第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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プラクティスセミナー

[PS6] 脳卒中患者の周術期看護のポイント

Sat. Jun 11, 2022 3:00 PM - 3:50 PM 第2会場 (国際会議場 11会議室)

3:00 PM - 3:50 PM

[PS6-01] 脳卒中患者の周術期看護のポイント

○岩本 雅俊1 (1. 社会医療法人天神会 新古賀病院)

Keywords:血圧管理、頭蓋内圧コントロール、脳血管攣縮期の全身管理、神経所見

脳卒中は2020年の死亡総数のうち、全死因の4番目と未だ高い水準である。脳卒中は死亡を免れても、脳神経障害の高次機能障害や麻痺により、日常生活に大きな制約が生じ介護・福祉の負担が増えることがある。一方で国内65歳以上の高齢者人口は、総人口に対して28.7%と高く超高齢社会である。15~65歳の生産年齢人口は減少しており、社会が提供出来る医療資源にも限界がある。人類が経験したことのない異常な社会構造において、患者の尊厳を保ち、少しでも自立した生活を送れるよう周術期合併症をつくらない管理が必要である。
脳卒中の診療はQOLの改善からも、社会的自立の観点からも重要な役割をしめる。このセッションでは、術前から術後まで総合的な知識と技術が求められるくも膜下出血の管理を中心に解説し、さらに脳出血、脳梗塞の周術期看護のポイントを提示していく。
1.くも膜下出血の管理
①血圧管理
脳動脈瘤の破裂で起こるくも膜下出血では、初回破裂後6時間以内に再破裂を起こすことが多い。 再破裂を起こした場合の死亡率は約50%である。このため、術前は再破裂予防が極めて重要であり、血圧の変動を起こす侵襲的な処置や検査は血圧管理、鎮静後に行う必要がある。失禁できずに膀胱内に尿が貯まると血圧は上昇するため、適切な降圧・鎮静後尿道カテーテル挿入を行う。ニカルジピンにて降圧を図るが、併用の点滴流量を一定にしないと体内流入量が変化し、血圧コントロール不良となる。また、同じルートから他の薬剤の注入を行うと流量変化をきたす。血圧管理を成功させるポイントはニカルジピンの安定流量確保と安静である。 血圧はコントロールされている必要があるため、薬剤増量等を適切に行い、数分以内に改善でできようコントロールする。コントロール不良な場合は速やかに主治医に報告するなど厳密な管理を心掛けている。 我々が行っている周術期血圧管理のポイントを提示する。
②頭蓋内圧コントロール
くも膜下出血の重症度が上がったり水頭症を合併したりすると、頭蓋内圧が上昇する。頭蓋内圧の上昇は脳の還流障害につながるため、適切な管理が必要である。抗浮腫薬の使用に加えて、頭部の挙上、気道管理が重要である。鎮静に伴ういびき様呼吸、換気不全による高二酸化炭素血症、咳嗽による頭蓋内圧上昇にも注意している。
③脳血管攣縮期の全身管理
くも膜下出血術後早期はバイタルサインの安定とドレーン管理が重要になる。脳室ドレーン、腰椎ドレーンの管理について概説する。また、脳血管攣縮期には血圧や頭蓋内圧管理に加えて血管を虚脱させない管理が重要である。すなわち、①脱水②低栄養③貧血の予防が必要である。中心静脈圧モニタリング下に水分出納バランス確認、発熱時は不感蒸泄増加による脱水、輸液過多による心不全に注意する。栄養管理は早期より腸管を活かすことを目標とし、経口摂取が出来ない場合は少量からの経管栄養を行っている。当院では特に食事管理の重要性を考えており、術後早期からNST(Nutrition Support Team)と連携し栄養管理を行っている。
④神経所見
くも膜下出血の脳血管攣縮期には、状態の悪化により、神経所見が変化・悪化することがある。JCS、 GCS、NIHSSにより神経所見を数値化し客観性を持たせることで変化に気づきやすくしている。神経所見の見方について概説する。
上記の管理ができれば、脳梗塞、脳出血の管理は可能と考える。