[O1-4] 二次救急外来における感染症疑い患者に対するqSOFAとSIRSの比較
目的
sepsis-3で敗血症の判断基準は、SIRSに代わりSOFAとqSOFAが推奨された。敗血症の判断基準の改訂に伴い、日本緊急度判定支援システム2017年度版は、トリアージレベル緊急にqSOFAの2項目以上を追加したが、SIRSの2項目以上も緊急として残存している。本研究は、救急外来を受診した感染症を疑う成人患者を対象として、qSOFAを2項目以上満たす患者(以下qSOFA群)とSIRSを2項目以上満たす患者(以下SIRS群)の2群の入院率、入院期間などの転帰を比較して、トリアージレベルの妥当性を検証することを目的とする。
方法
研究デザイン:後方視的観察研究である。調査期間:2018年10月と2019年1月の各1ヶ月間。データ収集方法:感染症を疑う症状を主訴とした成人患者を対象として、インフルエンザ非流行期と流行期のデータを収集し、qSOFA群とSIRS群の2群の入院率、入院期間などを比較した。なお、qSOFAとSIRSの両基準を満たす患者は、両群ともに含めた。
倫理的配慮
本研究は、A病院倫理委員会の審査後、許可を得て実施した(番号:31-02)。
結果
対象者は欠損値があるデータを除いた978例(89%)で検証した。qSOFA群は79例(6.8%)、SIRS群403例(36%)であった。10月と1月を合わせた入院は、qSOFA群64例、SIRS群108例、10月/1月の入院率は、qSOFA群93%/77%、SIRS群46%/23%であった。ROC曲線のAUCを算出するためにカットオフ値は両群とも2項目とした。AUCは、qSOFA群(入院後死亡7例うち5例SIRSを満たす)0.77(感度0.81、特異度0.73)、SIRS群(入院後死亡5例全てqSOFAを満たす)0.23(感度0.26、特異度0.19)であり、死亡例は全員80歳以上であった。65歳以上の入院率はqSOFA群90%、SIRS群60%で、AUCはqSOFA群0.58、SIRS群0.42であった。入院期間の中央値は、qSOFA群14日(IQR6-28)、SIRS群11日(IQR6-23)(p=.2)。
考察
Sepsis-3のタスクフォースは、敗血症の識別に役立たないと述べている。救急外来におけるqSOFA群とSIRS群の入院後死亡率の調査では、qSOFA群がSIRS群より有意に高かった。しかしながら、この調査は、救急外来に滞在中の患者の最も悪い状態を評価しており、病院到着直後のトリアージではなかったため、本研究では、トリアージ時点の患者の状態を比較した。入院率は、qSOFA群81%、SIRS群26%であり、CTASの予測入院率ではqSOFA群は緊急(70-90%)、SIRS群は低緊急(15-40%)に該当する。インフルエンザ流行期の入院率は、非流行期より両群とも低下した。これは、患者がインフルエンザと判定されれば、重症例以外は処方で帰宅するためと考える。しかしながら、インフルエンザ流行期にかかわらず、両群とも予測入院率によるトリアージレベルに大差はない。SIRS群の65歳以上の入院率は、CTASの予測入院率で準緊急(40-70%)に該当し、高齢者に限定しても緊急度に変わりはない。qSOFAはSIRSより入院に対する感度、特異度ともに高く、季節や年齢にかかわらず、SIRS群は準緊急、qSOFA群は緊急とし、qSOFA群の80歳以上は緊急群の中でも優先的に医療介入することを推奨する。
sepsis-3で敗血症の判断基準は、SIRSに代わりSOFAとqSOFAが推奨された。敗血症の判断基準の改訂に伴い、日本緊急度判定支援システム2017年度版は、トリアージレベル緊急にqSOFAの2項目以上を追加したが、SIRSの2項目以上も緊急として残存している。本研究は、救急外来を受診した感染症を疑う成人患者を対象として、qSOFAを2項目以上満たす患者(以下qSOFA群)とSIRSを2項目以上満たす患者(以下SIRS群)の2群の入院率、入院期間などの転帰を比較して、トリアージレベルの妥当性を検証することを目的とする。
方法
研究デザイン:後方視的観察研究である。調査期間:2018年10月と2019年1月の各1ヶ月間。データ収集方法:感染症を疑う症状を主訴とした成人患者を対象として、インフルエンザ非流行期と流行期のデータを収集し、qSOFA群とSIRS群の2群の入院率、入院期間などを比較した。なお、qSOFAとSIRSの両基準を満たす患者は、両群ともに含めた。
倫理的配慮
本研究は、A病院倫理委員会の審査後、許可を得て実施した(番号:31-02)。
結果
対象者は欠損値があるデータを除いた978例(89%)で検証した。qSOFA群は79例(6.8%)、SIRS群403例(36%)であった。10月と1月を合わせた入院は、qSOFA群64例、SIRS群108例、10月/1月の入院率は、qSOFA群93%/77%、SIRS群46%/23%であった。ROC曲線のAUCを算出するためにカットオフ値は両群とも2項目とした。AUCは、qSOFA群(入院後死亡7例うち5例SIRSを満たす)0.77(感度0.81、特異度0.73)、SIRS群(入院後死亡5例全てqSOFAを満たす)0.23(感度0.26、特異度0.19)であり、死亡例は全員80歳以上であった。65歳以上の入院率はqSOFA群90%、SIRS群60%で、AUCはqSOFA群0.58、SIRS群0.42であった。入院期間の中央値は、qSOFA群14日(IQR6-28)、SIRS群11日(IQR6-23)(p=.2)。
考察
Sepsis-3のタスクフォースは、敗血症の識別に役立たないと述べている。救急外来におけるqSOFA群とSIRS群の入院後死亡率の調査では、qSOFA群がSIRS群より有意に高かった。しかしながら、この調査は、救急外来に滞在中の患者の最も悪い状態を評価しており、病院到着直後のトリアージではなかったため、本研究では、トリアージ時点の患者の状態を比較した。入院率は、qSOFA群81%、SIRS群26%であり、CTASの予測入院率ではqSOFA群は緊急(70-90%)、SIRS群は低緊急(15-40%)に該当する。インフルエンザ流行期の入院率は、非流行期より両群とも低下した。これは、患者がインフルエンザと判定されれば、重症例以外は処方で帰宅するためと考える。しかしながら、インフルエンザ流行期にかかわらず、両群とも予測入院率によるトリアージレベルに大差はない。SIRS群の65歳以上の入院率は、CTASの予測入院率で準緊急(40-70%)に該当し、高齢者に限定しても緊急度に変わりはない。qSOFAはSIRSより入院に対する感度、特異度ともに高く、季節や年齢にかかわらず、SIRS群は準緊急、qSOFA群は緊急とし、qSOFA群の80歳以上は緊急群の中でも優先的に医療介入することを推奨する。