第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY5] クリティカルケア領域における終末期ケアの質

Sat. Jun 11, 2022 2:10 PM - 3:40 PM 第10会場 (総合展示場 G展示場)

座長:伊藤 真理(川崎医療福祉大学)
   小島 朗(大原綜合病院)
演者:相楽 章江(山口大学医学部附属病院 看護部)
   三須 侑子(自治医科大学附属病院 看護部)
   森山 美香(島根県立大学看護栄養学部看護学科)
   加藤 茜(信州大学医学部保健学科)

3:20 PM - 3:40 PM

[SY5-04] 「救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド」公表1年後の活用状況と実践状況

○加藤 茜1、田中 雄太2、木澤 義之3、山勢 博彰4、田戸 朝美4、立野 淳子5 (1. 信州大学医学部保健学科、2. 東北大学大学院医学系研究科保健学専攻、3. 神戸大学大学院医学研究科内科系講座、4. 山口大学大学院医学系研究科保健学専攻、5. 一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院)

Keywords:終末期ケアプラクティスガイド、ケアの質

【背景】2019年日本クリティカルケア看護学会および日本救急看護学会の合同委員会から「救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド(以下、ガイド)」が公表された。このガイドは、救急と集中ケアの臨床場面で終末期看護を受ける患者と家族のQOL(Quality of Life)/QOD(Quality of Death)を向上させることを目的に、終末期看護の概要から具体的行動例までの一連の知識と行動を示している。日本のクリティカルケア領域における終末期ケアの現状を踏まえ、今後を展望するためには、このガイドがどの程度認知されているのか、また、どの項目がどの程度実践されているのかを明らかにする必要がある。
【目的】ガイドがどの程度周知されているのか、およびガイドを構成するケア内容がどの程度実践されているのか、を明らかにすること。
【方法】無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は1)ガイドの認知および活用状況(知らない、存在は知っているが目を通していない、目を通したが活用には至っていない、目を通し、活用している)、2)ガイドが示す目標および項目の41項目(全く行われていない、あまり行われていない、だいたい行われている、必ず行われている:4件法)、3)基本属性とした。
【対象】看護協会ホームページ上の「資格認定制度 専門看護師・認定看護師・認定看護管理者 分野別都道府県別登録者検索」システムから病院施設に勤務する集中ケア認定看護師、救急看護認定看護師、急性・重症患者看護専門看護師 合計741名を無作為抽出した。
【結果および考察】質問紙は384部回収され(51.8%)、有効回答は359部(48.3%)であった。この調査の主要な知見は3つである。1つ目は、実際にプラクティスガイドを活用していた者は16.4%であり,目を通したが活用できていない45.8%、目を通していない26.6%、知らない11.3%であった。本ガイドが約40%の認定看護師・専門看護師に認知されていない現状から、ジェネラリストナースへの周知も不十分であると考えられる。2つ目は,患者の身体的苦痛緩和ケアは93.9%の者が行えている一方で,スピリチュアルな苦痛緩和ケアおよび心理・社会的苦痛緩和ケアはそれぞれ76.8%、53.5%が行えていなかった。また、46.5%が院内の専門的リソースを活用できていなかった。このことは、患者が経験する苦痛に対する緩和ケアには偏りがあることを示し、看護師だけで全人的苦痛緩和を図ることは困難であると考えられる。3つ目は,意思決定に向けた患者・家族の意向把握および情緒的支援は91.6%、71.4%の者が行えている一方で、30.1%が医療チームの患者および家族に対する支援体制の整備を行えていなかった。このことより、患者や家族に対し他職種とともにチームとして関わっていくシステムの構築が必要であると考えられる。
【結論】ガイドの認知が不十分であるため、学会を中心に積極的に周知活動を行っていく必要がある。また、患者の全人的苦痛に対する緩和ケアに偏りがあるため、看護師だけでなく他職種および他領域の医療者とも連携し、緩和ケアを促進していけるシステム構築が必要である。