第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL11] 多職種協働のためのコンピテンシー~T型人間のすすめ~

2019年10月5日(土) 11:00 〜 12:00 第4会場 (3F 中会議室301)

座長:小笠原 恵子(高知医療センター 集中治療)

[EL11] 多職種協働のためのコンピテンシー~T型人間のすすめ~

松下 博宣 (東京情報大学)

卓越した看護師と凡庸な看護師とでは、なにがどう違うのだろうか。ある大病院の委託を受けて、卓越した看護師と凡庸な看護師のコンピテンシー(能力行動特性)を比較した。

方法

 人事委員会が選定した10名の卓越した看護師(上位1.5%)と10名の凡庸な看護師に対して、Behavioral Event Interviewを実施して、インタビュー内容をテキスト化。当該テキストに対してコーディングを行い、コンピテンシーを計量的に測定した。コンピテンシーの項目は、Spencer & Spencer(1993)、松下(2004)、Matsushita(2018)を参考に選定した。

結果

 卓越した看護師は、凡庸な看護師に比べ、技術スキル、関係性スキルともに高い。凡庸な看護師は技術スキルに依存して業務を遂行する傾向がある。ところが、卓越した看護師は技術スキルにおいて、凡庸な看護師よりも優れているが、関係性スキルにおいてさらに優れていた。卓越した看護師は、技術スキルもさることながら、対人関係感受性、人間関係構築力、パートナーシップ、協働型リーダーシップ、調整型チームワークを含める関係性スキル(関係性ノンテクニカルスキル)を駆使して仕事を遂行していることが示唆された。

考察

 ともすれば看護教育では「技術スキル」の習得が重視される。また専門看護師、認定看護師等の動向は、専門的な技術や知識に対して付与される傾向があり、卒後、多くの上昇志向の強い看護師は「技術スキル」志向になっている。このようにして看護を取り巻く労働市場は、技術スキルに資格を付与し、技術スキルを中心とした選別が慣行として行われながらも、賃金は旧態依然とした年功賃金であり、技術スキルが公正妥当に賃金に反映されているとは言いがたい。その一方、臨床現場で卓越した力を発揮している看護師は、技術スキル(タテの力)もさることながら、関係性スキル(ヨコの力)にひとつの卓越性の源泉がある。多職種連携協働がますます看護にも求められている昨今、タテの力とヨコの力を併せ持つT型人間が求められるようになるだろう。一般的に、技術スキルは短期的なリターンは高いが、イノベーション等の影響を受けやすく陳腐化する速度が速い。それに対して関係性スキルは青年期を含め長期に渡って醸成され、成人期全般において長期的に発揮され、陳腐化することはなく人的ネットワーク効果と相まって収穫逓増状態となる。技術スキル重視の世の中にあって、逆説的に、関係性スキルを育んでいくことには、実は大きな効果と意味があるのである。あなたもT型人間を目指しませんか?
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