10:10 〜 10:30
[SY7-04] リフレクションによる成長支援
キーワード:経験学習、リフレクション、成長支援
職場においては日頃の経験を成長に結びつけることが大切です。この経験を通じた成長、すなわち経験学習を促進する働きとして重視されるのがリフレクション(reflection)です。人材育成の観点からはリフレクションをいかに促すのかという点が重要であるといえます。
以下に、リフレクションという働き、リフレクションの支援の2点に関してコルトハーヘンのALACTモデルに即して確認していくことにします。
ALACTモデルでは、①行為(action)②行為の振り返り(looking back)③本質的な諸相への気づき(awareness)④行為の選択肢の拡大(creation)⑤新しい試み(trial)というサイクルとして経験学習は捉えられます。このサイクルを通じ、なぜそう振る舞ったのかという本質的な気づきに至ることを重視し、そこに生まれる〈問い〉の答えを考えるためのヒントになる理論を探して、次の行為の具体的な選択肢を拡大することが経験から学ぶことだと考えられています。
ALACTモデルが提示する支援者の役割は次の通りです。
まず、ALACTモデルに従って、例えば新人看護師(以下新人)が省察できるように、意図的な課題を設定し、その実践の機会を提供し、その体験を基盤として新人は振り返りを行います。具体的には、新人が有用な経験を見つけるための機会を設け、その経験について具体的に語るのを、誠実に共感しながら受容し、何が起きたかを明確にし、向き合うことができるようにします。充分な分析、吟味ができると、新人は実際に何が起きていたのか、重要な点はどこにあったのかについて気づくことができます。例えば、感情と思考のずれ、しているつもりのことと実際の行動の差異、そうありたいこととそうであることのくい違い、言語メッセージと暗黙のメッセージの相反などの点です。こうして丁寧な分析で気づきが生じたら、他の選択肢はなかったのか、あるいはその行為がなぜ選択され、最良であったのか、新たな選択肢を用いたらどういう結果を生んだだろうかと問いかけ、次の行為への可能性を広げます このプロセスで支援者は、活用できる理論を紹介することや、調べるように示唆することができ、新人は自分の実践に対する理解を既存の理論によって深めることができるようになります。こうした支援者の役割は、何が正しくできていて、何を誤っているのか、次回はどう直せばいいのか、などを直接教えることにはない点に注意が必要です。リフレクションの対象は失敗した実践だけではありません。成功体験は成長の大きな助けになります。うまくいった理由の明確化は、自己効力感を高めるためにはとても有用だということも忘れずにいたいことです。
ところがこのサイクルはいつもうまく回るわけではありません。人はしばしば、分かっているのにできない、気づいているのに変えられないことがあります。その場合、何をするのかという点にフォーカスするのではなく、何のために今ここにいるのか、ここで何をしたいのかという〈意味〉、いわば行動や態度のコアを問うことも必要です。看護師になりたいから始まって、どんな看護師になりたいのか、何が看護のために重要なのか、看護師としての自分の役割は何か、という根本的な目標や信念のようなものに関わるリフレクションをしなければ行動はなかなか変わりません。自分にとっての〈意味〉を問い直す意味志向型のリフレクションも時に成長のための契機としては重要になる場合もあります。
参考文献
・Korthagen,F.A.(2001)/武田信子監訳(2010).教師教育学.学文社.
以下に、リフレクションという働き、リフレクションの支援の2点に関してコルトハーヘンのALACTモデルに即して確認していくことにします。
ALACTモデルでは、①行為(action)②行為の振り返り(looking back)③本質的な諸相への気づき(awareness)④行為の選択肢の拡大(creation)⑤新しい試み(trial)というサイクルとして経験学習は捉えられます。このサイクルを通じ、なぜそう振る舞ったのかという本質的な気づきに至ることを重視し、そこに生まれる〈問い〉の答えを考えるためのヒントになる理論を探して、次の行為の具体的な選択肢を拡大することが経験から学ぶことだと考えられています。
ALACTモデルが提示する支援者の役割は次の通りです。
まず、ALACTモデルに従って、例えば新人看護師(以下新人)が省察できるように、意図的な課題を設定し、その実践の機会を提供し、その体験を基盤として新人は振り返りを行います。具体的には、新人が有用な経験を見つけるための機会を設け、その経験について具体的に語るのを、誠実に共感しながら受容し、何が起きたかを明確にし、向き合うことができるようにします。充分な分析、吟味ができると、新人は実際に何が起きていたのか、重要な点はどこにあったのかについて気づくことができます。例えば、感情と思考のずれ、しているつもりのことと実際の行動の差異、そうありたいこととそうであることのくい違い、言語メッセージと暗黙のメッセージの相反などの点です。こうして丁寧な分析で気づきが生じたら、他の選択肢はなかったのか、あるいはその行為がなぜ選択され、最良であったのか、新たな選択肢を用いたらどういう結果を生んだだろうかと問いかけ、次の行為への可能性を広げます このプロセスで支援者は、活用できる理論を紹介することや、調べるように示唆することができ、新人は自分の実践に対する理解を既存の理論によって深めることができるようになります。こうした支援者の役割は、何が正しくできていて、何を誤っているのか、次回はどう直せばいいのか、などを直接教えることにはない点に注意が必要です。リフレクションの対象は失敗した実践だけではありません。成功体験は成長の大きな助けになります。うまくいった理由の明確化は、自己効力感を高めるためにはとても有用だということも忘れずにいたいことです。
ところがこのサイクルはいつもうまく回るわけではありません。人はしばしば、分かっているのにできない、気づいているのに変えられないことがあります。その場合、何をするのかという点にフォーカスするのではなく、何のために今ここにいるのか、ここで何をしたいのかという〈意味〉、いわば行動や態度のコアを問うことも必要です。看護師になりたいから始まって、どんな看護師になりたいのか、何が看護のために重要なのか、看護師としての自分の役割は何か、という根本的な目標や信念のようなものに関わるリフレクションをしなければ行動はなかなか変わりません。自分にとっての〈意味〉を問い直す意味志向型のリフレクションも時に成長のための契機としては重要になる場合もあります。
参考文献
・Korthagen,F.A.(2001)/武田信子監訳(2010).教師教育学.学文社.