第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

救急外来看護

[O12] O12群 救急外来看護①

2019年10月4日(金) 14:00 〜 15:00 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:望月 桂(杏林大学医学部付属病院)

[O12-1] 脳梗塞治療時ER入室後、看護業務の実態調査により学習課題を明確にする

大倉 稚佳子, 阿潟浜 里枝, 星 寿子, 勝田 祥子, 筒井 美保, 生島 和美 (地域医療振興協会 市立奈良病院)

Ⅰ.はじめに
脳梗塞治療は、ERでの迅速な初期対応が予後に大きく影響し、治療が安全で円滑に進められるよう専門的な質の高い看護が必要となる。t-PA静注療法が無効または非適応である症例が存在し脳血管内治療を必要とする場合があるため、脳血管内治療件数は増加している。どの看護師が担当しても質の高い看護が実践できる体制を整えるため、ER入室後の看護業務内容を調査し、学習課題について検討したので報告する
Ⅱ.目的
脳梗塞治療時ER入室後、看護業務の実態調査により学習課題を明確にする
Ⅲ.方法
【調査期間】
2017年4月~2018年9月
【調査対象】
脳梗塞と診断され脳血管内治療を行った5例(他院からの紹介、院内発症は除く)に携わった看護師
【方法】
1.脳卒中初期診療(ISLS診療)手順が推奨する項目に沿ってER到着から処置までに要した時間をカルテから調査を実施
2.調査結果から学習課題を検討する
【倫理的配慮】
ER到着から処置に要した時間をカルテから調査するため、プライバシー保護に留意しカルテを閲覧することを外来看護師に承諾を得た。研究に協力できない場合も、今後の業務や個人に不利益はないことを説明した
Ⅳ.結果
1.脳卒中初期診療(ISLS診療)手順が推奨する項目に沿って整理した
①初期診断:バイタル測定、意識レベル評価、採血・静脈路確保(来院より10分以内)
バイタルサイン測定、意識レベル評価は全例5分以内に実施していた。採血・静脈路確保は5例中4例が10分以内に実施していた。1例はCT後、採血・静脈路確保を行なっていた。NIHSS評価のカルテ記載は4例だった
②画像検査(CT撮影、MRI撮影)と心電図(来院より25分以内)
心電図の実施は2例だった。CTは全例15分以内に実施、MRIは37分後1件 64分後1件 3件は撮影せず血管治療を行った
③t-PA静注療法開始時間
ER到着から2例目76分 3例目64分 4例目46分 5例目43分だった。4例はt-PA静注療法後、脳血管内治療を行っているが、1例は慢性硬膜外血腫があったため脳血管内治療のみ行った
④Door to puncture time
1例目132分 2例目166分 3例目106分 4例目70分 5例目94分だった
2.学習課題の検討
①実施した処置や項目に関して優先順位が統一されていない状況に対しては、ガイドラインに沿ったマニュアル作成が必要
②NIHSS等の患者の評価の記載がないことについては、学習会およびシミュレーション教育が必要
Ⅴ.考察および結論
看護師経験が10年以上のスタッフが73%在籍しており必要な処置は行われていたが、実施した処置の項目や順番に統一性はなく、優先順位の違いは知識や経験に基づくものと推測された。脳血管内治療が開始されるまでの時間短縮は、機能予後が良好な状態で退院できることにつながる。必要物品をリスト化し準備しておくなど、予測性を持った行動は脳血管内治療開始までの時間短縮につながる。看護師が患者の状態をアセスメントし、迅速かつ適切なケアを実施するためには、観察力や迅速力など多くの能力が求められる。それらの能力を向上するためには、経験だけでなく①定期的な学習会およびシミュレーション教育②ガイドラインに沿った脳卒中ホットラインマニュアルと必要な機材のリスト化、チェックリスト③他職種連携・協働が必要であることが明確になった
Ⅵ.おわりに
今後もERでは、他職種連携と専門的な質の高い看護が実践できる体制を整え、患者・家族にとって治療が安心・安全で円滑に進められるよう看護師の役割を果たしていきたい