第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY14] 気管挿管患者を人とつなぐコミュニケーションの技

Sun. Jun 12, 2022 2:20 PM - 3:50 PM 第1会場 (国際会議場 メインホール)

座長:林 尚三(公益社団法人有隣厚生会富士病院)
   富阪 幸子(川崎医科大学総合医療センター)
演者:山口 亜希子(神戸大学大学院保健学研究科)
   久間 朝子(福岡大学病院)
   本田 智治(長崎大学病院 高度救命救急センター)
   今澤 美由紀(山口大学医学部附属病院)

2:20 PM - 2:45 PM

[SY14-01] 看護師は気管挿管患者とのコミュニケーションにどの様に取り組むのか −研究成果が示す実践−

○山口 亜希子1 (1. 神戸大学大学院保健学研究科)

Keywords:コミュニケーション

クリティカルケア領域の看護師は日常的に気管挿管患者とのコミュニケーションを行なっているが、患者とのコミュニケーションには多くの課題を抱えている。例えば看護師は、患者が伝えるメッセージを正確に理解する事が難しい。この事は、身体機能が低下した患者が、コミュニケーションの代替手段を使い看護師に的確にメッセージを伝える事が難しい事に起因している。しかしこの様な状況下にあっても看護師は、コミュニケーションを通して患者の思いや考えを知り、患者のニーズを明確にして適切な治療や看護を提供する事が求められる。ならば我々看護師は、この困難さにどの様に立ち向かえば良いのだろうか。本シンポジウムではこれまでの研究で得られた知見をもとに気管挿管患者とのコミュニケーションの実践について検討する。なお、シンポジウムの冒頭に、言語的・非言語的コミュニケーションの定義や特徴、種類について解説を行う。
先行研究1)〜3)から導かれたコミュニケーションの実践は以下である。
・患者のコミュニケーション能力をアセスメントする。クリティカルケア領域で治療を受ける患者の身体状態は日々変化する。それに従い患者のコミュニケーション能力も日々変化する。コミュニケーション能力のアセスメントは一日単位で必要となる。
・患者のコミュニケーション環境を整える。騒音や照明の暗さはコミュニケーションを阻害するため、静かで明るい環境下を準備する。臥床状態でのコミュニケーションは患者を疲れさせる。可能な限りヘッドアップから座位の姿勢をとる。普段メガネや補聴器の補助具を使用している場合はそれらを装着する。コミュニケーション手段の選択肢を多く準備しておく。
・患者とのコミュニケーション時間を確保する。気管挿管患者とのコミュニケーションには時間がかかるため、コミュニケーションのための時間を確保する。
・患者が伝えることを身体・心理・社会的側面の全方位から理解する。患者は医療上のニーズを伝える一方で、医療上のニーズ以上のものを伝える事を想定する。患者が伝えた内容を理解したのか否かを、また理解した内容を患者に必ずフィードバックする。
本来はこれらの実践によって、患者が伝える内容を理解できる事が理想である。しかし、看護師がどれだけ手を尽くしても、患者の伝えたい内容を理解できない状況が起き得る。この状況に看護師は無力感を抱くこともあるが、患者が伝えたいと願う内容を何とか知ろうとする看護師の態度は、患者が体験する話す事ができない辛さを乗り越える手助けとなるかもしれない。気管挿管患者とのコミュニケーションの実践の根底にあるものは患者への関心である。患者への関心を持ち続ける事がコミュニケーションの実践においては重要であると考える。
参考文献
1. 山口亜希子他(2013). ICU看護師が体験した人工呼吸器装着患者とのコミュニケーションの困難さおよび実践. 日本クリティカルケア看護学会誌. 9巻, 1号, 48-60.
2. 山口亜希子他(2015). ICU の人工呼吸器装着患者が体験したコミュニケーションの困難さと用いたコミュニケーションの方略. 日本クリティカルケア看護学会誌. 11巻, 3号, 45-55.
3. Akiko Yamaguchi et al (2022). Characteristics of scenes in which mechanically ventilated critically ill patients actively communicate: Video-based descriptive observational study. Proceedings of the 22nd KSCCM-JSICM Joint Congress. p40.