第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY10] クリティカルケア看護の最前線で活躍している研究者は、どんなことを考えて研究をしているのか

Sun. Jun 12, 2022 10:40 AM - 12:10 PM 第3会場 (国際会議場 国際会議室)

座長:菅原 美樹(札幌市立大学)
   佐藤 まゆみ(順天堂大学大学院医療看護学研究科)
演者:松石 雄二朗(聖路加国際大学 ニューロサイエンス看護学)
   石川 幸司(北海道科学大学 保健医療学部看護学科)
   野口 綾子(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
   卯野木 健(札幌市立大学看護学部)

11:50 AM - 12:10 PM

[SY10-04] 研究テーマの探し方

○卯野木 健1,2 (1. 札幌市立大学看護学部、2. 手稲渓仁会病院)

Keywords:研究

私は主にPost-Intensive Care Syndrome(集中治療後症候群)に関して研究をしていることが多い。PICSは比較的新しい概念だ。新しく名付けられた合併症とも言える。こういう合併症が明らかになった場合、介入を!と各自が思いついたり、噂話で聞いた介入を試したくなるのだが、私は次のように考える。まずは、その頻度はどのくらいか、患者にとって、どの程度の重要性があるか?頻度は高いほど重要と考えられやすいし、また、それによって日常生活に支障が出る、などの問題があれば重要だろう。ここが分かっていなければ、調査を行うことになる。次に、リスク因子を探す。リスク因子はできるだけ、modifiable(修正可能)なものが良い。例えば、せん妄は、ベンゾジアゼピン系の鎮静薬がリスク因子であることが分かったため、その使用を制限することで発生を減らすことが可能だ。もし、リスク因子が年齢と言われても、若返らせることはできない(not modifiable)からリスク因子を見つけても対応ができない。このようにリスク因子を見つけることにより、予防法を見つけることができる。最後に(というか、研究的には同時期に誰かが行うと思うが)、その合併症が生じた結果、何が起きるのか、つまりアウトカムを見つける。死亡と関連していたり、寝たきりと関連していたりしていれば、やはり重要性が高いと考えることになる。せん妄で言えば、死亡や認知機能障害、医療費の上昇などがアウトカムとして知られている。 このような段階を経て、気になる現象を明らかにしていく。これが基本的な考え方だ。その他にも、その現象をどうやって予測することが可能か、などの予測モデルの構築や、すでにいくつかの研究が行われていれば、メタ分析を行うなど、まだ行われていないものがあり、かつ、その手法を自分や共同研究者が行うスキルがあれば行うことになるし、自分でそのスキルを身につけたり、教えてもらうこともある。研究はその手法も日進月歩であり、より精度の高い、妥当な結果を得るには常々努力が必要と感じることが多い。