第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

災害看護

[O10] O10群 災害看護

2019年10月4日(金) 16:20 〜 17:10 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:大村 正行(岡山赤十字病院 救命救急センターICU)

[O10-2] 災害時の参集に関する要因~震災後の看護師アンケートより~

松田 優美, 木村 美千代 (苫小牧市立病院)

【目的】2018年9月に発生した胆振東部地震は、北海道胆振地方中東部を中心に大きな被害をもたらし、全道でブラックアウトと呼ばれる大規模停電が発生、多くの病院に燃料や食料不足などの問題が生じた。当院は震源地から約30kmにある災害拠点病院で、自院も停電の中、救急車や被災患者の受け入れなどを行った。今回当院看護師の発災後の行動を調査すると共に、病院参集に関連する要因について検証した。【対象と方法】地震発生から3ヶ月後、全看護師を対象に年齢、役職、災害研修の参加歴、震災直後の行動とその理由、震災対応業務内容および自身と病院の災害対応活動への満足度に関するアンケートを実施、震災後の行動を2群に分け比較した。【倫理的配慮】アンケートは無記名とし個人の特定に配慮、調査は自由参加で協力しない場合も不利益が生じないことを説明した。また公表にあたっては、当院倫理委員会の承認を得た。【結果】全看護師の87.4%、342人から回答を得た。発災時、病院にいた看護師は10%、直後に参集した(以下参集群)のは29%、予定通りの勤務(以下通常勤務群)をしたのは61%で、参集時間は発災時刻3時7分から4時が59%、4~6時18%、6~8時18%、8~12時が4%であった。通常勤務の理由は多い順に、連絡がない、子供が小さい、翌日が勤務、病院から自宅が遠い、理由なし、待機指示、自身で判断、マニュアル通りの対応、であった。震災対応で行った業務内容は順に、被災者の入院、他院からの入院、ベッドコントロールの転入、処方外来、自部署の統括業務、スタッフ減少時の通常業務維持、被災者の外来診療、患者・家族へ電話掛け、家族対応、臨時透析、ベッドコントロールの転出、同僚の代替え勤務、であった。災害研修の参加歴ありは69%、なしが31%で、内容は自院の災害訓練、訓練前の研修、他院の災害訓練、災害支援ナース研修、エマルゴ等であった。参集群と通常勤務群を比較すると、年代は参集群が20代12%、30代21%、40代37%、50代以上30%、通常勤務群はそれぞれ28%、17%、39%、16%と、参集者は50代以上で多く、20代で少なかった(p=0.002)。役職は参集群が師長16%、主査19%、スタッフ66%、通常勤務群がそれぞれ1%、3%、97%で、有意差を認めた(p<0.0001)。災害研修の参加歴は参集群が89%に対し、通常勤務群が60%でp<0.0001と有意差を認めた。自身が災害対応の役割を果たせたかの質問に、参集群は、大いに役割を発揮できたが2%、ほぼ果たせたが33%、少し果たせたが48%、できなかったが17%、通常勤務群はそれぞれ3%、11%、47%、39%で、参集群に肯定的な評価が多かった(p<0.0001)。一方、当院が災害対応の役割を果たせたかの質問には参集群と通常業務群でp=0.1と有意差はなかった。【考察】三澤1)らは「自分自身の安全を確保しなければ先に進むこともできず、他者を守ることができなくなる」と、まずは自身の安全確保が重要であると述べている。通常勤務群には、子供が小さい、自宅が遠いなどの回答が見られ、自身や家族の安全を確保する判断を優先させた者もいた。また、発災直後の参集には年齢や役職、震災前の災害研修の参加歴が影響していた。自身の災害対策活動の満足度も参集によって差が見られた。【結論】看護師の災害時の行動は、年齢や役職、災害研修の参加歴と関連し、それらは自身の災害対応活動の評価とも関連する。【引用文献】1)三澤寿美.太田晴美:災害看護.学研出版.2018