第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY3] 重症患者の症状緩和と看護

Sat. Jun 11, 2022 12:20 PM - 1:40 PM 第1会場 (国際会議場 メインホール)

座長:片山 雪子(榊原記念病院)
   大山 祐介(長崎大学生命医科学域保健学系)
演者:加藤 茜(信州大学医学部保健学科)
   櫻本 秀明(日本赤十字九州国際看護大学)
   北山 未央(金沢医科大学病院)
   星野 晴彦(国際医療福祉大学 成田看護学部)

12:20 PM - 12:40 PM

[SY3-01] クリティカルケアを受ける患者や家族は、何に苦しんでいるのか?

○加藤 茜1 (1. 信州大学医学部保健学科)

Keywords:全人的苦痛、緩和ケア

 クリティカルケアを受ける患者の多くは、疼痛や呼吸困難感、不眠、嘔気/嘔吐、便秘などさまざまな身体的苦痛を経験している。さらに、不安などの心理的苦痛、経済的基盤の喪失などの社会的苦痛、医療者に支配されている感覚や自己コントロール感の喪失などの尊厳が傷つけられるようなスピリチュアルな苦痛をも経験する。これらの苦痛は単独で存在する場合もあるが、多くは重複して生じる。そのため、医療者は患者が経験する苦痛を全人的に捉え、緩和に向けたケアを提供していく必要がある。
 くわえて、近年ではICUサバイバーやPost-Intensive-Care-Syndrome(以下、PICS)、Post-Intensive-Care-Syndrome-Family(以下、PICS-F)という概念が確立し、世界各国で集中治療後の患者やその家族の追跡調査が行われている。日本の調査結果においては、約64%のICUサバイバーが身体的・心理(精神)的・認知的側面のいずれかにおいて機能低下を抱えているとされる。また、海外ではがんサバイバーと同様に、ICUサバイバーおよびその家族が集中治療後にFinancial Toxicityを抱え経済的に非常に困窮することも指摘されている。これらのことは、集中治療により生存にはつながったものの、その後の生活を営むことが困難な状況にあるサバイバーの存在を示す。
 以上のような状況を踏まえ、現在世界的にクリティカルケア領域における緩和ケアの重要性が高まっている。世界保健機関(World Health Organization、以下WHO)は緩和ケアを「身体的・心理的・社会的・精神的な側面から、生命を脅かすような疾患に関連した問題に直面する患者や家族のQOLを向上させるものである。」と位置づけている。さらに、「心血管疾患、がん、主要臓器不全、薬剤耐性結核、重度の火傷、終末期にある慢性疾患、急性外傷などを抱える患者、超低出生体重児、フレイルな高齢者などであっても緩和ケアを必要としている可能性があり、すべての治療段階で利用できなければならない」としている。つまり、患者が終末期であるかどうかにかかわらず、緩和ケアは提供されるべきケアであり、基本的クリティカルケアの一部として認識する必要がある(Fig.1)。
 このシンポジウムでは、クリティカルケアを取り巻く緩和ケアの現状を示しながら、看護師が患者や家族の苦痛対しどのように向き合えばよいのかを共有したい。また、クリティカルケアナースが捉える患者・家族のニードと患者・家族が抱えているニードとのギャップ(アンメットニーズ)について、海外の報告を参考に皆さまと考察したい。
SY3-01