第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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プラクティスセミナー(オンデマンド)

[WS1] プラクティスセミナー(オンデマンド配信)

Sat. Jun 11, 2022 10:00 AM - 4:00 PM プラクティスセミナー (オンデマンド配信)

10:00 AM - 11:00 AM

[WS1-01] 人工呼吸管理

○佐藤 慎哉1 (1. 富山大学附属病院 看護部)

本セミナーでは、人工呼吸管理の初学者向けに「人工呼吸管理の基礎」と「人工呼吸器装着患者のケア」について基本的事項を述べる。
 「人工呼吸管理の基礎」では、主に陰圧呼吸と陽圧呼吸の仕組みや人工呼吸器のモードに焦点を当てる。人工呼吸管理を行うには、自然呼吸(陰圧呼吸)と人工呼吸(陽圧呼吸)の共通点と相違点を理解することが肝要である。両者に共通することは、大気圧との間に圧較差を作り、気流を作る点にある。自然呼吸(陰圧呼吸)では、安静時において大気圧より低い胸腔内圧(陰圧)を作ることで肺を膨張させ、ガスが大気中から気管を経由し、肺胞に引き込まれるように流入する。一方、人工呼吸(陽圧呼吸)では大気圧よりも高い圧(陽圧)を人工的に作ることで、ガスが肺胞に押し込まれるように流入する。両者の相違点は、「引き込む」か「押し込む」かにある。次に、人工呼吸器の基本モードであるA/C、SIMV、CPAPについてお伝えする。A/C(Assist/Control)は、補助/調節換気(いわゆる強制換気)と呼ばれ、自発呼吸がない場合は設定した換気回数だけ調節換気として強制換気を行うが、自発呼吸が発生した場合はそれに同期し、補助換気として強制換気を行う。タイムトリガー(調節換気)と患者トリガー(補助換気)の両者に対し、回数の制限なく強制的に同一の器械換気が行われることが特徴である。SIMV(Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation)は、同期式間欠的強制換気(いわゆる半強制換気)と呼ばれ、先に述べたA/Cと後に述べるCPAPとの中間的なモードに位置する。自発呼吸がなければ、A/Cと同様に設定した換気回数だけ調節換気(強制換気)が行われる。自発呼吸がある場合は、それがトリガーウィンドウ内であれば同期(synchronize)して補助換気(強制換気)が行われ、トリガーウィンドウ外であれば設定した圧でPSV(Pressure Support Ventilation:圧支持換気)となり、呼吸仕事量が軽減される。設定した換気回数だけ強制換気が行われ、それ以上の自発呼吸はPSVとなるのが特徴である。CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)は、持続的気道陽圧といい、いわゆる自発換気モードである。自発呼吸にPEEP(Positive End Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)を付加したモードといえる。通常、PSVを付加し、呼吸仕事量を軽減する。A/CやSIMVのように強制換気がないため、完全に自発呼吸に依存するのが特徴である。
 「人工呼吸器装着患者のケア」では、基本的なケアである気管吸引や体位管理のほか、トラブルシューティングなどについてお伝えする。気管吸引は、気管分泌物を吸引することが目的であるが、同時に肺胞虚脱や気道損傷のリスクもあることを考慮しなければならない。これらを回避するためには、吸引圧・吸引時間・吸引カテーテルの挿入の深さの3点が重要となる。体位管理は、目的によって方法が異なる。患者の状態をアセスメントし、体位ドレナージ、下側肺障害予防、VAP予防などの目的別に適切なポジショニングを選択していくことが重要である。トラブルシューティングは、アラームを種類(コンプライアンス低下・気道抵抗上昇・リーク・非同調の4点)と部位(人工呼吸器・回路/気管チューブ・患者の3点)の視点で4×3表に分類して考えると、原因と対処法が理解しやすい。正確にトラブルの原因を鑑別し、問題にアプローチすることが重要である。
 以上が概略となる。人工呼吸管理は学べば学ぶほど奥深さに気づかされる分野である。初学者にその一端に触れていただければ幸いである。