第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

Presentation information

特別講演

[SL5] クリティカルケア領域における感染対策

Sun. Jun 12, 2022 9:00 AM - 10:00 AM 第1会場 (国際会議場 メインホール)

座長:高見沢 恵美子(関西国際大学)
演者:忽那 賢志(大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学講座)

9:00 AM - 10:00 AM

[SL5-01] COVID-19の感染対策(特にクリティカルケア領域において)

○忽那 賢志1 (1. 大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学講座)

Keywords:COVID-19、ICU、SARS-CoV-2

成人のCOVID-19感染者の約3〜4割は無症候性感染者とされるが、発症者の潜伏期は約5日(オミクロン株では3日)でありインフルエンザ様症状を呈する。嗅覚障害・味覚障害は新型コロナウイルス感染症に特異度の高い症状であるがオミクロン株では頻度が低くなっており、ますます臨床症状だけでの診断が困難となっている。発症者の約2割が発症から7〜10日目に重症化するのが典型的な経過である。高齢者や基礎疾患を持つ患者、肥満などがリスクファクターである。 新型コロナウイルス感染症は、発症後しばらくの間はウイルスが増殖しており抗ウイルス薬が有効と考えられ、また重症化してくる頃には過剰な炎症反応が主病態となる。したがって、病期を適切に捉えた上で、抗ウイルス薬と抗炎症薬とを組み合わせることが重要である。2022年3月時点で国内承認されている抗ウイルス活性を持つ薬剤にはレムデシビル、カシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブ、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルが、抗炎症薬にはデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブがある。また凝固異常も病態に関わっていることから、ヘパリンなどの抗凝固薬を併用することも一般的となっている。新型コロナウイルス感染症は、飛沫感染および接触感染によって広がるが、いわゆる3密と呼ばれる空間で伝播しやすいことが分かっている。国内で承認となっている新型コロナワクチンは3種類あり、2022年3月現在は主に2つのmRNAワクチンの接種が行われている。いずれも極めて高い感染予防効果が示されており、また第5波における致死率の低下に寄与したと考えられる。一方で、オミクロン株に対する感染予防効果は大幅に低下しており、また高齢者においては重症化予防効果も時間経過によって低下することから、ブースター接種によって再び感染予防効果・重症化予防効果を高める必要がある。
クリティカルケア領域での感染対策で特に問題になるのは、気管挿管などのエアロゾル手技、個人防護具の着脱、ゾーニングなどによる感染リスクである。一方で、すでに重症化した患者の感染性は発症前後の時期よりも低いということも分かっており、過剰な感染対策にならずに適切に行うことが重要である。
また、個人防護具の着用のための弊害もある。血液培養採取時のコンタミネーションの増加や、耐性菌伝播のリスク増加なども明らかになってきている。