第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL4] 学ぶ力を身につける~学ぶ側と教える側で考える~

2019年10月4日(金) 14:10 〜 15:10 第4会場 (3F 中会議室301)

座長:藤原 正恵(大阪青山大学 健康科学部看護学科)

[EL4] 学ぶ力を身につける~学ぶ側と教える側で考える~

杉木 大輔1,2 (1.獨協医科大学埼玉医療センター, 2.熊本大学教授システム学研究センター)

「こんなに教えているのにどうしてできないの?」

「どうしてもっと教えてくれないんだろう」

なんて思ったことはありませんか?

一方で

「どんなふうに学んでもらうよう支援すればいいのだろう?」

「どうやったらもっと効果的に学べるのかな?」

とはなかなか考えたり、指導したりすることはないかもしれませんよね?

でも教える側や学ぶ側が賢く学ぶ力について理解しているともっと効率的で効果的に教えたり、学んだりすることができるかもしれません。更に魅力的で面白い教材、セミナー、勉強会、新人指導などを企画したり、運営したり、学んだりすることができれば楽しくなってきませんか?

インストラクショナルデザインは教育をより効果的・効率的・魅力的にするための方法論ですが、これを学ぶ側、教える側が有効に活用すると前述したようなことが実現できるでしょう。一方で学ぶ側も効果的な学び方は何かと知っておき、意識しておくだけで学習効果に変化が現れる可能性があります。教える側も一からすべて教えるよりも自ら進んで学んでいく学習者の方が負担も軽くて助かるのではないでしょうか?更にできる後輩が育てば先輩方の働き方にも変化が出てくるのではないでしょうか?もちろん学ぶ側である後輩にもやりがい、自信、満足につながっていくでしょう。

ではこうした学ぶ力はどのように身につけるのでしょうか?

学ぶ力は、ガニエの学習成果の5分類の中でも認知的方略と呼ばれ、自らの学習を効果的にするための作戦の習得です。これを身に着けるには一朝一夕では難しいですがどのような力なのかを知り、自分の学び方を振り返ることからはじめてみることをおすすめします。

例えば、効果的な勉強会や新人指導を組み立てるには、自分がどのように学習したら効果的だったかという体験に基づくのが一番確実だと思います。これは自分が学ぶ苦労をした指導者ほどいい教え方ができるといわれることにも通じます。つまり成果の出る魅力的な勉強会や新人指導を豊富に経験した新人看護師さんは、どうやって学習すれば良いのかを間接的に学んでいることにもなるのです。そのような視点で教える側も勉強会や指導に臨み、学ぶ力を身に着けてもらうことを考えても良いのではないでしょうか?臨床現場では忙しくてなかなかそこまで考えられないことも多いですが、認知的方略=学ぶ力を自分のものにしてもらうことを目標の一つとすれば、そのために有効な手段として学び方を意識させること(メタ認知)も重要な鍵となることが理解していただけると思います。

メタ認知についてはZimmerman らも自己調整学習のプロセスの中で述べているように、自分自身をモニタリングしながら学習することには非常に重要な要素と位置づけています。自己調整学習とは「学習者たちが自分たちの目標を達成するために体系的に方向づけられた認知、感情、行動を自分で活性化し、維持する諸過程のこと」とされ、自分で意識して学習を調整できることを指します。我々の施設でも、こうした自己調整学習を促すことができる職場環境が構築できるよう少しずつ取り組んでいるところです。

以上からまず自分の学び方を一度立ち止まって振り返ってみてから、自分自身の学びや教え方を見直してみてはいかがでしょうか?生涯学習者である私達はいつかどこかで必ず教える側に立つのですからそのための準備としても自分に合った学び方を身につけておきましょう。

今回は短い時間ですが、学ぶ側、教える側のどちらの立場の人にも学ぶ力について考えてもらえる場にしたいと考えています。皆さんのご参加をお待ちしております。