使用しないこと、個人が特定されないように配慮することを明記し、提出をもって同意とした。
【結果】対象①に対してICUでの学びは病棟で役立ったか、対象②に対して病棟での感染防護具着脱、重症コロナ感染症勉強会は役立ったか、対象①②に対して病棟マニュアルは役立ったかという問いに9割以上の看護師から役立ったと回答が得られた。重症コロナ感染症患者を受け持つことに不安はあったかという問いには対象①②の看護師7割以上のから不安があったと回答があった。未知なる病態に対する漠然とした不安が大半を占めており、感染防護具着脱方法等の技術に対する不安はほぼ見られなかった。 約一ヶ月間重症コロナ感染症患者を病棟で看護したが、看護師への感染や病棟内水平感染はみられなかった。
【考察】病棟で重症救急患者と重症コロナ感染症患者混合での運用となったが、ICUへの看護師の派遣、派遣した看護師を中心とした感染防護具着脱方法の伝達と習熟度の確認、病棟重症コロナ対応マニュアルの作成は看護師の質の統一ができ感染拡大防止に繋がったのではないかと考える。「臨床現場における経験は看護師の熟達において重要な役割を果たす」と松尾らは述べている¹⁾。ICUで実際に感染管理を経験した上での病棟伝達はより実践的に伝える事ができ、また病棟看護師はイメージしやすく短期間での技術習得に役立ったと考える。重症コロナ感染症患者を受け持つことに対し、7割以上の看護師が不安を感じていたが、漠然とした不安が大半を占め、感染防護具着脱方法等の技術に関する不安はなかった。不安は看護の質を低下させ、感染拡大をきたす一要因となりうる。看護師の心のケアにも注視し不安を軽減できるような取り組みも必要であった。
【結論】初めて経験する重症コロナ感染症患者を看護する際には、事前に感染対策について学ぶ機会を設ける、特に経験者による感染防護具着脱方法の伝達、勉強会の開催、マニュアル作成はより実践的で統一した看護提供に繋がる。技術に関する不安は軽減されたが、漠然とした不安が残り看護師の看護の質の低下から感染拡大をきたすリスクがあった。今後は看護師の心のケアへの取り組みが必要である。