第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

Pro-Con

[PC3] あなたのキャリアビジョンはどう描く?

2022年6月12日(日) 09:00 〜 10:00 第7会場 (総合展示場 314-315会議室)

座長:荒井 知子(杏林大学医学部付属病院)
演者:大山 祐介(長崎大学生命医科学域保健学系)
   佐々木 謙一(岩手県立中央病院)

09:00 〜 09:30

[PC3-01] 臨床の看護師から看護教員、再びちょこっと臨床
様々な場所での経験からキャリアビジョンを描く

○大山 祐介1 (1. 長崎大学生命医科学域保健学系)

キーワード:キャリアビジョン

私のキャリアは臨床の看護師として15年、大学の看護教員として6年経過した。看護師としては脳神経外科、整形外科、脳卒中ケアユニット、救命救急センター、看護研修センターに所属した。クリティカルケア看護は、急性期から回復期を経て慢性期に至る過程のすべてに及ぶ(井上,2005)ことから、様々な部署での経験によって急性期の限られた場所にいる患者だけでなく、回復過程や生活の場にいる患者を知ることができたことは重要であった。生命の危機状態にある患者の一時的な反応を捉えるだけでなく、患者の転帰を予測することができ、それが看護実践につながったと考える。これは、様々な部署を経験したメリットのひとつといえる。加えて、幅広く患者の様相を知ることは、看護実践の意味を考える機会となった。それは自分自身のキャリアのなかで大事にしたいこととなり、現在のキャリアビジョンにつながっている。
 キャリアの選択にしたがって、自分が本当にやりたいことをよく考えるための拠り所となる概念をキャリア・アンカーという(Schein,2003)。キャリア・アンカーは、職業に就いてから5~10年のキャリアの初期段階の時期に開発され、その後の職業選択やキャリア発達を方向付ける。実際の私もこの時期は自分が大事にしたいことは何か、迷っていたように思う。看護師6年目の脳神経外科から整形外科に異動した時期に、理論や研究を学ぶことで看護実践の意味を見いだせると考え、大学院(修士課程)に進学した。看護実践を意味づけるには患者を理解することが必要と考え、手術を受けた患者の手術前後の生活体験について研究したが、患者現象を知るにとどまった。また、その後の部署でもいくつかの臨床疑問をもとに研究に取り組んだ。そして、臨床で看護師を続けるか、看護教員になるかを選択できる機会に恵まれた。看護師教育を経験し、教育に関心を持っていたことや研究をもっと勉強したいという思いがあり、看護教員に転職することを選択し、現在は成人看護学分野に在籍している。看護教員となってから、改めて看護理論を学習し看護実践を意味づけするなかで、救命救急センターに勤務していた時の患者の苦痛を取り除けなかった経験を振り返った。このことが大学院(博士課程)への進学、重症患者のコンフォートに関する研究を取り組むことにつながっている。
 これまでを振り返り、様々な部署で患者と関わるなかで感じた疑問を研究という形にすることが、自分のキャリアの積み重ねだったように思う。看護する行為は、看護対象者の状態や変化する現象に対して「なぜ」という疑問を提起して、ある現象や出来事の根拠を追求していく行為であると述べられている(樋口,1989)。臨床で捉えた現象を理論にもとづき振り返り、研究へとつなげ、その成果を臨床での看護実践に活かすことが重要と考える。そして、これまでの臨床経験や研究は、大学での教育にも活かされている。一方で、臨床現場を離れ6年経過し臨床感覚が薄れ、研究や教育において理想にばかり視点が向いている自分にも気づいた。自分は何か臨床に還元できているだろうかと疑問を持つようになり、研究で明らかになったことを自分自身で確認したいと考えるようになった。そのため、わずかな時間ではあるが、臨床で看護師としても勤務し、取り組んだ研究成果を臨床に還元すること、そして臨床で経験したことを再び研究や教育に活かすことが現在のキャリアビジョンである。このように様々な場所での経験が大事にしたいことの気づきとなり、キャリアビジョンを描くきっかけになったと考える。