第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL7] 看護実践のためのエコーを用いた身体診察

2019年10月5日(土) 11:00 〜 12:00 第2会場 (2F コンベンションホールB)

座長:木澤 晃代(日本大学病院 看護部), 白石 浩子(獨協医科大学病院 看護部)

[EL7] 看護実践のためのエコーを用いた身体診察

亀田 徹 (安曇野赤十字病院救急科)

エコー装置の小型化が実現し,ベッドサイドでエコーが非常に利用しやすくなった.多くの臨床研究を通じてベッドサイドエコーの有用性が再認識され,国際的にpoint-of-care ultrasound(POCUS)と呼ばれるようになった. 診察の一環として用いられるPOCUSでは,限られた時間の中で観察部位・評価項目が絞られる.POCUSで得られた所見を適切に解釈するためには,病歴・バイタルサイン・身体所見をもとに原因を解き明かしていく認知プロセス,「診断推論」が重要となる.看護師によるPOCUSの利用については,コンセンサスは十分に得られていないが,膀胱内容量,褥瘡深度,下大静脈径の評価や,ガイド下静脈穿刺が行われるようになっている.将来は,focused assessment with sonography for trauma(FAST)や気胸の評価を加えたextended FAST(EFAST),肺水腫の評価,簡略化した心エコー,深部静脈血栓症の簡易スクリーニング,気管挿管や尿道カテーテル留置の確認が看護師によって行われることも想定される.さらに,POCUSは1日に何度も施行できるので,モニタリングや経過観察としての活用も見込まれる.このような使い方は,ベッドサイドでケアにあたる時間が長い看護師に特に期待されるところであろう.バイタルサインとPOCUS所見の経時的変化を組み合わせることで,迅速で的確な判断につながると考えられる.もっとも看護師によるPOCUSの成否は,チーム医療の中でどのようにPOCUS所見を共有するかにかかっている.相応のスキルを習得することはもちろんのこと,エコー特有の客観性と再現性についてどのように対処していくかが課題となる.この講演では,まずPOCUS概論,看護師によるPOCUSの現状や関連する臨床研究について解説する.次にエコー初学者の方に実際にプローブを握っていただき,演者の口頭でのサポートのもとで,実際にエコーを用いた身体診察を行っていただく.最後に看護師によるPOCUS活用の可能性について,皆様とご一緒に考える機会を頂きたい.

【文献】
1) 木澤晃代.看護師による超音波機器の活用.救急超音波テキスト ― point of careとしての実践的活用法.東京,中外医学社,2018年,351-357.
2) 亀田徹.急性期診療におけるPOCUSの現状と展望.Jpn J Med Ultrasonics. 46(1), 2019, 5-15.