第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY12] 集中治療室の安楽の確保に向けた環境を考える

Sun. Jun 12, 2022 1:20 PM - 2:50 PM 第9会場 (総合展示場 F展示場)

座長:芝田 里花(日本赤十字社和歌山医療センター)
   河原崎 純(済生会横浜市南部病院)
   田口 豊恵(京都看護大学 看護学部)
   花山 昌浩(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター)
   坂木 孝輔(東京慈恵会医科大学附属病院)
   村野 大雅(パラマウントベッド株式会社)

2:30 PM - 2:50 PM

[SY12-04] 私が考える理想のICUケア環境とは?

○村野 大雅1 (1. パラマウントベッド株式会社)

Keywords:コラムユニット、シーリングペンダント、コード・ラインマネジメント、睡眠の見える化

わたしはパラマウントベッド社でICUの改修時や新築時の設計レイアウトサポートの仕事をしています。わたしの考える理想のICU環境は、このシンポジウムのタイトルのように、臨床スタッフはもちろん、患者も患者家族にとっても快適だと感じる環境です。患者や患者家族にとっては住み慣れた自宅のような環境が理想です。スタッフにとっては、ストレスなく患者にアプローチできる環境です。今回はベッド周りの、特に設備機器に関わるケア環境にフォーカスしたいと思います。
 「村野君、このコードだらけのICUを何とかしてくれないか?」 それは2007年、研究フィールドとして紹介を受けたあるICUのなかで、先生から最初に言われた一言でした。私は当時「看護マネジメント学コース」の修士課程で、「ICUの看護動線」についての研究を始めようとしていました。   
 2009年にシュワイカートらの研究1をきっかけに、ICUにおける早期リハビリテーションが盛んにおこなわれるようになりました。ICUベッドは、ベッド上に居ながら下肢下垂の座位ポジションがとれるなど高機能化が進みました。わたしは、「ベッドが高機能化されれば、リハビリが進み、患者や看護師の負担が減り、ケア環境は良くなる」と信じていました。ところが、希望通りベッドの機能は良くなっても、ベッド周りの環境が改善されない、あるいは高機ICUベッドを導入したコンセプトが活かしきれていない、ということが少なからずあるということも同時にわかりました。
1) Schweickert WD, et al. Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial. Lancet. 2009; 373: 1874-1882.
  2014年に新たな特定集中治療室管理料1,2が創設され、20㎡/床を確保することなどの条件でより高い診療報酬がつくようになったことから、ICUをより広く改修する事例が増えてきました。改修をきっかけに、壁からエネルギーを供給するウォールケアユニットから天井からエネルギーを供給するシーリングペンダントに変わる事例が多く見受けられました。安静臥床を是とする時代であれば、ウォールケアユニットはスペースを最大限効率化したレイアウトとして優れていました。しかし早期離床のためのリハビリテーションが当たり前になってくると、背を起こした患者とベッドサイドモニターとの距離、人工呼吸器の位置がどうしても遠くなってしまいます。コード類も、多くが患者の頭後ろから伸びて、床を這うような状況になってしまします。これを解消するというコンセプトで、シーリングペンダントが普及し始めました。一見きれいにレイアウトされているように見えても、ベッド納品時に臨床スタッフとお話をすると、実に何度も耳にする同じ言葉がありました。「こんなはずじゃなかった…」と。一体どんな問題点があるのでしょうか。感染管理上優れているといわれる「床から浮いていることでコード類が這わず、床を掃除しやすい」という点についてもはたして本当なのでしょうか。  
 コロナ禍を経験し、今後のICUのベッド周りのケア環境はもっと変わっていくことが予想されます。IT化が加速し、アセスメントの質をよりいっそう高めていくことになると思われるセンシングデバイスが開発されていくことも予想されます。この先、私たちが実現しなければならない理想のケア環境について議論ができたらと思っています。