第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY3] 重症患者の症状緩和と看護

Sat. Jun 11, 2022 12:20 PM - 1:40 PM 第1会場 (国際会議場 メインホール)

座長:片山 雪子(榊原記念病院)
   大山 祐介(長崎大学生命医科学域保健学系)
演者:加藤 茜(信州大学医学部保健学科)
   櫻本 秀明(日本赤十字九州国際看護大学)
   北山 未央(金沢医科大学病院)
   星野 晴彦(国際医療福祉大学 成田看護学部)

1:20 PM - 1:40 PM

[SY3-04] 重症患者の抱える不安と恐怖

○星野 晴彦1 (1. 国際医療福祉大学 成田看護学部)

Keywords:不安、恐怖、PTSD

本シンポジウムでは重症患者の不安や恐怖について解説する。不安は漠然とした葛藤的な恐怖に対する反応であり、精神疾患まで発展しない、誰もが経験する感情である。恐怖は対象が限定された脅威に対する反応である。先行研究は恐怖に関する報告は少ないものの、多くの重症患者を対象とした研究は、精神疾患であるPTSDなどを対象としている。重症患者の不安、そしてPTSDについて記述する。患者をICU入室した過程で経験する精神的な苦痛は入室前・中・後に分かれる。苦痛は可能な限り除去する方が良いと思われるが、ICUの性質上、苦痛をゼロにすることは困難である。しかしICUの入室に伴い感じた苦痛が、退室後に長期に継続することは避けたい。退室後の苦痛に対しては、外来などでフォローアップする方法が考えられるが、これらの効果が少ないとする報告もある[Oliver, 2018]。以上のこと、本学会に参加する方の特徴を踏まえICU入室に伴う長期的な苦痛に対して、ICU滞在中にどのようなことができるか考えていく。まずは発生率から記述する。いくつかの報告があるが、2018年フランスで行われたICU退室1年後の1447名を対象とした報告では、不安が22%、PTSDが15%であった[Bastian, 2018]。この報告が数は以前のものと比較するとPTSD発症率が高く、研究離脱者が少ないことが関連しているかもしれない[Jackson, 2015]。 これらの発生率を報告した研究の評価方法は不安を評価するツールはHADS-A・STAI・POMS、鬱はHADS-D・CES-D・BDI-II、PTSDはIES-R、PCL-Sなどが文献上で用いられている。症状の発生率を評価することは、行ったケア効果を知る上で最も重要なことである。同時に、長期的に症状を評価し続けるシステムの構築、マンパワーの確保は難しく、最大の壁とも考えられる。また苦痛の緩和のための方法について考えていくが確立した方策はない。一方で確実なことは倫理的な配慮がない環境では苦痛を伴いやすいと考えられる。本セッションでは倫理的な配慮があった上でどのような対応が必要かを考えていく。不安やPTSDは精神的苦痛を伴うエピソードをともに発生することが知られている。これらの精神的苦痛を最低限にすることが必要である。一方でICUに入室したすべての患者が症状発症するわけではない。発症する患者の特徴として、人工呼吸器管理が長い患者、重症度が高い患者で発生することが知られている。これは精神的問題だけでなく、酸化ストレス、炎症、アポトーシス経路の活性化、および鎮静など身体的な影響が関与すると考えられているためでる。そのため精神症状が緩和するためにも全身状態の緩和に対する介入が必要であると考える。全身状態の緩和はクリティカルケア看護師の得意な分野であり、新たな道具も必要としないため実践しやすいと考えられる。様々な方法が考えられるが、確立した方法としてABCDEバンドルが有効な可能性がある[Smith, 2021]。これらのフィジカルに関連した問題にアプローチした上で、非薬物的介入も効果的な可能性がある。ICUダイアリー、ミュージックセラピー、アロマ、リハビリテーションなどの非薬物的介入が症状を緩和させる可能性が報告されている[JW, 2018]。本シンポジウムは上記の内容について解説していく。