第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY1] ルーティンケアの変遷

Sat. Jun 11, 2022 10:00 AM - 11:30 AM 第8会場 (総合展示場 E展示場)

座長:植村 桜(大阪市立総合医療センター)
   安藤 有子(関西医科大学附属病院)
演者:露木 菜緒(Critical Care Research Institute(CCRI))
   小池 真理子(順天堂大学医学部附属順天堂医院)
   平良 沙紀(福岡大学病院)
   増田 博紀(社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院)

10:50 AM - 11:10 AM

[SY1-03] 睡眠への援助を考える

○平良 沙紀1 (1. 福岡大学病院)

Keywords:睡眠障害、睡眠評価

集中治療室(Intensive care unit:ICU)に入室している多くの重症患者は、睡眠障害を体験している。ICU患者の睡眠障害の特徴は、頻回の睡眠の分断、浅い睡眠の増加と徐派睡眠やREM睡眠の減少・消失、概日リズム障害などが報告されている。その要因には、痛みや不安、照明や騒音などの様々な因子があげられ、夜間の睡眠の質の低下をきたしている。
2018年米国集中治療医学会は、鎮痛・鎮静・せん妄管理ガイドラインの改訂版で、不動・睡眠を加え、早期リハビリテーションと睡眠障害の予防と管理のための臨床診療ガイドラインを提唱している。それ以降、睡眠への援助の必要性を感じ、様々な因子に対してや非薬理学的・薬理学的など多角的な介入について検討されている。睡眠の働きは、一般的に脳と身体を休めることでエネルギー消費の減少、エネルギーの備蓄、組織の修復、代謝・免疫機能の最適化の役割があり、重症患者において睡眠を整えることは重要である。
看護師は、照明や音を調節し、ケアを積極的に日中に集中させるなど、夜間の睡眠環境を整える多角的な取り組みをしている。しかし、夜間眠れているように感じられる患者からも「あまり眠れていない」といった訴えを聞くことが多い。人工呼吸管理を受けている患者は深い鎮静により終始閉眼しており、一見眠っているように評価され、看護師が主観的に評価する睡眠と、患者の自覚する睡眠の質の評価は一致しないと言われている。また、各施設における鎮静評価の標準化が進んでいる中、看護師の判断は、浅い鎮静に向けた鎮静薬の積極的な減量には至っておらず、患者の状態は過鎮静の傾向にある。「鎮静=睡眠」といった睡眠導入を目的とした間違った認識のもとで鎮静剤の増減が行われていることも要因のひとつと考える。また、夜間に実施される看護ケアが患者の睡眠に影響を与える環境因子の一つであると指摘されており、睡眠を中断する看護ケアにはバイタルサイン測定や気管吸引、体位変換などが挙げられている。何気なく実践している看護ケアが睡眠障害の因子となりうることや集中治療後症候群(Post-Intensive Care Syndrome:PICS)への影響を踏まえ、ルーチンケアは睡眠を中断させてまで本当に必要なケアであるか再度見つめ直す必要があるのではないかと考える。
当院のICUで心臓血管外科術後患者を対象に、主観的睡眠評価として日本語版RCSQ・PSQI、客観的睡眠評価としてActigraphを用いて研究を行った。その結果、Actigraphでは睡眠の深さを測ることはできないが、総睡眠時間は正常範囲であるが、覚醒回数が多く、睡眠が分断されており、浅い睡眠が多いことは容易に推測され、熟眠感を得る睡眠とは言えない状況が窺えた。しかし、日本語版RCSQによる主観的睡眠評価は、せん妄などの問題が内包されており、客観的な睡眠評価と異なる結果であった。またPSQI評価では、睡眠障害はICU入室中だけにとどまらず、ICU退室時や退院時にも持続しており、長期的なQOLの低下に影響を及ぼす可能性が伺えた。ICUでの睡眠評価には限界があり、患者の状況に応じた観察評価の方法を検討した上で、非薬理学的・薬理学的介入の検討を行う必要がある。